Perspective◆展望
腸内細菌—糖尿病・肥満にまつわる10 topics
中塔 辰明
1
1岡山済生会総合病院 糖尿病センター
pp.455
発行日 2017年6月15日
Published Date 2017/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415200684
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ヒトの腸管には100兆個以上の細菌が棲みついており,腸内細菌叢(intestinal flora/microbiota)を形成しています.ヒトの細胞数が60兆個(2013年のAnnals of Human Biologyによると37.2兆個)といわれていますので,腸管内には人体の総細胞数よりも多い数の細菌が存在し,共生(symbiosis)していることになります.
この腸内細菌叢の状態,すなわち腸内環境がヒトの健康状態や疾患の発症に大きく関わっていることが,近年の研究で明らかになってきました.糖尿病や肥満との関連性についても2歳までの抗菌薬の使用がその後の肥満に関係するという報告や,1型糖尿病の発症に腸内細菌が関与しているとの報告,ある種の微生物の経口投与が腸管内での短鎖脂肪酸の産生を増加し,GLP-1の分泌増加を介してインスリン分泌を改善するなど,さまざまな報告がされています.高血圧や脂肪肝,動脈硬化との関連も指摘されています.2013年にThe New England Journal of Medicineに便移植(fecal microbiota transplantation : FMT)に関する研究論文が発表されて以降,治療としての便移植やプロバイオティクス〔人体によい影響を与える微生物(いわゆる善玉菌)〕の利用も大きな関心を集めています.今後,腸内細菌とさまざまな疾患との関連が明らかにされることで,疾患の病態解析が進み,診断や治療そして予防へとつながっていくことが期待されています.
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