糖尿病診療マスター 15巻11号 (2017年11月)

特集 診察のGold Standard—糖尿病診療の基本に立ち返る

Ⅰ対談

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 「糖尿病診療の基本とは?」ということで,本日はPart 1として「問診(医療面接)」について福田先生とお話しさせていただきます(Part2は本号957ページ).この5〜6年,薬物療法がかなり進歩しましたが,やはり診察の基本というものは存在すると思います.特に福田先生は,その道に造詣の深い先生ですので,本日お越しいただきました.(大久保雅通)

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 対談企画のPart 1(本号914ページ)では,福田正博先生と「問診」(医療面接)についてお話しをさせていただきました.本日はPart 2として松岡孝先生にお越しいただき,「身体所見」に焦点を当ててお話を伺いたいと思います.(大久保雅通)

Ⅱ問診のGold Standard

自覚症状 遅野井 健
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POINT

・自発的な訴えに加えて軽微な症状の探査や非典型的な症状の鑑別が必要.

・自覚症状には背景因子の同定と的確な対応が必要.

既往歴 武田 昌也 , 中塔 辰明
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POINT

・過去の罹患疾患,体重歴,飲酒歴,薬剤歴,分娩歴などを丁寧に聴取する.

・投与薬剤決定のためにも既往歴聴取は重要である.

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POINT

・糖尿病の家族歴陽性者は,生活習慣の欧米化が進む日本人においてもなお重要な糖尿病発症の危険因子である.

・特殊な糖尿病(ミトコンドリア糖尿病やMODYなど)は家族歴の詳細な聴取が発見の端緒となり,患者の治療方針にも影響しうる.

現病歴 中神 朋子 , 吉村 蘭 , 松尾 純治
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POINT

・現病歴は患者のライフスタイルなども含めて把握する.

・紹介状は人と人とのやり取りであることを肝に銘じ,簡潔にポイントを絞って,相手がわかりやすい文書になるよう心がける.

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POINT

・毎回,体重を測定しHbA1cの推移と比較します.

・隠れ肥満を見逃さないため,BMI正常でも腹囲を測定します.

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POINT

・身体診察(physical examination)とは,眼,耳,手を用いて「全身を診察する」ことである.

・全身を観察し,問診とともに,視診,触診,聴診を行い,血圧も測定する.

・糖尿病診療では合併症であるmicroangiopathyとmacroangiopathyが重要である.

・前者には,眼,腎,神経が,後者には脳,心臓,末梢動脈での「動脈硬化性疾患」がある.

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POINT

・重症度に関する情報はベッドサイド診察から得られる.

・鑑別診断には病歴情報が不可欠である.

・診断力向上には日頃から健康な神経機能をよく診ることが大切.

足の診察方法 紀田 康雄
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POINT

・足の診察は問診,血液検査とともに糖尿病診療の(特に初診時には)基本である.

・足を診ることで生活習慣や隠れた病変など得られる情報は多く,適切な指導・介入で壊疽や下腿切断の予防につながる.

Perspective◆展望

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 現代の糖尿病診療において,血糖値やHbA1c,検尿などの検査データを欠かすことはできない.しかし注意深い診察によって得た情報を活用することで,これらのデータはさらに有用性を増すことになる.たとえば体重について述べると,初診時の問診で判明した体重の変動は,治療方針の決定に大きく寄与するであろう.継続治療中に身体所見として把握する体重の変化は,薬物を選択あるいは変更する際に,重要な示唆を与えるであろう.これらはあくまで一例であり,診療の基本としての診察は,いかに医療機器が進歩しても,その価値を減じることはない.

 記念すべき本誌の第1巻第1号(2003年)では「診察の達人」と題し,また第2巻第3号(2004年)では「糖尿病外来 初診の心得十か条」と題して,診察のコツについて解説が行われている.優れた治療薬がこの数年の間にいくつか出現したが,医療者と患者の間に良好なコミュニケーションがあり,信頼関係が存在してはじめて適切な治療効果を期待することができる.決して診察を軽視していたわけではないが,改めて的確な情報収集のため何をすべきか,今回の特集を企画してみた.

糖尿病患者の口腔健康管理 はじめの一歩・11

噛むことの重要性 髙野 直久
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定期健診

 多くの歯科医院に受診してきた方に聞きますと,「かかりつけ歯科医」は持っていると話されるのですが,実際はどうでしょうか.受診する方の意識では,「かかりつけ歯科医」を持っていると思われていますが,ほとんどは「かかりつけ歯科医」ではなく「いきつけ歯科医」に行かれているようであります.定期的に歯科受診するのではなく,何か気になると同じ歯科医院を受診する「いきつけ歯科医」です.慢性疾患を主な診療とされている内科において,継続的でかかりつけ医として確立された歴史がある医科医療機関に受診する方のなかでは少ないのかもしれませんが,こと保険診療における歯科医療では,「どこでも同じ」あるいは「通い易い」などで選ばれているようであります.

 以前通われていた方が,数年ぶりにお見えになりました.図1はその口腔内写真です.口腔清掃状態は特段に悪いとはいえない,一般的な状態と思われますが,以前に比べて歯茎の乳頭部がやや丸く膨らみ,所々に歯石や歯肉出血が見受けられます.糖尿病治療も中断されているようでしたので,内科受診を再開されるようにお勧めし,さらに食事における状況について伺ってみますと,あまり噛まずに済む食べ物を日頃より選んでいるようでした.噛む回数も数回で飲み込むだけでなく,食事の時間も短く,時には朝食を欠食することもあるような食に関する生活習慣の状況でした.医療面接の結果,食後高血糖のリスクの増大や朝食の欠食によることで,かえって昼食時での高血糖を招くこともとても気になります.主治医である内科医とともに協調して,歯科医として糖尿病治療に向けた歯科治療を含めた口腔健康管理を進めることで,糖尿病治療への歯科からの支援を再開することにしました.

糖尿病診療トレーニング問題集

CDEレベル 森 芙美
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症例 63歳,男性(タクシー運転手).

既往歴 腸管穿孔性腹膜炎で開腹手術(24歳),アルコール性肝炎で入院(54歳).

専門医レベル 村田 誠
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症例 62歳,男性.

主訴 労作時胸部圧迫感.

糖尿病に効くコーチング 明日から始めてみませんか?・11

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さまざまな場面で応用が効くコーチング

 今回この連載では,糖尿病療養指導の場面で,患者さんのやる気と行動を引き出す手法として,コーチングをご紹介していますが,コーチングは,さまざまな場面で使うことができる,非常に使い勝手が良いコミュニケーションスキルです.

 例えば,患者の療養支援以外の場面では,患者・患者家族と医療者の間で,ズレがないコミュニケーションをとりたい場面だけでなく,ズレが生じてしまった後の対応の場面でも使えます.具体的には,初診の患者さんからヒアリングをする場面,初めて入院をする患者さんへの説明の場面,医療者に不信感を抱いた患者さんと対応する場面,インフォームドコンセントの場面などです.

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 現在,米国では65歳以上の高齢人口の3分の1以上が肥満であり,肥満人口の増加は米国のみならずわが国でも加速しています.高齢者の肥満はフレイルの原因となりますが,減量は筋量や骨量減少を悪化させ,サルコペニアや骨粗鬆症のリスクを上昇させるといわれています.そこで,本論文では,肥満を合併した高齢者の管理において運動療法はどうあるべきか検討しています.

 研究対象者は米国のニューメキシコ州在住の65歳以上の160名で,BMI 30kg/m2以上,運動習慣がなく,本研究登録前6カ月間に体重変化がなく,薬物療法も変更されていない者です.介入前に160名全員に6カ月間の観察を行った後,無作為に4群に割り付け,4群すべてに食事療法を指導しました.その後,食事療法単独(対照群),有酸素運動単独(有酸素運動群),レジスタンス運動単独(レジスタンス運動群),有酸素運動+レジスタンス運動を組み合わせたプログラム(組み合わせ運動群),でそれぞれ介入し4カ月目に評価しました.

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 「のどが渇くとイライラするので,ものすごく飲みます.どうしたらいいんですか?」

 入院初日にこう語ったAさんに,病棟のスタッフも「どうしたらいいんだろう……」と途方に暮れた.そんなAさんと私たちとの関わりを振り返る.

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糖尿病診療マスター
15巻11号 (2017年11月)
電子版ISSN:1347-8389 印刷版ISSN:1347-8176 医学書院

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