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発熱の診かた・考えかた・向き合いかた
診療の心構えから鑑別のアプローチ,診断エラーにつながるピットフォールまで
筆頭著者 青木 洋介 (著者)
メジカルビュー社
電子版ISBN
電子版発売日 2022年2月3日
ページ数 264
判型 A5
印刷版ISBN 978-4-7583-2232-4
印刷版発行年月 2022年2月
書籍・雑誌概要
発熱を診た際に,どのような疾患を想起し,どう原因を絞り込んでいくのか ― 単に具体的な診断名をつけるためだけの手引きではなく,診断に至るまでの思考プロセスや身に着けておくべき知識を優しく・わかりやすく・温かい語り口で丁寧に解説。また診断エラーにつながりがちな“直感的に診断名をつけたくなってしまう誘惑”の認知心理学的な側面にも着目し,エラー回避のためのtipsを詳解。読み進めるうちに臨床力が身に付く一冊。
目次
第Ⅰ章 なぜ医師は発熱の診療が苦手なのか
“はつねつ”に対する医師の心的反応
「発熱の診察は得意ですか?」
「不手際はなかったか?」という後ろめたさ
「わかっていたのになぜ防げなかったのか?」という反省の念
「患者さんに熱の原因を説明しなければ」というプレッシャー
「今はよくわかりません」と患者さんに言ってもよいのです
「なぜこう考えてしまうのか?」を知る!
すべての医師に共通のこころのシステム
ヒトの思考は2パターンに分けられる
System 1のスイッチは切れない
“発熱”で動揺してしまうのは,System 1のなせる技
条件反射的な対応の危うさ
20ワット・18秒
ヒトは,System 2の思考が得意ではない?
脳は省エネルギー
ヒトの集中力は20秒ももたない
ベッドサイドを離れてみよう
Psychological control
「現場」で発熱を診るプレッシャー
苦手を克服しよう
勉強会にはない,診療現場にしかない医師の務め
第Ⅱ章 発熱(およびバイタルサイン)総論
バイタルサインが重要なわけ
バイタルサインとは
Bioassayは,身体診察よりもchemical assayよりも高感度
体温
入院患者の発熱:熱型を最初に見ない訓練を
発熱のmagnitudeを確認する
発熱(体温)以外に着目すべき所見
脈拍(pul se)
呼吸数(pulse) platypnea, orthopneをいう
第Ⅲ章 診断アプローチ:考え方
診断アプローチの概観
診断するときに決めてかかっていませんか?
診断するときの思考戦略には2パターンある 4
正答を見つける or 誤答を明らかにする
基本は「誤りを避けようと目を凝らす」こと!
可能性の高いものだけを見て1つの正解を追う“急降下型”
可能性ゼロなものを見定めようとする“旋回型”
自分の考えを肯定するために理由付けするのは正しい?
自信の程度と正しさの程度
どんなに自分が正しいと思える経験を積み上げても,
真に正しいかは確認できない
確認できるのは,自分が「間違っている」ことだけ
反証を探そう
反証を見つけて避ければ,正しいものが残る可能性大!
Peripheral visionをもとう
Experimental thinkerでいよう
英雄視されることもある“急降下型”はリスクが高い!?
優柔不断にみえるがリスクは低い“旋回型”
試験や集合学習の思考と患者診療での思考
院外学習の場では“急降下型”でも問題なし!
むしろ,院外学習では“急降下型”でどんどん間違えるべし
実臨床では“旋回型”で慎重に
“旋回型”は「立ち戻って再考」できる
2つの思考戦略を意識的にスイッチしてみよう(リスクのない環境で)
第Ⅳ章 問診と診察
適切な臨床医としてのあり方
患者さんと向き合うということ
常識(common sense ~ practical intelligence)
職工気質(生涯教育)
問診
紹介状がある場合の留意点
既往歴などに関するカルテ記載:Taking note
患者さんの話を聴く
医師の振る舞い
診察
Naked ? 全身を診ることの大切さ
事前の説明で気をつけたいこと
初学者および知識体系
焦点を合わせた診察
Bioassay vs. Chemical assay
第Ⅴ章 外来患者さんの発熱~不明熱
患者さんへの対応
Patient-centered
Doctor-directed
ROWS:rule out worst case scenario
風邪症候群
急性気管支炎
急性咽頭炎
急性副鼻腔炎
普通感冒
リンパ節腫脹(LANp)
発熱を認める患者にリンパ節を触知したときにチェックすべきポイント
局在性(≒ 表在性)LANp
全身性あるいは部位を問わないLANp
「発熱+LANp」を診る際の留意点
悪性腫瘍と膠原病
悪性腫瘍
アレルギー・膠原病
発熱で外来を受診する疾患名の一覧
感染症
悪性疾患
疾患各論についてのリストを整理したら,その診断アプローチについて考える
第Ⅵ章 入院患者さんの発熱
感染症による発熱
肺炎
尿道バルーン関連尿路感染症(CAUTI)
血管内留置カテーテル関連血流感染症(CBRBSI)
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症(CDI):発熱+下痢
創感染
そのほかの感染症
長期療養型施設(LTCF)での診療の留意点
入院患者さんに認められる非感染症の発熱
急性心筋梗塞・肺塞栓
消化管出血
輸血後の発熱
薬剤熱
頭蓋内大量出血
副腎不全
詐熱
脱水による発熱
無気肺
胸水・腹水
静脈炎
非感染性の下痢
Nosocominal feverへのアプローチ
第Ⅶ章 発熱の鑑別における一次検査の重要性
まずは,スクリーニング的考察を
年齢特性と問診(という検査)
若年患者さんには,本人が気になる疾患がないかを聞いてみる
一次検査
一次検査は診断を確定させるための検査ではなく,臨床医の診察を補うもの
尿検査
尿糖
白血球・亜硝酸塩
蛋白尿
尿素窒素やクレアチニン上昇,尿潜血
末梢血液検査(CBC)
白血球数と核左方移動
リンパ球
赤血球および赤芽球
血小板
生化学,そのほかの採血による検査
肝逸脱酵素(AST/ALT)
アルカリフォスファターゼ
LDH
フェリチン
赤血球沈降速度
血液培養
画像検査
ピットフォール:画像情報は思考を停止させる
Bioassayはchemical assayの何百倍も感度が高い
おわりに
書籍紹介
おわりに 発熱診療・学習の要約
達成困難,しかし,到達可能な学習ゴールの設定
知らないことのほうが多いと自覚できていますか?
スキルアップには絶対的な知識量が不可欠
思考・考察のショートカット SubstitutionとIntensity matching
体温以外のバイタルサインをみていますか?
発熱と重症度を分けて考えていますか?
その判断はlogical ? psychological ?
Substitutionとintensity matchingを知ると,臨床行為がさらに深まる
診断しないことの効用
確信できないうちは,無理に一つの仮説を立てなくてもよい
疾患カテゴリーの区別はつけよう。その先の診断名には,極度にこだわらないこと
自分が確信をもてる領域=boundaryを見極めよ
Safety spotに安全に着地するには,生涯学習がカギ
発熱患者の診療Tips
固有臓器や組織に異常を認めた場合の発熱の鑑別疾患
中枢神経系の異常を認める場合
頸部の異常
リンパ節腫脹および関節炎様症状
小腸病変
骨盤内病変
そのほか
付表(鑑別診断に役立つ疾患リスト,診療Tips集)