海外文献紹介
SGLT2阻害薬投与時でのケトンの腎ハンドリング—ケトン排泄はどうなっているのか
細井 雅之
1
,
小原 正也
1
,
薬師寺 洋介
1
1大阪市立総合医療センター糖尿病内分泌センター 糖尿病内科
pp.902-904
発行日 2017年10月15日
Published Date 2017/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415200783
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Sodium-glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬は近位尿細管でブドウ糖再吸収を抑制し血糖値を低下させます.同時に全身の代謝状態が,ブドウ糖の出納やホルモンの反応,エネルギー消費なども含めて順応し変化すると考えられます.著者らは2型糖尿病患者でエンパグリフロジンが尿糖を増加させた時の生理的反応を報告しています.二重トレーサーテクニックや間接カロリーメトリーを使ってエンパグリフロジン急性,慢性投与により,内因性糖産生が増加し,組織での糖利用が減少し,脂質利用が増加しました.そしてSGLT2阻害薬による脂質利用や酸化的利用は血漿ケトン〔βヒドロキシブチレート(βHB)〕レベルの増加と血漿乳酸濃度の低下と相関していました.SGLT2阻害薬投与時のケトン血漿での腎クリアランスは不明でした.昔の研究では,ケトンの腎ハンドリングには飽和と不飽和コンポーネントの存在が示されていました.濾過された少量のケトンは完全に吸収され,さらに血中ケトンレベルが上昇するとケトン尿が生じます.S2セグメントの尿細管細胞管腔面では,多重選択制有機アニオン輸送体がケトンを血漿から細胞質へ移動させます.一方,多重薬剤抵抗性のアニオン輸送体はケトンの細胞質から近位尿細管管腔への移動に影響を及ぼします.これらの過程の詳細なメカニズムはわかっていません.そこで本研究では,エンパグリフロジン投与前後の空腹時と食後のブドウ糖,βヒドロキシ酪酸,乳酸,ナトリウムの尿中排泄を検討しました.
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