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はじめに
本誌において,筆者が混合研究法(mixed methods research:MMR)の連載をスタートしたのが2015年の初春であった。そして,その年末には,『混合研究法入門—質と量による統合のアート』(抱井,2015)を上梓する機会をいただいた。同年4月には日本混合研究法学会(Japan Society for Mixed Methods Research:JSMMR)が創設され,本年11月には11回目の学術大会が開催される註。この10年間,会員の皆様の研究発表を拝見する中で,日本においてもMMRが根づき始めていることを実感している。さらに,2022年4月に創刊されたJSMMRの機関雑誌『混合研究法』(Annals of Mixed Methods Research)への投稿が徐々に増え始めていることも,わが国におけるMMRの浸透と発展の証左といえる。
一方で,JSMMR年次大会の会場でしばしば耳にする参加者の声や,大会終了後のアンケートを通して寄せられるフィードバックからは,MMRに関する数々の疑問や学修ニーズの高さが依然として感じられていた。このニーズに応えるため,混合研究法の体系的な学びを支援するeラーニングを,まずは看護学研究者を対象に開発してはどうかというアイデアがJSMMRの理事メンバーの間で生まれた。看護学研究者に照準を絞った理由は,看護という専門職が人の「こころ」(質的側面)と「からだ」(量的側面)の双方のケアを担っていることに起因する,混合研究法との親和性の高さである。そして,この点を反映するかのように,JSMMRの会員の約半数は看護学研究者であり,このことも,まず看護学研究者を主な対象としてeラーニングを開発する理由の1つとなった。いずれにせよ,看護学研究者の間のMMRへの関心の高さは,日本にとどまらず国際的な潮流としても確認されている。

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