臨牀透析 29巻4号 (2013年4月)

透析室での臨床研究-研究デザインと研究のまとめ方

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クリニカル・クエスチョン(Clinical Question;CQ)とは,日常臨床で抱いている目の前の患者に対する"素朴な疑問"であり,臨床研究を行うための研究の種である.それを構造化・具体化し,科学的で実施可能な研究計画の形にしたものをリサーチ・クエスチョン(Research Question;RQ)と呼ぶ.CQをRQに練り上げる際に,EBM(evidence based medicine)の手法であるPICO/PECOの形に構成するとさまざまな問題点を明確にできるという利点がある.RQやPICO/PECOへ練り上げていく際に重要な点はその研究が実現可能か,興味深いか,新奇的か,倫理的か,切実な問題であることなどが挙げられ,そのようによく練られたRQはむしろ単純明快となるはずである.

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研究計画の中心は,構造化されたリサーチ・クエスチョン[PE(I)CO:対象,要因(介入),比較対照,アウトカム]と研究デザインの型(横断研究,コホート研究,ランダム化比較試験など)である.研究の型の種類を知り,それぞれの型の長所・短所を理解することが重要である.それによって,リサーチ・クエスチョンに応じた利用可能で最善な(best available)研究の型を選択したり,得られた研究結果を正しく解釈することができる.本項では,基本的な研究デザインの型について実例を用いて説明する.

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症例報告は昔からの基本的な医学の知識・技能伝達の貴重な方法であり,医学の進歩発展に寄与してきた.evidence based medicine(EBM)が盛んになり,無作為比較試験などに比べ症例報告はエビデンスレベルが低いとみなされるようになった.しかし,症例報告は現在でも薬剤の副作用や新しい病気の発見,また新しい治療法の出発点である場合もあり,EBMとは排他的な関係ではなく相補的な関係にある.

観察研究 コホート研究 井関 邦敏
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わが国は住民健診,人間ドックなどの健診体制が世界一完備している.しかし,長期観察(アウトカム)研究は少なく慢性腎臓病(CKD),末期腎不全(ESKD)の自然歴には不明な点が多い.沖縄透析研究では,沖縄県内の住民健診および透析患者データベースを基に一般住民のCKDの頻度,ESKD発症率を解析し,健診の臨床的意義について検討している.観察研究ではコホート選択のバイアスが避けられないが,ランダム化比較試験(RCT)では得られない地域差,生活習慣の相違や実態を知るうえで貴重な資料となる.実地医家にとっては個々の経験から得られた知恵を検証できる利点がある.日本腎臓学会,日本透析医学会によるコホート研究は,腎臓病の臨床研究の活性化に寄与するものと考えられる.

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同じような事例が複数認められ原因がよくわからないとき,症例対照研究を行うことで原因解決に?がる可能性がある.症例対照研究でもっとも気をつけることは対照の選択である.対照は,症例と同じ母集団から選択されること,そして,曝露状況によらず独立に選別されることが重要である.適切ではない対照の選択は,誤った結論を導くことになる.症例対照研究はさまざまなバイアスの影響が入り込みやすく,難しい側面もあるが,とても美しいデザインでもある.読者が症例対照研究の実際を疑似体験できるように,透析施設での具体的事例を紹介するので,透析スタッフの一員になったつもりで読み進めていただければ幸いである.

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介入試験は原因曝露と疾病発症との関係を明らかにするための研究デザインであり,そのなかでも質の高い試験はランダム化比較試験(RCT)である.しかし,RCTは規模が大きくなり,経費も多くかかる.少数例でバイアスの少ない研究を実施するには群内比較試験が用いられる.群内比較試験の問題点は,同時並行コントロールの欠如であり,介入によって一見効果が認められたように見えても,学習効果,平均値への回帰現象,時期効果などの,実は別の要因が理由であるということが排除できない.群内比較試験にはN-of-1試験などがあり,群内比較試験と群間比較試験を併せもつ性格としてクロスオーバー試験がある.本稿では,これらの試験も併せて解説する.

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もっともエビデンスレベルの高い情報としてランダム化比較試験(RCT)は重要であるが,その実践のためにはいくつものハードルを越える必要がある.本稿では,ランダム化比較試験を企画し実践するうえでのポイントと,最近の腎・透析領域のRCTから得られた知見について紹介する.

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質的研究は,インタビューや観察,手記や記事などの言語によるデータが語ることに忠実に,これまで"見えていなかった現象の意味や構造"を説明するための概念を明らかにする帰納的な研究方法である.質的研究論文のクリティークとして,研究の哲学的基盤に立った研究全体の一貫性を重視する視点を提示した.質的研究は,臨床家が実践の場で重要な知見と感じていても知識として表されていない現象を研究するには適した方法である.

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質的研究法の種類と腎不全領域に関する研究例を紹介する.腎不全領域の質的研究はあまり多くなされていなかったが,グラウンデッド・セオリー・アプローチ,現象学的分析,質的内容分析の研究例を紹介して研究方法の特徴を説明した.そのほかにもKJ法,質的統合法,質的記述的研究,エスノグラフィー,歴史研究,事例研究,ナラティブ分析,参加型アクションリサーチについて概説し,腎不全領域でのテーマについて言及した.臨床家と質的研究者が共同することで,腎不全領域での臨床の質を高める知見を創出することが期待される.

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実現可能な医療と実際に提供されている医療との格差を解消するため,産業界で発展した品質管理手法を保健医療分野に応用したものが「継続的医療の質改善(Continuous Quality Improvement;CQI)」であり,個々人の努力に依存するのではなく,組織的,体系的に改善を計画,実行,評価することが特徴である.最近は単にQIと呼ぶことも多い.QIの実践は,新たな知識創造を主目的とするのではなく,特定組織が提供する医療・ケアの質を改善することが主目的であるが,実践報告を共有することで他の施設の改善につながったり,特定の状況を越えた一般化可能な知識を生み出すこともある.「医療の質改善」は臨床医学,応用行動科学である組織行動学,公衆衛生学などを含む学際分野であり,伝統的な疫学・臨床研究の手法以外のアプローチが必要になることもある.また,医療の質改善に関する有効な方法を論文化することは,その地域のみならず国,さらに国際的にも意義がある.そこで,本稿では「医療の質改善取り組みの報告のためのSQUIREガイドライン」についても概説する.

臨床研究倫理 佐古 まゆみ
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臨床研究倫理について,臨床研究に倫理性が求められる理由と臨床研究の倫理要件について説明した.真に倫理的な臨床研究とは,倫理性,科学的妥当性,社会的価値のすべてを満たすものであることを強調したい.また研究者には,出版倫理に関する知識も必要である.出版倫理については,国際医学雑誌編集者委員会から公表されている「生医学雑誌への投稿のための統一規制:生医学発表に関する執筆と編集」に沿って説明した.

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血液透析導入前後に発症した粟粒結核の2例を報告した。症例1は50代女性で、1年前にループス腎炎を原疾患とする末期腎不全で透析導入された。導入約1ヵ月後から38℃を超える発熱(間欠熱)が持続し、前医に入院した。各種画像検査や自己抗体などの血液検査で発熱の原因は特定できず、2ヵ月以上発熱が持続した。クォンティフェロン検査で陽性を示し、精査のため当院に転院した。胸部X線とCTで両肺野に小粒状影を認め、臀部に皮下結節を認めた。同結節の穿刺吸引液の抗酸菌塗抹検査でガフキー1号を認め、PCRによる同定検査で結核菌と判明し、粟粒・皮膚結核と診断した。INH・RFP・EBによる治療を開始したが、肝障害や食欲不振といった副作用が強く、十分な治療ができないままに死亡した。症例2は50代男性で、原疾患不明の保存期腎不全として治療中、38℃台の発熱(間欠熱)があり、その1週間後から肉眼的血尿が出現した。近医受診し、一般抗生剤の点滴治療を受けたが、発熱・血尿とも改善しなかった。胸部X線とCTで両肺野に粒状影、腹部超音波で左水腎症を認められ、尿の抗酸菌塗抹検査でガフキー3号、PCRによる同定検査で結核菌と同定され、粟粒・腎尿路結核の診断で当院に転院した。INH・RFP・EB・レボフロキサシンによる治療を開始したが、腎機能が悪化し、治療開始2週後に末期腎不全の状態に至ったため血液透析を開始した。透析を継続しながら抗結核薬治療を終了し、現在も週3回の維持透析を行っている。

基本情報

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臨牀透析
29巻4号 (2013年4月)
電子版ISSN:2433-247X 印刷版ISSN:0910-5808 日本メディカルセンター

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