Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
夏目漱石の『こころ』—心理洞察家としての先生
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.320
発行日 2025年3月10日
Published Date 2025/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530030320
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大正3(1914)年に発表された夏目漱石の『こころ』には,その題名が示唆するごとく,人間心理にかかわる深い洞察が随処にみられるため,この作品の真の主人公は人間の「こころ」そのものではないかと感じられるほどである.
特にすぐれた洞察を示すのが先生で,たとえば先生は,私という大学生が自分を慕ってくることに同性愛的なニュアンスを感じて,「あなたの心はとっくの昔から既に恋で動いている」,「恋に上る階段なんです.異性と抱き合う順序として,まず同性の私の所へ動いて来たのです」といった洞察を示している.
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