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慢性痛のサイエンス 第2版

脳からみた痛みの機序と治療戦略

慢性痛のサイエンス 第2版
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筆頭著者 半場 道子 (著)

医学書院

電子版ISBN 978-4-260-65076-2

電子版発売日 2023年4月3日

ページ数 296

判型 A5

印刷版ISBN 978-4-260-05076-0

印刷版発行年月 2023年2月

DOI https://doi.org/10.11477/9784260650762

書籍・雑誌概要

慢性痛のメカニズムを解き明かす。国際的潮流を踏まえた最新版

「痛みの定義」の改訂、Nociplastic Pain(「痛覚変調性疼痛」)の定義といった、国際的な潮流を反映して全面改訂。慢性痛のメカニズムを脳科学的視点から丁寧に解き明かす。第7章「神経変性疾患と慢性炎症」では慢性痛を訴える難病患者の脳を、また新規8章「腸の痛み、腸と脳の連関」では腸が脳に与える影響といった、慢性痛のミッシングピースを大胆に考察して大幅加筆。慢性痛患者に携わるすべての医療者必読の書。

目次

第1章 慢性痛とは何か
 I 慢性痛の定義と分類
  1.痛みの定義
  2.慢性痛の分類
 II 慢性痛をめぐる問題
  1.日本における慢性痛
  2.慢性痛の患者数と医療費
  3.慢性痛と精神疾患
 III 慢性痛の評価法
  1.痛みの強さの評価法
  2.質問票による痛みの評価法

第2章 慢性痛のメカニズム
 I 痛みを伝える情報伝達系
  1.痛覚投射経路
  2.広範な脳領域
 II 痛みを抑制する脳内機構
  1.Mesolimbic Dopamine Systemと疼痛抑制機構
  2.下行性疼痛抑制系
  3.Placebo Analgesiaと脳内変化

第3章 侵害受容性の慢性痛
 変形性膝関節症
  1.変形性膝関節症への新しい視点
  2.変形性膝関節症と慢性炎症
  3.変形性関節症の痛み
  4.痛みを軽減する薬物
  5.DMOADsの薬理作用と開発の現状
  6.OA患者急増の社会的リスクファクター

第4章 神経障害性の慢性痛
  1.神経障害性の痛み
  2.痛みを慢性化させる要因
  3.痛みの慢性化を防ぐには

第5章 痛覚変調性の慢性痛
 I 慢性腰痛
  1.慢性腰痛の脳内で何が起きているか?
  2.腰痛を慢性化させる要因
 II 線維筋痛症
  1.線維筋痛症の痛み
  2.線維筋痛症患者の脳で何が起きているか?
 III 慢性痛覚過敏,広汎性痛覚過敏(Widespread Hypersensitivity)
 IV 痛覚変調性の慢性痛:脳内でどんな機序が起きているか?
 V 痛みを難治性疼痛に転化させる破局的思考
  Default Mode Networkに反映される破局化思考

第6章 慢性痛の治療法
 I 薬物療法・神経ブロック
  1.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
  2.アセトアミノフェン(acetaminophen)
  3.麻薬性鎮痛薬,合成麻薬,オピオイド
  4.抗てんかん薬(抗けいれん薬)
  5.抗うつ薬(antidepressants)
  6.神経ブロック
 II 認知行動療法・マインドフルネス
  1.認知行動療法(CBT)
  2.マインドフルネス・ストレス軽減法(MBCT)
  3.治療で回復する慢性痛患者の脳
 III 脳刺激法
  1.大脳皮質運動野刺激
  2.反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)
  3.経頭蓋直流刺激(tDCS)
 IV 筋運動
  1.筋運動による痛みの軽減
  2.筋活動の生理的意義:骨格筋は分泌器官
  3.筋活動の生理的意義:PGC1-αの発現
  4.PGC1-αによる慢性炎症の抑制
  5.PGC1-αの抗酸化・抗老化作用
  6.PGC1-αによる筋力増強作用
  7.健康維持に適した筋運動は?

第7章 神経変性疾患と慢性炎症
 I パーキンソン病
  1.パーキンソン病:運動症状と非運動症状
  2.パーキンソン病の痛み:脳内機構
  3.脳内ドパミンの変動と痛み
  4.パーキンソン病の痛みの治療
  5.パーキンソン病発症を源にさかのぼる
 II 脳と慢性炎症
  1.免疫細胞とインフラマソーム
  2.慢性炎症は「万病の源」
  3.慢性炎症を抑制する薬は?
 III 慢性痛とDepression
  1.Depressionの分子機構:脳内で慢性炎症が起きている
  2.脳内炎症が意欲と精神活動を停滞させる
  3.ケタミンによるDepressionの回復
 IV 脳と認知機能障害
  1.アルツハイマー病の症状と脳画像
  2.アルツハイマー病の生物学的基盤――アミロイドβとTau
  3.アルツハイマー病の生物学的基盤――脳内グリアによる慢性炎症
  4.認知症と海馬――認知症と海馬体積,長寿者の脳
  5.認知症のリスクファクターとその対策
 V 記憶のメカニズム
  1.海馬――記憶の中枢
  2.海馬では日々,ニューロンが新生している
  3.新生ニューロンが記憶機能を担う
  4.高齢者の脳と記憶力
  5.認知機能と筋運動
  6.海馬萎縮の原因
  7.記憶には反復と睡眠
 VI 高齢者とサルコペニア
  1.サルコペニア――死のリスク
  2.サルコペニアの診断
  3.サルコペニアの機序

第8章 腸の痛み,腸と脳の連関――Gut-Brain Interaction
 I 腸管の侵害受容機構
  1.腸管は生体防御の激戦区
  2.炎症性腸疾患,過敏性腸症候群
  3.消化管の神経機構
  4.腸管に分布する侵害受容体
  5.TRPV1は免疫系の斥候――病原菌侵入を阻止する
  6.制御性T細胞(Treg)による免疫寛容――食物アレルギーの抑制
 II 神経変性疾患と腸脳連関
  1.シヌクレイン症(パーキンソン病,多系統萎縮症,Lewy小体病)
  2.パーキンソン病発症リスクと炎症性腸疾患
  3.根源的な謎:α-Synとは何か
  4.血液脳関門Blood Brain Barrierの構造
  5.BBBの崩壊――アルツハイマー病,パーキンソン病,COVID-19
  6.脳の老化は腸から始まる――加齢とDysbiosis
 III ワクチンと腸内細菌
  1.ワクチンをめぐる謎――副反応だけ重くて抗体ができない?
  2.中和抗体の産生に腸内細菌が必要
  3.二次胆汁酸と制御性T細胞――重い副反応が抑制される

終章
  1.慢性痛の謎解きと進化の系譜――古代の海から宇宙ステーションへ
  2.快・不快情動に焦点を当てる――今後の医療の根幹
  3.人は希望によって生きる

索引
あとがき

BOX一覧
 痛みの研究に変革をもたらした機能的脳画像法
 「古代エジプトの秘薬とケシの用例」
 TRP とPIEZOにノーベル生理学・医学賞
 慢性炎症とインフラマソーム
 複合性局所疼痛症候群(CRPS)と脳構造の変容
 エピジェネティック修飾
 安静時ネットワークDefault Mode Network
 海馬とノーベル賞