連載 臨床神経学プロムナード—60余年を顧みて・2
易しそうで難しい腱反射—Babinskiの原著:必読と言われる所以
平山 惠造
1,2
1千葉大学(神経学講座)
2日本神経治療学会
pp.389-391
発行日 2021年4月1日
Published Date 2021/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201772
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腱反射検査法(診察法)は足底皮膚反射と並んでBabinski(1912)1)の大きな業績の一つである。彼の業績集(1934)の冒頭に相次いで収録されている。しかし腱反射の検討は彼以前に既に始まっていたようで(一説には1875年頃と言われる),実際にCharcotの「火曜講義」(1892)2)の中の挿絵の隅にハンマーが描かれているものがある。また,Charcotの「金曜講義」に再録されているJoffroyとの筋萎縮性側索硬化症(ALS)の最初の報告例(1869)3)の臨床記述の中に「前腕背面に軽い打撃を加えると指(複数)や手全体に著明な伸展運動を来たす」という記述がある。まさに指伸筋群の腱反射亢進を示している。
Babinskiが本格的に腱反射の臨床的研究に取り組んだ背景には当時Charcotが取り組んでいたいわゆるヒステリー性麻痺と器質的運動麻痺との鑑別にあったようであるが,Charcotの没後に,もっと広く腱反射そのものの研究に取り組んだ。その徹底振りは原著を見れば一目瞭然である。腱反射の歴史から始まり,動物実験による生理学的所見に触れた後で,腱反射の診察法を説き,健常な場合からいろいろな病態における解説を行っている。彼はこれを1912年10月から11月にかけ,4回に分けてPitié病院で講義した1)(上記の業績集で49頁を占めている)。その全訳が雑誌「内科」(1960)1)に収載されているので容易に知ることが出来よう。
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