皮膚病診療 42巻4号 (2020年4月)

特集 よくみる疾患 common skin disease

Editor's eye 山本 俊幸
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 4月号なので,新しく皮膚科に入られた医師や,若手医師に役立つ編集を意識した.似た疾患を取り上げる形でピックアップした結果,必ずしもありふれた疾患ではなくなった.

 接触皮膚炎症候群,全身性接触皮膚炎に関しては,1月号でも臨床例が掲載された.接触皮膚炎症候群は自家感作性皮膚炎と似た概念で,autosensitizationをおこす原因の1つに接触皮膚炎があると理解している.PubMedに横文字を入れてみるとcontact dermatitis syndromeはあまり使われていないようである.自家感作性皮膚炎という病名は生き長らえるのかと,本誌で昔,西岡清先生が書いておられたが,最近の論文でも使われていた(JAAD Case Rep 5:410,2019).硬化性(萎縮性)苔癬の好発部位は女性の外陰部だが,男性には少ない.一方,扁平苔癬が女性の外陰部に生じることは,男性に比較すると少ない.性別によって外陰部発生の頻度に違いが見られる疾患はほかにもあり,たとえばangiokeratomaやverruciform xanthomaは男性に多い.サルコイドーシスの特異疹の1つに結節性紅斑様皮疹がある.本邦人に多く,このタイプの皮疹は自然消退する.一方,結節性紅斑は非特異疹の代表であるが本邦患者にみられることは少ない.ちなみに,サルコイドーシスの非特異疹で結節性紅斑以外のものを聞かれたら,何を思い浮かべるだろうか? 皮膚筋炎や乾癬でも脂漏部位に紅斑はみられ,脂漏性皮膚炎様紅斑とか,脂漏性乾癬とかと呼ばれる.乾癬と皮膚筋炎の合併は非常にまれだが,仮に両者を合併した患者の鼻翼に淡い紅斑がみられたら,どちらによって出た症状なのかの区別はむずかしいと思う.肛囲に生じたPaget病と直腸がんの皮膚浸潤(Paget現象,Pagetoid spread,secondary Paget)との鑑別には,CK7,CK20染色がよく知られているが,最近用いられるCDX2,GCDFP-15なども詳しく記載していただいた.成人の褐色調皮内硬結をみた場合,mastocytosisやplasmacytosisを思い浮かべる必要がある.前者は成人と小児での病態の違いを知る必要があるし,後者はIgG4関連疾患との異同などが最近の話題である.凍瘡で爪の脱落がおきることがあるが,詳しい検討はされていない.

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 「医療ビッグデータ」に基づく医学研究推進の重要性は,現在広く認知されるようになった.2008年の「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて整備されたレセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan:NDB)は,厚生労働省により構築・運用されており,2016年からは「NDBオープンデータ」として一般公開されている.本稿では,NDBを有効活用するために必要な知識として,レセプト情報の特徴とNDBオープンデータの概要を紹介した後,common skin disease研究として具体例を提示し,NDBオープンデータを用いた研究の展望を述べる.

(「はじめに」より)

Topics

貨幣状湿疹 山本 俊幸
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 本号のテーマは「common skin disease」である.関連するテーマでの総説を書くにあたり,これまで経験したいくつかの興味深い側面から貨幣状湿疹について述べてみたい.

(「はじめに」より)

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・クロラムフェニコール(CP)膣錠とCP軟膏に感作され,CP膣錠で1日以内に誘発された痒みの強い全身の紅斑を生じたsystemic contact dermatitis(SCD)の2例を経験した.

・いずれも,CP膣錠のDLSTは陽性.患者1のパッチテストでは,臨床症状と同様,貼布直後より,痒みと紅斑を生じた.さらに7年後,再燃し,誘発試験陽性で,診断確定した.

・座薬や膣錠などの粘膜からの吸収を目的とした薬剤は患者の使用の自覚が乏しいことが多いが,SCDの皮疹は特徴的なので,本症を念頭に置いて問診する必要がある.

(「症例のポイント」より)

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・多形紅斑様皮疹を呈したクロマイ®-P軟膏による接触皮膚炎症候群を経験した.

・プレドニゾロン漸減中にflare up現象を繰り返した.

・多形紅斑様皮疹は抗原性の高い物質による接触皮膚炎症候群で生じやすい.

・クロマイ®-P軟膏に含有されるフラジオマイシン/クロラムフェニコールはともに抗原性が高い薬剤だが,多形紅斑様皮疹の誘発は初めての報告である.

(「症例のポイント」より)

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・尋常性乾癬患者の鼻唇溝,眉間部,前額髪際部に生じた脂漏性乾癬の症例を経験した.

・鼻唇溝からの生検像は,不全角化や表皮肥厚などの乾癬様の形態を認めた.しかし角層下に好中球の浸潤はなく,表皮突起の延長は不規則で,表皮内への単核球浸潤を認め,脂漏性皮膚炎にも類似していた.

(「症例のポイント」より)

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・難治性の顔面紅斑にて来院し,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)や脂漏性皮膚炎が鑑別にあがった.

・他の皮膚症状や間質性肺炎の存在より,抗melanoma differentiation antigen 5(MDA5)抗体陽性無筋症性皮膚筋炎を強く疑い,集学的多剤併用療法を開始することで,救命できた.

(「症例のポイント」より)

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・臨床的に硬化性苔癬を思わせた女性外陰部の扁平苔癬を経験した.

・外陰部扁平苔癬として比較的まれな臨床像を呈したが,皮膚生検により診断に至った.

・ステロイド外用に抵抗性であったが,タクロリムス軟膏の外用により症状が改善した.

(「症例のポイント」より)

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・全身の白斑と甲状腺自己抗体陽性の中年女性に発症した硬化性苔癬を経験した.

・ステロイド外用剤の強度を段階的に下げながら,保湿剤と併用するプロアクティブ療法で外陰部症状の寛解と維持が得られた.

(「症例のポイント」より)

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・サルコイドーシスに対する内服ステロイドの漸減中に,血清ACE値の上昇とともに両下腿に結節性紅斑様皮疹が出現した.

・病理組織学的に結節状の肉芽腫が多発していたが,ステロイドの外用治療で改善し,その後3年以上再発はない.

・結節性紅斑様皮疹は眼病変の頻度が高く,自験例でも4年前から伴っていたが悪化はなかった.

(「症例のポイント」より)

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・下肢の腫脹と疼痛で発症し,多発関節炎,結節性紅斑,両側肺門部リンパ節腫脹認めたLöfgren症候群の1例を経験した.

・下腿皮疹の病理組織は,組織球主体の炎症細胞浸潤と多核巨細胞も出現もあり,結節性紅斑様皮疹との鑑別を要した.

・非ステロイド系鎮痛解熱薬内服で加療し,皮疹は約1カ月の経過で軽快した.

(「症例のポイント」より)

成人の凍瘡 石川 治
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・凍瘡は初冬から初春に発症し,耳介,顔面,指趾に好発する.

・診断に際しては,急性発症という経過,寒冷曝露の有無,自覚症状としての痛痒感の有無を確認する.

・成人の凍瘡患者ではSjögren症候群,エリテマトーデス(LE)を背景疾患としていることが少なくない.

・凍瘡様紅斑を呈することのあるサルコイドーシスと皮膚筋炎を鑑別する必要がある.

(「症例のポイント」より)

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・患者1は寒冷期に増悪を繰り返し,中高年発症の凍瘡からSjögren症候群を考え,最終的にプレドニゾロン内服で皮疹は改善した.

・患者2は全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う凍瘡様紅斑で,皮膚病変は治療抵抗性を示した.

・凍瘡様紅斑(患者2)は通常の凍瘡(患者1)と異なり,寒冷刺激のない時期になっても自然治癒しにくく,全身症状や他の末梢循環障害性の皮膚症状を伴う場合が多い.

・凍瘡様紅斑は患者2のような膠原病にみられることがあるため,特に難治例や非典型例ではその背景に隠れた疾患がある可能性も加味し,経過や随伴症状などを含め総合的に診断・治療する必要がある.

(「症例のポイント」より)

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・皮膚原発肛囲乳房外Paget病を経験した.

・大腸内視鏡検査,PET-CTおよび免役組織化学染色で皮膚原発であることを確認した.

・異時性に陰囊部にも乳房外Paget病を発症した.

(「症例のポイント」より)

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・肛囲の二次性乳房外Paget病(extramammary Paget's disease:EMPD)と皮膚原発EMPDの鑑別に苦慮した1例を報告した.

・免疫染色では,CK7陰性,CK20陽性,GCDFP-15陰性CDX2陽性と二次性EMPDを疑い全身精査を行ったが,下部消化管原発巣は確認できなかった.

・腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行し,歯状線に接し粘膜内に限局したadenocarcinomaが確認された.

・CDX2染色は消化器癌に対する感度,特異度が高く,皮膚原発EMPDとの鑑別に有用である.

(「症例のポイント」より)

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・ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)や伝染性膿痂疹との鑑別に苦慮したdiffuse cutaneous mastocytosis(DCM)の1例を経験した.

・抗ヒスタミン薬内服とステロイド外用でいったん落ち着いたものの,患児の活動性の上昇に伴い皮疹が増悪,全身症状を繰り返すようになり,治療に難渋している.

(「症例のポイント」より)

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・皮膚に限局した成人型肥満細胞症の症例を経験した.

・真皮浅層胞体内の顆粒にtoluidine blue染色で異染性を認め,CD117染色に陽性を示す肥満細胞の増加を認めた.

(「症例のポイント」より)

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・当科で経験した,形質細胞増多症の2例について検討した.

・患者1は初診時には自覚症状を欠いていたが,数カ月後に発熱,倦怠感,肝機能障害,腋窩・鼠径リンパ節腫脹などの全身症状が出現した.

・患者2では血清IgG4の上昇が認められたが,IgG4陽性細胞/IgG陽性細胞比が15%程度と少なく好酸球浸潤も目立たないこと,他臓器に病変を認めないことから,IgG4関連疾患と鑑別した.

(「症例のポイント」より)

Editorial

病理組織検査 斉藤 隆三

日常診療に役立つ豆知識

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 経口抗真菌薬には従来からテルビナフィンとイトラコナゾールがあったが,最近,新規トリアゾール系経口抗真菌剤であるホスラブコナゾール L-リシンエタノール付加物(ホスラブコナゾール)が登場した.爪白癬に対してはホスラブコナゾールとテルビナフィンが効果が高く第1選択である1,2).ホスラブコナゾールは肝機能検査のタイミングと値の解釈が従来の経口抗真菌薬と異なる3~5).アルゴリズムが作成されており5),十分理解していれば,投与の対象となる患者も多く,中止も少なく,大部分の症例で治療が完遂できる.内服が簡単で,短期間で終了する治療法である.

(「ホスラブコナゾールの特徴」より)

リレーエッセイ 私のワークライフバランス

いいとこ取り 東 裕子

皮心伝心

シーリングを遠く離れて 町野 博

診察室の四季

花見 斉藤 隆三

皮膚科のトリビア

第178回 浅井 俊弥

私の視点

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目次

次号予告

基本情報

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皮膚病診療
42巻4号 (2020年4月)
電子版ISSN:2434-0340 印刷版ISSN:0387-7531 協和企画

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