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今上陛下は来年末に譲位され,新しい時代を迎えることとなった.年号が平成となってすでに29年にもなった.平成生まれの医師が臨床現場で活躍する場面も増えている.3年後に開催される東京オリンピックの準備が進んでいるが,前回の東京オリンピックを小学4年で迎えた私は,当時をよく覚えている.白黒テレビの時代で,大人からは「日本でオリンピックが開催されることはもうないから,よく見ておきなさいね」とまで言われた.まさに世紀の国家イベントであった.平成の今,国民はオリンピックもクールに迎えようとしている.当時の校長先生のあいさつは,決まって「戦争が終わって20年たちました……」であった.担任の先生も長崎での被爆者であったので,戦争中の話は学校生活での日常であった.戦争中の苦難,教育や社会が大きな変革を遂げる戦後の混乱期を生き抜いて,子どもたちを教育してきた先生たちにとっては,感慨深い20年であったことだろう.その後も平和のつづく日本であるが,昭和時代が終わって戦後もすでに70年,平成時代も20年どころか30年になろうとしており,こんな私の話すら昔話となってしまう時代となっている.
医療,特に糖尿病医療はこれもまた大きな進歩を遂げてきた.私が内科医になった昭和50年代,糖尿病の内服薬はSU薬のオイグルコン・ダオニール(グリベンクラミド)にグリミクロン(グリクラジド)と,ジベトスB(ブホルミン;ビグアナイド薬)であった.東北大学病院ではジベトスBが普通に処方されていたが,多くの病院では使われなかった.インスリンはレンテインスリン,モノタードインスリンの2回注射が主流で,レギュラーインスリンとシリンジ内で混ぜ合わせて注射していた.レギュラーを先に詰めることを間違えてはならなかった(逆にすると,針内のレンテインスリンが混ざることで,レギュラーインスリンのバイアル内がレンテ化し白濁化してしまうためであった).ヴェロスリンとインスラタードによる4回注射が始まる頃でもあり,やがて1押しで2単位注入されるペン型注射デバイス・ノボペンが登場した.血糖コントロールの指標にHbA1(HbA1cの前身)が使われ始めた頃でもあり,アルブシュアによる尿中アルブミンのチェックも始まった.24時間尿中C-ペプチドの有用性に気づかれ始めたのもこの頃である.懐かしい時代であるが,平成29年から見ると改めて隔世の感がある.
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