糖尿病診療マスター 15巻6号 (2017年6月)

特集 腸内細菌—糖尿病・肥満にまつわる10 topics

Ⅰ総論

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POINT

・ヒト腸内細菌叢には国・集団間多様性が存在し,その多様性は健常-疾患細菌叢間の多様性よりも大きい.

・国・集団間多様性は人種や地理的位置関係,食習慣などと必ずしも相関しない.

・ヒト腸内細菌叢には国特異的な菌種と機能が存在する.

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POINT

・近年の腸内細菌叢分析の主流は次世代シーケンサーを使った16S rRNAメタゲノム解析.

・解析の手技,機械が委託会社で異なるので,委託時には慎重な選定が必要.

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POINT

・腸管壁透過性亢進は抗原曝露を促進させる.

・1型糖尿病発症前から腸内細菌叢の変化が起こる.

・腸内細菌叢の変化が制御性T細胞を調節する.

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POINT

・腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸は糖代謝に関与する.

・高脂肪食は腸内フローラの乱れの原因となる.

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POINT

・動物脂肪の過剰摂取は腸内細菌による発酵力を弱め,単鎖脂肪酸の産生が低下する.

・玄米などの未精製全粒穀物は腸内細菌による発酵力を高め,単鎖脂肪酸の産生を増加させ,生体機能を向上させる.

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POINT

・脳と腸管はbrain-gut interaction(脳腸連関)により相互作用をもつ.

・腸内細菌は迷走神経,腸管ホルモンを介して摂食行動に影響を与える可能性がある.

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POINT

・メタボリックシンドロームは慢性炎症を合併する.

・メタボリックシンドロームでは腸管バリア機能の低下が認められる.

・メタボリックシンドロームでは腸内細菌による短鎖脂肪酸や胆汁酸代謝に変化が認められる.

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POINT

・腸内細菌由来の代謝物TMAOが動脈硬化の悪化と心血管イベント増加に関連する.

・冠動脈疾患発症患者に特徴的な腸内細菌叢のタイプを同定した.

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POINT

・プロバイオティクスはインクレチン分泌,膵β細胞保護,インスリン感受性を改善する.

・臨床試験で,プロバイオティクスの血糖降下作用が報告されている.

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POINT

・糖尿病患者の視点は,健康によくてかつ甘くて美味しいものに向いている.乳酸菌飲料はまさにこの条件に適合する.

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POINT

・腸管上皮の脂肪酸酸化亢進により食後高脂血症が改善する.

・腸内細菌が産生する脂肪酸誘導体に食後高脂血症改善作用が期待される.

Ⅱ各論 コラム

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POINT

・人工甘味料による直接の血糖上昇効果は確認されていない.

・人工甘味料は,腸内細菌叢の変化を介して糖代謝に影響する可能性がある.

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POINT

・プリン体制限は高尿酸血症の生活指導の一つであるが,実際には必ずしも容易ではない.

・プリン体を吸収し分解する乳酸菌の一種であるPA-3株が血清尿酸値を低下させる作用を確認した.

・薬物の替わりにはならないが,生活習慣指導のなかで有用と考える.

Perspective◆展望

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 ヒトの腸管には100兆個以上の細菌が棲みついており,腸内細菌叢(intestinal flora/microbiota)を形成しています.ヒトの細胞数が60兆個(2013年のAnnals of Human Biologyによると37.2兆個)といわれていますので,腸管内には人体の総細胞数よりも多い数の細菌が存在し,共生(symbiosis)していることになります.

 この腸内細菌叢の状態,すなわち腸内環境がヒトの健康状態や疾患の発症に大きく関わっていることが,近年の研究で明らかになってきました.糖尿病や肥満との関連性についても2歳までの抗菌薬の使用がその後の肥満に関係するという報告や,1型糖尿病の発症に腸内細菌が関与しているとの報告,ある種の微生物の経口投与が腸管内での短鎖脂肪酸の産生を増加し,GLP-1の分泌増加を介してインスリン分泌を改善するなど,さまざまな報告がされています.高血圧や脂肪肝,動脈硬化との関連も指摘されています.2013年にThe New England Journal of Medicineに便移植(fecal microbiota transplantation : FMT)に関する研究論文が発表されて以降,治療としての便移植やプロバイオティクス〔人体によい影響を与える微生物(いわゆる善玉菌)〕の利用も大きな関心を集めています.今後,腸内細菌とさまざまな疾患との関連が明らかにされることで,疾患の病態解析が進み,診断や治療そして予防へとつながっていくことが期待されています.

糖尿病に効くコーチング 明日から始めてみませんか?・6

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 5月号に引き続き,プロコーチの伊藤三恵と高橋美佐が担当します.

 医療者からよく聞くお話に,「患者さんが『すみません』と口グセのように言う」というのがあります.患者としては糖尿病療養がうまくいっていなくて,つい口をついて出るのだろう,と想像はつきます.しかし,医療者としては「『すみません』はもういいから,もうちょっとがんばってよ」という気持ちになるかもしれません.

糖尿病患者の口腔健康管理 はじめの一歩・6

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むし歯は過去の病気?

 たしかに以前には「むし歯の洪水」といわれた時期もありましたが,今日のように,歯を磨く習慣が一定程度広がり,ひと頃に比べてう蝕(むし歯)はだいぶ少なくなりました.特に子どものむし歯はかなり少なくなり,「学校歯科検診でも見かけなくなった」という学校歯科医の言葉を,最近ではよく聞きます.

 ところが,現代では逆に,大人になってからのむし歯についても気をつける必要があります.高等学校を卒業すると学校での歯科検診がなくなり,成人においてはこれ以降,口腔内を健診する機会もなくなります.歯や口の健康管理は必然的に個人に任されることになり,いわば放任されている状況です.それでも大手では,定期健康診断において歯科健診を含めている企業もありますがその数はまだ少なく,多くの企業,事業所などにおいては,歯科健診は行われていないのが現状です.

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 2型糖尿病の治療方法として,外科的治療が進歩し,「糖尿病外科」といった分野も登場しています.しかし,内科的治療法と外科的治療法をランダムに長期間比較した臨床試験は限られていました.

 この研究では,150人のBMI 27〜43kg/m2の2型糖尿病患者をランダムに内科強化治療のみと,内科強化治療にスリーブ胃切除かルーY胃バイパス手術を行う群に分けて,5年間フォローしています(図1〜5).HbA1c 6.0%未満,糖尿病薬使用有無を一次エンドポイントとしています.ランダム化した150人のうち1人は5年間のフォローの間に(内科治療群で心筋梗塞のため4年目に)死亡し,残り149人のうち134人(90%)が5年間のフォローを終了しました(9人は,ランダム群分け後すぐ,ないし6カ月以内に試験を辞退し,6人はフォローアップ中に消息不明).ベースラインでは134人の平均年齢は49±8歳で,66%は女性で,平均HbA1cは9.2±1.5%,平均BMIは37±3.5でした.ベースラインで44%がインスリンを使用していました.5年後,内科強化治療群では,一次エンドポイントを満たしたのは38例中2例(5%)であり,胃バイパス術を受けた者では49人中14人(29%)が一次エンドポイントを達成し(補正P=0.08),スリーブ胃切除を受けた者では47人中11人(23%)が一次エンドポイントを達成していました(補正P=0.07).

糖尿病診療トレーニング問題集

内科医レベル 湯野 暁子
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症例 82歳,男性.

既往歴 81歳,脳梗塞.

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糖尿病診療マスター
15巻6号 (2017年6月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

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