胸部外科 72巻9号 (2019年9月発行)

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今月の臨床

大動脈縮窄/離断症に対する自己心膜補塡による大動脈弓再建術西岡　雅彦 , 渕上　泰 , 赤繁　徹 72巻9号 , 2019年9月 , pp.647-654

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大動脈縮窄症（CoA）/離断症（IAA）に対する大動脈弓再建では直接吻合法が選択される場合が多く，新生児，乳児期に対する早期・中期成績は良好である1）．しかし，直接吻合法は術後気管支狭窄や吻合部への過度の緊張による再狭窄2）などの合併症が報告されている．われわれもCoA/IAAに対する大動脈弓再建は直接吻合法を第一選択としているが，2013年以降は術後合併症が懸念される症例に対して大動脈弓小彎側に自己心膜を補塡する再建法を行っている．自己心膜補塡による大動脈弓再建時に二心室修復（BVR）を行った症例について，経過を検討し報告する．

今月の話題

同時性四重複癌に対する複数診療科の連携による集学的治療江場　俊介 , 野津田　泰嗣 , 星　史彦 , 大石　久 , 松田　安史 , 佐渡　哲 , 野田　雅史 , 桜田　晃 , 西條　憲 , 大越　明 , 田中　直樹 , 岡田　克典 72巻9号 , 2019年9月 , pp.655-657

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近年の診断技術の向上に伴い，早期においても癌が発見される機会が増加し，重複癌の報告も多くみられるようになったが，同時性四重複癌はきわめてまれである．

拡大胸腺摘除後切除範囲外に発生しMorvan症候群を合併した異所性胸腺腫島津　夢太 , 田中　宏和 , 渡辺　裕介 , 山﨑　順久 , 中出　雅治 72巻9号 , 2019年9月 , pp.660-663

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Morvan症候群は電位依存性カリウムチャネル（VGKC）複合体抗体による自己免疫性疾患の一種であり，胸腺腫に合併することのある非常にまれな疾患である．われわれは，肺門部に発生した異所性胸腺腫の経過中にMorvan症候群を発症した症例を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する．

肺炎を契機に発見された成人先天性肺気道奇形松竹　晴美 , 冨満　信二 , 武田　雄二 , 手石方　崇志 , 林　明宏 72巻9号 , 2019年9月 , pp.664-667

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先天性肺気道奇形（CPAM）は，新生児期までに呼吸障害を呈することが多い．無症状で経過し肺炎で発見されることもあるがまれである．われわれは，成人まで無症状で経過し肺炎を契機に発見されたCPAMの1例を経験したので報告する．

まい・てくにっく

硬性鏡下気道内ステント留置のコツと注意点中島　崇裕 , 石田　格 72巻9号 , 2019年9月 , pp.658-659

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硬性鏡下手技では，硬性鏡挿入そのものをむずかしいと感じる読者も多いだろう．筆者は硬性鏡に軟性鏡（気管支ビデオスコープ）を挿入して使用している．この方法では手技に2人必要である反面，観察したい部分をスコープ操作により観察できるメリットがある．

１枚のシェーマ

僧帽弁再々置換術と三尖弁再置換術宮入　剛 72巻9号 , 2019年9月 , pp.668

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筆者の前任地の三井記念病院での症例である．72歳・女性であった．既往に僧帽弁狭窄症に対する直視下交連切開術，生体弁による弁置換術，機械弁による弁置換術があり，今回は術後15年目の弁周囲逆流に対する4回目の心臓手術であった．当時，三井記念病院ではこのような患者は珍しくなく，特に生体弁置換後の機械弁置換では，弁周囲組織の劣化が激しかった．

手術の工夫

背部傍正中切開法を用いた胸壁浸潤肺癌切除土肥　良一郎 , 町野　隆介 , 徳永　隆幸 , 辻　博治 , 田川　努 , 永安　武 72巻9号 , 2019年9月 , pp.669-672

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肺尖部や下位胸壁に浸潤した胸壁浸潤肺癌においては，胸腔鏡下の肺門処理と，浸潤胸壁直上に限定した胸壁切除創とすることで，皮膚切開開胸創の縮小という意味での低侵襲化の工夫が数例報告されている．われわれは下位胸壁浸潤肺癌に対して，肋横関節切除を含む下位胸壁合併切除を背部傍正中切開による筋温存小開胸手術で行い，開胸創短縮をなしえた症例を経験したので報告する．

臨床経験

弓部大動脈人工血管置換術後遠隔期の脳梗塞に対する静脈注射血栓溶解療法後に生じた縦隔血腫北浦　順也 , 向井　省吾 , 森元　博信 , 二神　大介 , 古田　晃久 72巻9号 , 2019年9月 , pp.673-676

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急性期脳梗塞に対する組織プラスミノゲンアクチベータ（t-PA）静脈注射による血栓溶解療法は，脳卒中治療ガイドラインで推奨される標準的治療となっている．一方，その合併症に関しては頭蓋内出血がもっとも重大であるが，その他の出血性合併症も報告されている．われわれは，上行弓部大動脈全置換術（TAR）後遠隔期に急性期脳梗塞のためt-PA静脈注射療法を施行した直後に，遠位弓部～下行大動脈の周囲に広範な後縦隔血腫を生じた症例を経験したので報告する．

原発性多発肺髄膜腫酒井　健司 , 染谷　毅 , 笠原　一郎 , 伊藤　栄作 , 白井　俊純 72巻9号 , 2019年9月 , pp.677-680

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髄膜腫は中枢神経系の腫瘍で，硬膜から発生し髄膜皮細胞によって構成されている．一般に発育は緩徐で，予後は良好なものが多い．原発性脳腫瘍としては比較的頻度の高いものであるが，中枢神経系以外に発生する異所性のものはまれで，なかでも原発性肺髄膜腫はきわめてまれである．われわれは，卵巣未熟奇形腫の術後遠隔期に両肺に多発する肺腫瘤に対し手術を行い，多発性原発性肺髄膜腫の診断を得た症例を経験したので報告する．

連載　専門医に必要な画像診断技術　（第9回）

3　CT―迅速・詳細な評価

呼吸器田中　伸幸 , 小林　大河 , 林　雅太郎 , 田中　俊樹 72巻9号 , 2019年9月 , pp.681-689

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近年のCT装置やCTワークステーションの進歩は著しく，同様に進歩している肺癌に対する手術に多大なる貢献をしていると思われる．CTをはじめとする画像診断は，手術の可否や術式に影響を与えているので，その解釈には放射線科医のみならず，外科医も知っておくべき情報や知識が多く存在する．本稿では手術に際して重要なCT診断について，2017年に改訂された肺癌取扱い規約第8版にのっとって局在・進展の診断を解説する．

症例

大動脈腸骨動脈閉塞性疾患を合併した重症大動脈弁狭窄症に対し腹部大動脈人工血管置換術を同時施行した経カテーテル大動脈弁留置術の1例内野　英明 , 金　哲樹 , 中村　健 , 小林　龍宏 , 島貫　隆夫 , 菅原　重生 72巻9号 , 2019年9月 , pp.690-693

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はじめに　大動脈弁狭窄症（AS）はほかの動脈硬化性疾患を合併していることが多く，ASに対する治療戦略上，問題となることがある．われわれは，大動脈腸骨動脈閉塞性疾患（AIOD）を合併した高齢者重症ASに対し，Y型人工血管左脚をアクセスルートとして，経カテーテル大動脈弁留置術（TAVI）を施行した1例を経験したので報告する．

複雑な解剖を合併した大動脈弁狭窄症に対して経カテーテル大動脈弁置換術を施行した1例髙橋　研 , 道本　智 , 磯村　彰吾 , 重城　健太郎 , 大槻　尚男 , 山口　淳一 , 新浪　博士 72巻9号 , 2019年9月 , pp.694-697

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はじめに　二尖弁に対する経カテーテル大動脈弁置換術（TAVR）の成績は，デバイスの進化とともに向上してきている1）．しかし弁輪の確立した計測方法はなく，また上行大動脈拡大やhorizontal aortaなどの複雑な解剖を合併する症例も多いため，いまだに挑戦的である2～4）．われわれは，上行大動脈瘤，陳旧性心筋梗塞による左室瘤，horizontal aortaを合併し，ワイヤー操作が複雑であった二尖弁の大動脈弁狭窄症（AS）に対してTAVRを施行し，良好な結果を得たので報告する．

冠状動脈バイパス術後に胸肋鎖骨肥厚症が判明し治療に難渋した1例堀内　和隆 , 中田　俊介 , 薦田　さつき , 湯浅　毅 72巻9号 , 2019年9月 , pp.698-701

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はじめに　冠状動脈バイパス術（CABG）において内胸動脈グラフトの使用は，生存率，心事故回避率，良好な開存率の点からゴールデンスタンダードとなっている．しかし，内胸動脈グラフトの狭小や採取時の損傷の場合，使用できずにグラフトデザインを変更せざるをえない場合がある．われわれは胸肋鎖骨肥厚症を合併したCABGにおいて，内胸動脈剝離が困難で使用不可能となり，治療に難渋した症例を経験したので報告する．

冠状動脈バイパス術後に著明な循環不全とともに高血糖・高乳酸血症を呈し治療に難渋した1例谷川　和好 , 小林　俊也 , 盧　大潤 , 杵渕　聡志 72巻9号 , 2019年9月 , pp.702-705

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はじめに　周術期管理において，血糖値および血中乳酸値のモニタリングは重要な指標である．われわれは，冠状動脈バイパス術（CABG）後に著明な循環不全とともに高血糖，高乳酸血症を呈し，治療に難渋した1例を経験したので報告する．

日齢5日に循環不全となり緊急でのパッチ閉鎖が有効であった冠状動脈瘻の1例桑原　優大 , 高橋　幸宏 , 和田　直樹 72巻9号 , 2019年9月 , pp.707-711

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はじめに　冠状動脈瘻（CAF）は比較的まれな疾患であり，先天性心疾患の0.2～0.4％を占める1）とされているが，自然治癒の期待はできず，手術治療が多く選択される疾患である．未治療で経過する例も多く治療介入時の年齢層も広く，瘻孔関与血管や瘻孔部位，瘻孔数にさまざまなタイプが存在し，ほかの心疾患の合併も認めるため，症例ごとの治療戦略の検討が必要とされる．われわれは新生児期に循環不全に陥ったCAF例を経験し，良好な結果を得たので文献的考察を加え報告する．

小児において心不全を呈した心外膜リードによる心絞扼の1例保坂　達明 , 小澤　司 , 片山　雄三 , 塩野　則次 , 磯部　将 , 亀田　徹 , 布井　啓雄 , 大熊　新之介 , 原　真範 , 益原　大志 , 藤井　毅郎 , 渡邉　善則 72巻9号 , 2019年9月 , pp.712-715

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はじめに　小児の心外膜リードによる心絞扼は，まれではあるが，致命的になりうる重大な合併症である．本邦において2013年4月に主要3学会から注意喚起がうながされた1）が，検索しうる限り2018年までに22例の報告があり，うち5例が死亡している2，3）．われわれは心外膜リードの心絞扼により心不全症状を呈した1例を経験したので報告する．

CA19-9産生肺粘液・非粘液混合腺癌の1例保坂　靖子 , 野内　達人 , 信澤　純人 72巻9号 , 2019年9月 , pp.716-719

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はじめに　CA19-9産生肺癌の多くは粘液産生性の腺癌であり，また，発見時には進行例が多く予後不良である．われわれは，術前に血清CA19-9高値を認め，組織学的に腫瘍よりCA19-9産生が確認された粘液・非粘液混合腺癌の1例を経験したので報告する．

肺乳頭腺腫の1例庄村　心 , 鈴木　仁之 , 澤田　康裕 , 近藤　智昭 , 新保　秀人 72巻9号 , 2019年9月 , pp.720-723

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はじめに　肺乳頭腺腫は，肺癌との鑑別を要するまれな腫瘍である．われわれは，肺乳頭腺腫の1例を経験したので報告する．

胸部外科医の散歩道

5時で帰る心臓外科医碓氷　章彦 72巻9号 , 2019年9月 , pp.706

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医師の残業上限を年間1,900～2,000時間とする厚生労働省案が本年1月11日の「医師の働き方改革に関する検討会」で報告された．NHKニュースを聞いた私の感想は，「そんなに働いている医師は誰であろうか」であった．私は大学勤務で毎朝7時30分の検討会・回診から1日が始まり，通常夜8～9時までは雑務に追われている．しかし，病院勤務の意識は低いため，時間外申請は長時間手術のみに留めている．教室員も同様の基準で時間外申請を行っている．このため36協定に抵触する月45時間以上の時間外勤務を指摘される医師は，数人に留まっている．

基本情報

胸部外科
72巻9号
(2019年9月発行)

電子版ISSN：2432-9436 印刷版ISSN：0021-5252 南江堂

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