BRAIN and NERVE 72巻8号 (2020年8月)

特集 サルコイドーシス

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特集の意図

サルコイドーシスは全身疾患であるが,診断困難例,難治例は神経系に集中している。しかしながら神経サルコイドーシスには特異的な所見が極めて少なく,また,治療に関するエビデンスに乏しいことから,脳神経内科では診断・治療に苦慮する疾患である。本特集では,神経サルコイドーシスに対してどのような診断・治療戦略を立てるべきか,また,どのような場合に神経サルコイドーシスを鑑別診断に挙げるべきなのかという点について論じていただく。

脳サルコイドーシス 髙尾 昌樹
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神経サルコイドーシスの中で,特に脳病変を中心にまとめた。脳神経障害,頭痛,意識障害,痙攣など複数の神経症候を呈することが多い。多岐にわたる疾患が鑑別すべき疾患に挙がり,結核,真菌感染症は適切に除外されなければならない。したがって,脳病変からの病理診断が極めて重要であり,積極的に考慮されるべきである。治療としてプレドニゾロンの投与が一般的であり,加えて腫瘍壊死因子αに対するインフリキシマブの有用性が示されている。

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脊髄サルコイドーシスは,脊髄病変の生検が困難な場合が多く,確定診断を得難い。組織診断以外に特異的な検査所見はなく,臨床症状,細かな全身検索,脊髄以外の可能な部位での生検といった多くの所見を総合して診断精度を高めることを心がけたい。長期間の免疫治療を要する例が多く,診断根拠が乏しい段階での治療開始は極力避け,治療による修飾を受ける前に過不足なく検査を行い,より多くの診断根拠を得る努力が必要である。

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サルコイドニューロパチーの臨床像は非常に多様である。多発性単神経型の分布が典型的であるが,ポリニューロパチー様の分布を示すことも多い。その際にも左右差や神経根障害を反映した四肢近位部優位の症候,末梢神経の分枝レベルの感覚障害,疼痛などの陽性症状を伴う感覚障害があれば,本症を疑う根拠となる。電気生理的には軸索障害が不均一な広がりをもって見られるが,時に脱髄様の変化を示すことから他疾患との鑑別診断が問題となる。

筋サルコイドーシス 杉江 和馬
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筋サルコイドーシスは,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が筋組織内で免疫学的機序により形成される原因不明の肉芽腫性筋炎である。その多くが無症候性で画像検査や筋生検により発見される。症候性(=サルコイドミオパチー)は稀な病態で,進行性の筋力低下や筋萎縮を呈する場合があり,早期診断・早期治療が求められる。診断には画像検査とともに丹念な筋病理解析が必須である。ステロイド治療が第1選択であるが,難治例もあり,依然治療方針は確立しておらず今後の課題である。

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サルコイドーシスは慢性の肉芽腫性炎症である。若年成人に多いとされているが,すべての年齢で発症する。肺,眼,皮膚を主におかし,神経病変は稀とされているが,剖検例においては25%に神経病変を認める。神経系では髄膜,脳神経,脳,脊髄,下垂体,末梢神経,筋肉をおかす。サルコイドーシスの所見は非特異的であるが,サルコイドーシスの本態は比較的形の揃った微小な肉芽腫とその集簇であり,画像所見もこの微細構造を反映することが多い。本論では各画像モダリティの特徴および各部位における画像所見を解説する。

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神経サルコイドーシスは組織診断が行いづらく確定診断が困難である。また症例数が少ないことから,治療薬のエビデンスに乏しい。他臓器サルコイドーシスと比較し神経サルコイドーシスは治療抵抗性のことが多い。治療の主軸はステロイドであるが,二次治療としてメトトレキサートなどの免疫抑制薬や抗腫瘍壊死因子α(TNF-α)製剤など,自他覚徴候や病勢により考慮していく。

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神経難病は根本的な治療方法がなくADL低下が不可避の疾患であるため,患者はなんらかの支援を受けながら長期療養を余儀なくされる。神経難病患者の望む療養生活を切れ目なく支えるために,専門医療機関と地域医療機関のネットワーク構築が進められている。本論では難病医療提供体制における在宅診療を担う医療機関の役割について,実臨床に即して概説する。

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症例は70歳男性。めまい感,ふらつきを主訴に前医へ救急搬送され,入院翌日に呼吸障害が,第3病日に弛緩性の四肢麻痺が生じ,当院へ転院となった。第1病日に前医で施行した頭部MRI検査では明らかな信号変化はなかった。数日の経過で四肢の筋力低下や呼吸不全が進行性増悪を示したことからGuillain-Barré症候群およびその亜型が鑑別となったが,第6病日の頭部MRI拡散強調画像で両側延髄内側に高信号変化を認め,両側延髄内側梗塞と診断した。進行性に四肢麻痺や呼吸障害が出現する症例では両側延髄内側梗塞を考慮する必要があり,継時的な頭部MRI検査が重要である。

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遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)は多臓器における多発性毛細血管拡張を特徴とする疾患である。今回,脳出血で発症した乳児でHHTの家族歴より同疾患を強く疑い,CTAで脳動静脈瘻を確認した。HHTに合併する脳動静脈瘻は年少例,出血による発症例が比較的多い。家族歴からHHTを疑う場合には,無症候例でも早期に画像スクリーニングを行うことで神経予後の向上につながる可能性がある。

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 『Dr.セザキング直伝! 最強の医学英語学習メソッド[Web動画付]』は,USMLEコンサルタントである「セザキング」こと瀬嵜智之医師が書き下ろした医学英語学習の教科書である。瀬嵜氏は学生時代にUSMLEのSTEP 1に最高スコアで合格し,その後も最難関とされるSTEP 2 CSを含め全STEPに一発合格。現在はUSMLEに特化したオンラインサロンを主宰し,指導した人数は1,000人を超える。

 さて,ここまで読んだ方は,まさに才能あふれる超人的な男の遍歴を聞いた気になるかもしれない。だが実は「そうではない」ところが本書の最大の特徴であり,傑出した点である。まず,瀬嵜氏が「トラウマレベル」と語るほど英語が苦手だった過去を披露するところから本書は始まる。むろん,優秀な人物はすべからく謙遜が得意だ。ところが,彼の語る英語遍歴は確かに,想像以上である。高校3年生時の英語の偏差値は30台,現役時代のセンター英語は58%と6割を下回っており,二次試験にわざわざ英語の“ない”医学部を選んだ,という有様なのである。

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 僕が在宅医療の世界に足を踏み入れたのは2006年のこと。

 医師として9年目。急性期医療に携わりながら,自分の仕事が患者さんを幸せにしているのか悩んでいた大学院生時代,偶然に在宅医療のアルバイトに出合った。人工呼吸器とともに日々をポジティブに生きる人,残された時間が長くないことを知りながらも自分の人生を振り返りながら家族との時間をいとおしむように過ごす人,病院で診てきた「患者」とは違う,「生活者」としてのその人たちの表情を見ることができた。治らない病気や障害があっても,人生の最終段階にあっても,人は最期まで幸せに生き切ることができる。医師としての価値観を揺るがされるような衝撃だった。その半年後,大学院を退学した僕は,最初の在宅療養支援診療所を開設する。

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次号予告

あとがき 髙尾 昌樹
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 私にとってサルコイドーシスと言えば,学生時代に習った両側肺門部リンパ節腫脹程度の知識で止まったままですし,呼吸器系のサルコイドーシスの患者さんをそれほど多く診療した経験もありません。しかし,脳神経内科という立場では,神経系サルコイドーシスはさまざまな場面で重要です。

 本号は,サルコイドーシスの特集です。多くのテキストでは,「神経サルコイドーシス」ということで一括されて書かれることが多いのですが,ここでは脳,脊髄,末梢神経,筋と部位ごとに詳しく書かれています。興味のあるところだけでなく,ぜひすべてに目を通していただきたいと思います。また,画像,治療について最新の情報もまとめられています。サルコイドーシス自体,ものすごく多い疾患ではありませんが,脳に限ってみれば,髄膜炎,髄膜癌腫症,悪性リンパ腫,真菌感染などを鑑別しなければならず,診断が容易ではありません。そもそも鑑別診断のリストにサルコイドーシスを忘れてしまいそうになります。本誌を読んだ後は,サルコイドーシスを積極的に診断できるようになれると思います。

基本情報

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BRAIN and NERVE
72巻8号 (2020年8月)
電子版ISSN:1344-8129 印刷版ISSN:1881-6096 医学書院

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