糖尿病診療マスター 15巻9号 (2017年9月)

特集 糖尿病診療 温故知新—こんなに変わった!昭和の常識

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こんなに変わった!

・インスリンの最初のターゲットは肝であり,肝・ブドウ糖取り込み率こそが食後血糖応答を規定している.

・膵ラ島内でのインスリン作用がグルカゴン分泌を制御している.

・2型糖尿病治療の目的は内因性インスリン分泌を回復させ,健常人にみる“糖のながれ”を再現することにある.

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こんなに変わった!

・1970年代には血糖値の変動(高血糖,低血糖)の主原因は不適切なインスリン量,インスリン投与後のインスリン抗体などであると考えられていた.

・C-ペプチド測定が可能となり内因性のインスリン分泌こそが血糖値の安定に関係することが明らかになった.

・内因性インスリン分泌と膵島自己抗体などの成因マーカーにより判定する1型糖尿病という疾患概念が一般的となった.

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こんなに変わった!

・良好な血糖コントロールが可能となり,網膜症の予後を改善した.

・眼科的治療の光凝固・硝子体手術・薬物療法が進歩して網膜症の進行・悪化を食い止めることが可能となった.

・眼科検査ではOCTで非侵襲的かつ定量的に網膜症所見を捉えることが可能となった.

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こんなに変わった!

・従来の糖尿病性腎症はネフローゼ症候群を特徴とし,腎機能低下が早く進行し,透析導入される.

・一方,現在は蛋白尿が軽度で腎萎縮を示し,進行が緩徐な症例が多い.

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こんなに変わった!

・唯一の原因療法としてアルドース還元酵素阻害薬が登場.

・作用メカニズムの新しい神経障害性疼痛治療薬が登場し,糖尿病患者に朗報.

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こんなに変わった!

・2型糖尿病が膵島でのβ細胞減少,アミロイド沈着という病理学的背景をもつ疾患となった.

・2型糖尿病の病理学的背景もアジア人と欧米人,肥満型と非肥満型で異なることがわかった.

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こんなに変わった!

・医療・教育キャンプから療育キャンプへ.

・全体にキャンプ期間が短くなった.

・医療機器の進歩で,再度医療キャンプ的性格へ.

糖尿病患者死因の変遷 及川 眞一
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はじめに

 恩師である後藤由夫先生(東北大学名誉教授)は,日本病理学会から毎年刊行されている日本病理剖検輯報(第1報は1960年刊行)のなかから糖尿病患者を抽出して症例カードを作成していた.これらのカードは後藤先生自らが作成したもので,われわれはそのカードから主たる死因と病理所見をまとめ,一覧にして集計するといった作業を行った.主たる死因のなかには「糖尿病の悪化」などが記されていた.このような報告に続き,名古屋大学第三内科・坂本信夫教授,堀田 饒教授らが進めたアンケート調査により日本人糖尿病における死因調査が行われ,最近の愛知医科大学糖尿病内科・中村二郎教授の報告に至っている.これらを振り返り,この50年間の死因の変遷を考えたい.

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こんなに変わった!

・血糖測定は検体量が少なく特異性が高く迅速性の高い方法に変わった.

・血糖コントロール指標としてHbA1cが用いられるようになった.

血糖自己測定の変遷 池田 義雄
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こんなに変わった!

・コントロール指標は尿糖から血糖,HbA1cへ.

・SMBG情報は点から線(CGM)へ.

・SMBG記録は記帳からICTへ.

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こんなに変わった!

・相変わらず難しいグルカゴンの動態把握.

・インクレチンについて一般の先生方の受け止め方が大きく様変わりし,大変ポピュラーになった.

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こんなに変わった!

・インスリン療法の使命は“救命”から“QOLの維持”へと大きく姿を変えた.

・インスリン製剤とデバイスの進歩はインスリン療法の概念を一変させた.

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 昭和から平成となり30年が経とうとしています.糖尿病診療は昭和の時代とは大きく変わってきました.今回,「糖尿病診療 温故知新」というタイトルの特集を組ませていただきましたが,糖尿病診療についてはいま日本で一番長い経験をお持ちになる後藤先生をお招きし,同じ門下生で大先輩の八木橋先生とともにお話を伺いました.(赤井裕輝)

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運動療法内容

個別運動指導

 月〜木曜日 午前9:00〜12:00,午後13:30〜17:00,夜間17:00〜21:00

 金〜土曜日 午前9:00〜12:00,午後13:30〜17:00

 個々のメニューに沿って運動を行い,健康運動指導士がサポートする.

集団教室

 午前・午後・夜間の3部(各部2〜3教室)で開催され,有酸素運動,筋力系,ストレッチ系のプログラムを週35コマ実施している.

Perspective◆展望

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 今上陛下は来年末に譲位され,新しい時代を迎えることとなった.年号が平成となってすでに29年にもなった.平成生まれの医師が臨床現場で活躍する場面も増えている.3年後に開催される東京オリンピックの準備が進んでいるが,前回の東京オリンピックを小学4年で迎えた私は,当時をよく覚えている.白黒テレビの時代で,大人からは「日本でオリンピックが開催されることはもうないから,よく見ておきなさいね」とまで言われた.まさに世紀の国家イベントであった.平成の今,国民はオリンピックもクールに迎えようとしている.当時の校長先生のあいさつは,決まって「戦争が終わって20年たちました……」であった.担任の先生も長崎での被爆者であったので,戦争中の話は学校生活での日常であった.戦争中の苦難,教育や社会が大きな変革を遂げる戦後の混乱期を生き抜いて,子どもたちを教育してきた先生たちにとっては,感慨深い20年であったことだろう.その後も平和のつづく日本であるが,昭和時代が終わって戦後もすでに70年,平成時代も20年どころか30年になろうとしており,こんな私の話すら昔話となってしまう時代となっている.

 医療,特に糖尿病医療はこれもまた大きな進歩を遂げてきた.私が内科医になった昭和50年代,糖尿病の内服薬はSU薬のオイグルコン・ダオニール(グリベンクラミド)にグリミクロン(グリクラジド)と,ジベトスB(ブホルミン;ビグアナイド薬)であった.東北大学病院ではジベトスBが普通に処方されていたが,多くの病院では使われなかった.インスリンはレンテインスリン,モノタードインスリンの2回注射が主流で,レギュラーインスリンとシリンジ内で混ぜ合わせて注射していた.レギュラーを先に詰めることを間違えてはならなかった(逆にすると,針内のレンテインスリンが混ざることで,レギュラーインスリンのバイアル内がレンテ化し白濁化してしまうためであった).ヴェロスリンとインスラタードによる4回注射が始まる頃でもあり,やがて1押しで2単位注入されるペン型注射デバイス・ノボペンが登場した.血糖コントロールの指標にHbA1(HbA1cの前身)が使われ始めた頃でもあり,アルブシュアによる尿中アルブミンのチェックも始まった.24時間尿中C-ペプチドの有用性に気づかれ始めたのもこの頃である.懐かしい時代であるが,平成29年から見ると改めて隔世の感がある.

糖尿病に効くコーチング 明日から始めてみませんか?・9

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 初診で皆さんの前に現れる糖尿病患者さんにはいろいろな事情があると思います.初めて糖尿病と診断されたばかりの人,糖尿病と言われたが納得できないという人,他院で糖尿病の治療を受けているがうまくコントロールできていない人,他院の治療に不満をもって転院を希望してきた方,自分は病気だと思っていないが,家族あるいは会社から言われてしぶしぶやってきた人,あるいはたまたま風邪で受診されて糖尿病が見つかり,糖尿病であるということを告知しないといけない場合などです.また,ご本人に自覚症状があるかないか,1型糖尿病か2型糖尿病かなど,病態や患者さんの心境によっても,こちらの対応は微妙に変わると思います.しかし,残念ながら,初対面でこのような患者さんの思いや事情がすぐにわかるわけではありません.では,どうするか? まずは患者さんに語ってもらい,相手を理解することから始めることが大切です.ここでは,まず初めての患者さんが来られた時にどう対応するかについて,お話ししようと思います.

糖尿病患者の口腔健康管理 はじめの一歩・9

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歯周病の重症度判断

 一般成人の約8割が歯周病に罹患していると言われているなかで,特に糖尿病に罹患されている方では,歯周病に罹患している方も多く存在し,かつ歯周病が重症化していることも多く見受けられます.歯科医師からみますと,歯科来院患者が糖尿病であることを知らせていただくか,医療面接で聞き出せれば,その後の歯科治療を行うに際しても顧慮できます.しかし,現実には,歯科受診者の糖尿病罹患だけでなく,他の多くの疾患に罹患しているか,あるいは治療を中断しているかなどの情報は,ご本人の認識がないとなかなか聞き出すこともできない状況であることも多いように思われます.歯科に受診しているのに,なぜ,他の病気について伝えるのかと思う方もおりますし,言いづらい疾患ではなおさらです.たとえば内科でも,同じようなことはあると思いますが,実際のところはどのような状況になっているのか少し気になります.

 日々の臨床において,糖尿病専門の代謝内科だけでなく,医科受診者においては,程度の差があるとはいえ,ほとんどは歯周病に罹患していると考えられます.しかし,その中で,特に歯科受診を強く勧めるべき方を選択するのは,時間的制約の内での診療においては,かなりの負担を伴う作業となるように思われます.以前,ある内科の先生が,「眼科のように基準が明確であればレベルがわかりやすく紹介しやすいけれど……,歯科はわかりにくい.」とおっしゃっていたことがあります.ちょっとしたことでも,歯科的に気になることを患者さん自身が話されるか,医師がなんとなく気になることを見出すか,あるいは,糖尿病と確定診断のついている患者には,ためらうことなく,眼科に対診を依頼するように「一度,歯科受診してみてください.」と受診勧奨するほうが,悩むこともなくよっぽどよいのかもしれません.なにせ,一般成人の約8割は歯周病なのですから,ましてや糖尿病患者ではそれ以上の高率で罹患されていることは容易に想像できることだと思います.

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 カナダでは心疾患,糖尿病,高血圧,脂質異常症などの生活習慣が原因となる慢性疾患を予防するために,DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食や,フルーツ・野菜・全粒穀物・野菜・ナッツ類・植物性タンパク質を多く摂取することが推奨されています.しかしながら,これらの推奨された食生活の指導は困難な場合も少なくありません.今回ご紹介する文献は,これらの食品を摂取するよう助言する場合に,食品そのものを提供することがどれだけ心疾患の危険因子を改善するために有効かを検討しました.

 対象は919名の18歳以上のカナダ在住の健常者のうちBMI 25kg/m2以上の者です.糖尿病,心疾患,悪性腫瘍,肝疾患などの既往がある者は除外されています.対象者はコントロール群,助言のみ提供された(助言提供)群,食品のみ提供された(食品提供)群,助言と食品の両者を提供された(助言+食品提供)群の4群に分けられて,コントロール群と他の3群の参加者の合計人数がおよそ1対1になるようにデザインされランダム化比較試験が行われました.試験開始時にはすべての群に,カナダで推奨されている健康食事ガイドの冊子が配布され,助言提供群には,最初の1カ月は週1回のペースで食生活に関する助言を電話で行い,以後の2〜6カ月は月1回の頻度で電話での助言を継続しました.食品提供群には約6カ月間,推奨されている内容に沿った食品を週に1カゴ分提供し,助言+食品提供群には上記の助言と食品提供の両方を行いました.主要評価項目は体重で,副次評価項目は腹囲,推奨食物の摂取量,血圧,脂質,血糖値とし,試験開始後6カ月目と18カ月目でベースラインからの変化を比較し評価しました.

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糖尿病診療マスター
15巻9号 (2017年9月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

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