皮膚病診療 46巻10号 (2024年10月発行)

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特集　予想外の皮膚病（意外な結末となった皮膚病）

Editor's eye 浅井　俊弥 46巻10号 , 2024年10月 , pp.863-863

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アンケート企画

私が経験した予想外の皮膚病平田　央 , 山﨑　修 , 原田　和俊 , 有馬　豪 , 中川　浩一 , 藤田　靖幸 , 山賀　三紗子 , 葭本　倫大 , 梅津　修 , 清水　聡子 46巻10号 , 2024年10月 , pp.864-870

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　本号の特集に関連して，小誌アドバイザーやその教室の先生方が経験した「予想外の皮膚病（意外な結末となった皮膚病）」について振り返っていただきました（掲載順不同）．

総説

生物学的製剤によるparadoxical reaction 山本　俊幸 46巻10号 , 2024年10月 , pp.872-878

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●免疫介在性炎症性疾患に生物学的製剤を投与し，paradoxical reaction（逆説的反応）を生じる場合には，いくつかのタイプがある．

●同じ薬剤であっても誘導される症状（疾患）により想定される機序は若干異なっている．

●paradoxical reactionの個々の病態を理解することは疾患の病態の理解のヒントになる．

●内科的な基礎疾患に対して投与された生物学的製剤によって皮膚にparadoxical reactionが出現することもあるので，皮膚科医はparadoxical reactionについて知っておく必要がある．

（「ポイント」より）

臨床例

当初，癤腫症および細菌性亀頭包皮炎と暫定診断していたHIV感染者のエムポックス笹岡　佑輔 , 田中　文 , 村田　賢哉 , 長谷川　耕平 , 小川　吉彦 , 安原　裕美子 46巻10号 , 2024年10月 , pp.879-883

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・ヒト免疫不全ウイルス（human immunodeficiency virus：HIV）感染者の顔面や体幹に多発した膿疱や陰茎亀頭部の潰瘍から癤腫症および細菌性亀頭包皮炎と暫定診断し加療していたが，その後に新生した紅斑の生検組織を用いた定量的PCR法によりエムポックスと診断確定した．

・男性，とくに男性同性間性的接触者，HIV感染者の紅斑，小水疱，膿疱をみたら，エムポックスの鑑別が必要である．

・エムポックスの診断には，初期の紅斑期では組織を用いた定量的PCR法が有用である．

（「症例のポイント」より）

副甲状腺腺腫の切除で消褪した網状皮斑兼島　明子 , 屋宜　宣武 , 仲里　信彦 , 長谷川　昌宏 46巻10号 , 2024年10月 , pp.884-887

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・副甲状腺腺腫による副甲状腺機能亢進症，高カルシウム血症を背景とした続発性の網状皮斑に遭遇した．

・副甲状腺腺腫の切除により，網状皮斑は消褪した．

・網状皮斑の存在が副甲状腺機能亢進症の診断の経緯となった報告は少なく，まれな症例と考えた．

（「症例のポイント」より）

骨髄移植後に発症した晩発性皮膚ポルフィリン症田中　宏治 , 辻　学 , 中原　真希子 , 中原　剛士 46巻10号 , 2024年10月 , pp.888-891

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・骨髄移植後に発症した晩発性皮膚ポルフィリン症（porphyria cutanea tarda：PCT）の1例を経験した．

・患者は初診1年前に骨髄移植を行われ，初診時は両手背と手指の一部に痂皮を伴う水疱を形成していた．

・血液検査で肝機能障害と尿中ウロポルフィリンの上昇を認めた．

・PCTと骨髄移植の発症機序は明らかにされていないが，骨髄移植に伴う移植片対宿主病（graft versus host disease：GVHD）の影響を考えた．

（「症例のポイント」より）

免疫抑制中に生じたVZV関連の血管炎による片側性難治性下腿潰瘍八木田　隼啓 , 福本　毅 , 今村　真也 , 国定　充 , 谷川　瑛子 , 久保　亮治 46巻10号 , 2024年10月 , pp.892-896

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・varicella zoster virus（VZV）の再活性化に続いて，VZV感染が皮下の広範囲の細胞に生じ，水疱症状を経ずに血管炎と皮膚潰瘍を生じたと考えられた．

・免疫抑制状態で片側性に皮膚潰瘍が多発した際は，VZV関連の皮膚潰瘍を鑑別に考える必要がある．

（「症例のポイント」より）

Bowen病切除を契機に診断確定に至った全身性アミロイドーシス栗本　徹 , 石田　英和 , 中西　崇詞 , 野見　恭子 46巻10号 , 2024年10月 , pp.898-901

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・臨床症状から全身性アミロイドーシスが疑われ，腹部無疹部より皮膚生検を行ったがアミロイド沈着は認めず，診断に至らなかった．

・3年後，背部Bowen病を全切除された際に偶発，皮下脂肪織層のアミロイド沈着が検出され，全身性アミロイドーシスの診断確定に至った．

（「症例のポイント」より）

右第IV趾の蠣殻様痂皮を契機に診断された本態性血小板血症橋本　真哉 , 小川　聡 , 藤原　進 46巻10号 , 2024年10月 , pp.902-906

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・足趾末端の潰瘍や痂皮をみた場合，本態性血小板血症（essential thrombocythemia：ET）に伴う皮膚症状を鑑別にあげる．

・心血管リスク因子や血栓症の既往がある場合は，血小板増多の程度が低くとも皮膚症状が顕在化する可能性がある．

（「症例のポイント」より）

発汗異常を契機に診断された脳幹部腫瘍黒尾　優太 , 武藤　潤 , 吉田　諭 , 八束　和樹 , 山下　大介 , 藤澤　康弘 46巻10号 , 2024年10月 , pp.907-911

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・左半側の分節性多汗症と温痛覚異常がみられ，脳幹部腫瘍および脊髄空洞症の診断に至った1例を経験した．

・神経障害を伴う発汗異常では，その原因として腫瘍性病変や脳脊髄障害を念頭に置いた画像評価を行うことが重要である．

（「症例のポイント」より）

ステロイドに対する遅延型アレルギー安村　香菜子 , 峠岡　理沙 , 丸山　彩乃 , 井岡　奈津江 , 服部　淳子 , 益田　浩司 46巻10号 , 2024年10月 , pp.912-915

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・多種類のステロイドに対する遅延型アレルギーを示した症例を経験した．

・パッチテストで陽性となった複数のステロイドの化学構造に共通の抗原決定基や交叉感作がないかどうかをこれまでの報告に基づき考察した．

（「症例のポイント」より）

悪性黒色腫を疑って生検したが，病理組織診断は黒癬だった德田　一三 , 東田　理恵 , 中川　浩一 , 加藤　麻衣子 , 小森　嵩矢 , 大塚　篤司 46巻10号 , 2024年10月 , pp.916-919

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・悪性黒色腫の疑いとして紹介を受けた足底の色素斑の症例である．ダーモスコピーでは悪性黒色腫や色素性母斑の典型的な像はなかった．皮膚生検の病理組織学的検査では角層内に真菌要素が確認され，表皮・真皮内に腫瘍細胞は認められなかった．黒癬と診断し抗真菌薬を外用したところ速やかに色素斑は消褪した．

・黒癬は沖縄や九州で高頻度にみられる疾患であるが，近年は地球温暖化の影響もあってそれ以外の地域でも散見されるようになった．

・手掌・足蹠の色素斑の診察にあたっては鑑別診断として黒癬の可能性も認識しておく必要がある．

（「症例のポイント」より）

大腿部に生じた皮膚混合腫瘍須藤　上治 , 原田　侑弥 , 松本　千夏 , 高橋　啓 , 花田　隼登 , 福田　英嗣 46巻10号 , 2024年10月 , pp.920-923

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・皮膚混合腫瘍（mixed tumor of the skin：MTS）は中高年の顔面，頭頸部に好発し，約10～20mm大で半球状ないしドーム状に隆起する，弾性硬の皮内から皮下に及ぶ結節として触知される皮膚付属器良性腫瘍である．

・自験例は左大腿部に48×40mm大の腫瘤として触知され，臨床像から（深在型）隆起性皮膚線維肉腫を考えたが，病理組織学的所見からMTSと診断した．

・MTSは病理組織学的に上皮成分と間質成分が混在することが特徴であり，自験例では間質成分に粘液腫様，軟骨様，骨様，脂肪組織様と多彩な像を認めた．

（「症例のポイント」より）

Blaschko線に沿う下肢全長の幅広い褐色斑に足部限局性の著明な過角化を伴い皮膚カンジダ症の合併と考えた列序性表皮母斑田原　海 , 齋藤　苑子 , 青木　里美 , 久保　亮治 46巻10号 , 2024年10月 , pp.924-927

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・PIK3CAの体細胞バリアントによる列序性表皮母斑において，母斑の一部にみられた著明な過角化が，ホスラブコナゾールの長期投与により劇的に改善した1例を報告した．

・過角化部の角層を真菌培養に提出したところ，C. parapsilosisが検出された．列序性表皮母斑の病変部の一部に，皮膚カンジダ症の合併による著明な過角化が生じていたと考えられた．

（「症例のポイント」より）

丹毒加療中に生じたピロリン酸カルシウム結晶沈着症佐藤　弘明 , 小倉　剛久 , 福田　英嗣 46巻10号 , 2024年10月 , pp.928-931

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・ピロリン酸カルシウム（calcium pyrophosphate dihydrate：CPPD）結晶沈着症は，CPPD結晶がさまざまな組織に沈着し，急性・慢性の関節炎・関節破壊など多彩な臨床像をひきおこす疾患である．痛風に類似した症状を呈するため偽痛風とも呼ばれる．

・今回われわれは，丹毒加療中に多関節痛を生じCPPD結晶沈着症と診断した1例を経験したので報告する．

・CPPD結晶沈着症発症の誘因として，安静状態，運動制限，脱水などが指摘されており，自験例でもこれらが誘因となった可能性が示唆された．

（「症例のポイント」より）

診断に難渋した下肢extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type 中川（山本）　悠 , 水芦　政人 , 浅野　善英 , 藤島　史喜 46巻10号 , 2024年10月 , pp.932-936

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・難治性の下腿潰瘍はさまざまな疾患を鑑別しなければならず，診断に難渋することも多い．

・自験例のように1回の皮膚生検だけでは診断に至らず，皮膚科医と病理医が何度も検討のうえ診断に至る症例もある．

・私たち皮膚科専門医だけではなく，病理専門医にとってもまれな悪性リンパ腫の診断はかなりむずかしいことを念頭に置いたうえで，多彩な皮膚病変がある場合は積極的に生検し，複数の皮膚生検組織を病理専門医と意思疎通を十分にとって検討していくことが重要であると考えた．

（「症例のポイント」より）

Editorial

症状の出現する順序山本　俊幸 46巻10号 , 2024年10月 , pp.861-861

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案件から学ぶ医療事故の対策と問題点

腋臭症に対するmiraDry^®照射後の神経障害向井　秀樹 46巻10号 , 2024年10月 , pp.938-939

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・30歳代，女性．10歳代からとくに夏場になると腋臭が気になり，市販薬を用いて対処していた．今後予定されている結婚式を前に，友人の勧めもあり腋臭症に関してmiraDry^®治療をすることを決め，クリニックを選定．

・両側腋臭症と診断され，局麻後にmiraDry^®を照射．照射後に異常はなく，帰宅．

・数日後から右手指先にしびれ感が発症，放置するも改善せず．次第にしびれが増強したため1週間後に同クリニックを受診．末梢神経障害と診断され，ビタミンB₁₂内服薬を処方された．

・その後，右腋窩照射部位に痛みを伴う発赤や腫脹が出現．皮下膿瘍を疑い，切開し少量の膿を排出．細菌培養では黄色ブドウ球菌が検出された．連日の包交で切開部の感染症は改善した．

・右手第III指や第IV指の知覚鈍麻や手指の屈曲制限もあり，近医整形外科を受診．右正中神経不全麻痺と診断され，プレガバリンを内服するも症状は改善しなかった．

（「経過」より）

リレーエッセイ　私のワークライフバランス

「This is Home」齊藤　華奈実 46巻10号 , 2024年10月 , pp.940-941

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皮心伝心

皮膚炎のゆらぎと生活習慣の関係についての着想澤田　雄宇 46巻10号 , 2024年10月 , pp.942-942

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学会ハイライト

第40回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会を開催して岡田　嘉右衛門 46巻10号 , 2024年10月 , pp.944-945

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皮膚科のトリビア

第232回浅井　俊弥 46巻10号 , 2024年10月 , pp.946-947

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声

アシルCoA脱水素酵素欠損症患児に投与可能な抗菌薬は？／「案件から学ぶ医療事故の対策と問題点」を読んで石川　博康 , 鈴木　琢 46巻10号 , 2024年10月 , pp.948-949

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目次 46巻10号 , 2024年10月 , pp.858-859

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次号予告 46巻10号 , 2024年10月 , pp.950-950

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基本情報

皮膚病診療
46巻10号
(2024年10月発行)

電子版ISSN：2434-0340 印刷版ISSN：0387-7531 協和企画

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