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ドライアイには乾燥感や異物感のほか眼精疲労や視力低下などといった自覚症状があり,QOLへの影響が大きい眼疾患の一つである.ドライアイの発症にはパソコンの使用やコンタクトレンズの装用などの環境要因とともに加齢が危険因子として知られている.わが国の疫学研究では,60歳以上を対象とした有病率は73%と高い有病率が報告されている1).ドライアイは,涙腺,角膜,結膜,マイボーム腺,眼瞼ならびにこれらと相互に関連する神経を含む統合的システムである涙液機能単位(lacrimal functional unit)の障害として認識されている2)(図1).これらの組織に加齢性変化が起こると,涙液の量や質の低下に加えて涙液メニスカスの形成不全が生じるためドライアイを発症しやすくなる.近年,ドライアイは,フルオレセイン染色下での角膜上の涙液層破壊パターンに基づき,角膜上皮の親水性が低下する「水濡れ性低下」,涙腺からの涙液分泌量が低下する「涙液減少型」,涙液の蒸発が増加している「蒸発亢進型」の3つのサブタイプに分けて病態の成因を評価する層別診断(tear film oriented diagnosis:TFOD)が提唱され広く知られている.TFODにより眼表面の不足成分を油層,液層,表層上皮に分けて知ることができ,涙液の安定性低下の原因となる眼表面の不足成分を補う眼表面の層別治療(tear film oriented therapy:TFOT)を行う3)(図2).近年のドライアイ診療は,TFODおよびTFOTのアプローチにより多くの症例で治療効果が期待できるようになった.高齢者のドライアイに対する診療では,マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction:MGD)や結膜弛緩症などがドライアイ発症に強く影響する場合があるためこれらに対する介入も検討する必要がある.
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