FOCUS
ファブリー病の臨床検査
岡 有希
1
,
菊地 良介
1
1岐阜大学医学部附属病院検査部
pp.604-607
発行日 2025年6月1日
Published Date 2025/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.030126110530060604
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はじめに
ファブリー病は,ライソゾーム酵素の1つであるα-ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A:GLA)の遺伝子変異により発症するX連鎖遺伝形式の先天性脂質代謝異常症である.GLAの著明な活性低下もしくは欠損により,その基質であるグロボトリアオシルセラミド〔globotriaosylceramide:Gb3またはGL3,別名セラミドトリヘキソシド(ceramide trihexoside:CTH)〕などの糖脂質の分解が妨げられ,血管内皮細胞,平滑筋細胞,腎臓,肝臓,そして心筋など複数の組織や臓器にGb3などの糖脂質が蓄積することにより,四肢疼痛,発汗障害などさまざまな症状を引き起こす疾患である.
ファブリー病の臨床病型には性差がある.男性患者は,GLA酵素活性がほとんどなく,小児期から種々の症状が現れる古典型,発症年齢が遅く成人期以降より心肥大のみや腎臓のみなど症状が一部に認められる遅発型に分類される.また女性患者(ヘテロ接合体)では,発症年齢や症状・臓器障害の進行は男性に比べると遅い傾向にあり,遅発型男性患者と比較的よく似た症状を示す1).また,軽症の遅発型が存在するなど重症度に多様性があることから,発症から診断までに平均十数年を要するとも言われているため,症状の進行を遅らせ重篤な合併症を予防するためにも,早期診断が肝要となる.
本稿では,ファブリー病の診断および治療評価に必要な臨床検査について概説する.

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