日本内視鏡外科学会雑誌 16巻5号 (2011年10月)

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◆要旨:目的:再発鼠径ヘルニアに対して経腹腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(transabdominal preperitoneal repair;以下,TAPP)を施行した症例につき検討する.方法:2007年~2010年に成人鼠径ヘルニアに対して手術を施行した症例275例318病変を対象とし,初発症例,再発症例に対するopen mesh repair(以下,OMR)およびTAPP施行症例につき比較検討した.結果:TAPPを施行した症例は166例201病変で,このうち再発症例は14例15病変である.一方,OMRを施行した症例は109例117病変で,このうち再発症例は5例であった.TAPP群における初発症例と再発症例の比較では,再発症例で手術時間が有意に長かったが,それ以外の項目については有意差を認めなかった.再発症例におけるTAPP群とOMR群の比較ではいずれの項目も有意差を認めなかった.結語:再発鼠径ヘルニアに対するTAPPは有用な術式の1つであると考えられる.

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◆要旨:患者は55歳の男性.検診で便潜血陽性を指摘された.大腸内視鏡検査で上行結腸にIsp型のポリープを認め,それと連なるようにして虫垂が盲腸内に引き込まれていた.腹部CT検査では上行結腸内に造影される腫瘤像を認めた.ポリープは生検により腺腫と診断された.虫垂腺腫による完全型の虫垂重積症と診断し,腹腔鏡補助下にD2郭清を伴う回盲部切除術を施行した.術後経過は良好で第8病日に退院した.虫垂腺腫による虫垂重積症の報告は稀であり,その腹腔鏡下での切除例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:患者は78歳の女性.体重減少を主訴に近医を受診し,胃癌の診断で当科を紹介され受診した.胃体上部後壁に0-IIa+IIc型病変を認め,術前スクリーニングとして施行した下部消化管内視鏡検査でBauhin弁近傍の上行結腸にIs型病変も指摘された.画像診断で遠隔転移は認められなかった.胃癌・上行結腸癌の重複癌と診断し,一期的に腹腔鏡下で胃全摘術と回盲部切除術を施行した.胃と大腸をそれぞれ専門手術チームが担当することにより,安全にストレスなく手術を施行でき,手術時間は5時間59分,出血量は20mlであった.また術後合併症も認めなかった.

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◆要旨:患者は71歳,女性.心窩部違和感を自覚し当院を受診した.CTにて胆囊結石症と診断し,単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術を施行した.下腹部正中の卵管結紮術後の手術瘢痕に沿って2.5cmの皮切を置き,SILSTMポートを挿入した.胆囊は肝円索の左側に位置し,肝円索は門脈右前区域枝に付着する右側肝円索であった.胆囊が通常より左側に位置していたため,腹腔鏡や鉗子同士の干渉が多かったが,SILSTMポートを回転させてトロッカーの位置を変えることで操作性は改善した.胆管の走行異常はなく,通常通り胆囊摘出術を行い,術中・術後合併症もなく経過は良好であった.右側肝円索症例に対しても,単孔式腹腔鏡下胆囊摘出術は有用であると考えられた.

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◆要旨:患者は75歳,女性.2010年9月下旬より突然右季肋部痛が出現し,当院を受診し,精査加療目的で緊急入院となった.入院後腹部超音波検査,腹部CT検査で,肝右葉を中心に20cm大の単純性肝囊胞を指摘された.経皮的ドレナージを施行したが,胆汁成分を含有した多量の囊胞液が吸引され,内視鏡下逆行性胆管造影では,肝内胆管と囊胞の交通が確認された.本症例に対して単孔式腹腔鏡下肝囊胞天蓋切除とともに,術中に囊胞腔内胆汁漏出部が同定されたため,その部を縫合・閉鎖した.術後,経過良好にて退院となった.今回,胆管と交通を有した単純性肝囊胞に対し単孔式腹腔鏡下肝囊胞天蓋切除術にて治癒し得た1例を経験したので報告する.

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◆要旨:患者は71歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に受診した.腹部CT検査で腸重積,腸閉塞と診断,イレウス管留置,腸管減圧後にダブルバルーン小腸内視鏡検査を行った.トライツ靭帯から40cmの空腸に隆起性腫瘍を認め,マーキングを行った.生検結果は高分化腺癌であった.空腸癌の診断で単孔式腹腔鏡補助下空腸部分切除術を行った.切除標本は径70×30mm大のIp型腫瘍であり,管状絨毛腺腫を伴う高~中分化腺癌だった.癌は粘膜内に留まり,リンパ節転移を認めなかった.術後6か月で転移,再発なく経過している.ダブルバルーン小腸内視鏡検査は病変部位の同定と病理診断に有用であり,単孔式腹腔鏡補助下手術は整容性に優れていると思われた.

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◆要旨:患者は34歳,女性で左下腹部の腫瘤を主訴に当院に紹介となった.左下腹部に超鶏卵大の弾性硬の腫瘤を触知し,腹部CTおよびMRIでは境界明瞭な径5cmの多房性の腫瘍を認めた.小腸の血管は腫瘍の腹側を,下腸間膜動静脈は背側を走行し,また腫瘍の位置の変化もみられ腸間膜由来の腫瘍と考えた.囊胞変性を伴うGISTや神経原性腫瘍などを疑い,腹腔鏡下に手術を施行した.腫瘍は左右の総腸骨動脈分岐部上に存在する後腹膜腫瘍で自律神経との移行部を認めた.病理診断は神経鞘腫で悪性所見はみられなかった.術前画像所見で腸間膜腫瘍と考えられた後腹膜原発神経鞘腫に対し腹腔鏡下に切除したので若干の文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:患者は44歳,女性.上腹部痛を主訴に近医を受診し,急性腹症の診断で当院に紹介となった.入院時,腹膜刺激症状はなかったが,臍下部の激しい疼痛を認めた.腹部造影CTで限局性小腸虚血の所見が認められ,絞扼性イレウスの診断で腹腔鏡下に腹腔内の観察を行い,左下腹部に虚血・壊死に陥った小腸のループが確認された.臍部のカメラポート孔を5cmの小開腹に拡大し,小腸を創外へ出し,ループを含めた虚血小腸を切除した.術後経過は良好であった.Meckel憩室による結節形成を伴った絞扼性イレウスは本邦で9例目と稀であるが,このような症例に対しても腹腔鏡下手術は鑑別診断および治療に有用であった.

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◆要旨:患者は66歳,女性.腹痛を自覚し受診した.来院時,臍周辺に腹膜刺激症状を認め,造影CTで腹腔内に鋭利な石灰化陰影と膿瘍形成を認めた.確定診断には至らなかったが,急性腹症の診断で腹腔鏡下手術を施行した.開腹所見では,腹腔内に大網腫瘤を認め,内部に魚骨と膿瘍形成を認めたが,消化管に穿孔部を認めなかった.大網膿瘍と診断し,これを切除した.明らかな消化管穿孔を認めず,魚骨の不顕性穿孔による大網膿瘍と診断し,病理組織学的検査で放線菌症と診断された.大網放線菌症は稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告する.

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◆要旨:患者は35歳,女性.健康診断にて便潜血陽性を指摘され,精査によりS状結腸癌と診断され当院に紹介となった.画像所見では,下部消化管内視鏡にてS状結腸に2型の腫瘍性病変を認め,腹部CTでは肝S3に周囲が淡く造影される40mm大の腫瘍性病変を認めた.S状結腸癌,肝転移の診断にて腹腔鏡下S状結腸切除術および腹腔鏡下肝S3部分切除術を施行した.

 手術は4ポートのみで完遂することができた.結腸・肝同時腹腔鏡下手術として4ポートで手術を完遂した報告例はなく,腫瘍の局在に応じた手技の工夫と定型化を行うことで安全に実施でき,体壁破壊を最小にできる低侵襲な手術法と考えられた.

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◆要旨:患者は62歳,男性.胃角部の早期胃癌に対して腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を行った.術後3日目,腹腔内出血のために緊急開腹術を施行した.残胃肛門側は全周性に壊死しており,膵表面の小動脈から出血を認めたため止血とともに残胃全摘術を施行した.病理組織学的に粘膜の脱落,潰瘍形成,腺管萎縮などを認め,虚血性壊死と判断した.脾動脈,短胃動脈の血流は維持されていたことから,胃壁内での血流網が乏しかったため残胃の肛門側に虚血による壊死が生じたと考えられた.胃壁内の血流網には個体差があるものと認識し,胃切除時には残胃の血流を考慮した手技を心掛ける必要がある.

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◆要旨:患者は71歳,男性.早期胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除術(以下,LDG),結腸前Roux-en-Y(以下,RY)再建を行った.術後1年3か月で腹痛が出現し救急外来を受診した.CTにて上腸間膜動静脈の渦巻様構造を認め,腸間膜捻転症あるいは内ヘルニアと診断し,緊急手術を施行した.ほぼ全小腸がPetersen裂孔に右側から左側に嵌頓しており,小腸を整復し,裂孔を縫縮した.4か月後に再度内ヘルニアを起こし手術となり,裂孔縫縮部が裂けていたため小腸整復,裂孔縫縮を行った.それ以後,内ヘルニアの再発はなく外来通院中である.胃癌に対するLDG,RY再建後に発生した内ヘルニアの報告例は少ないが重篤化しうる重要な合併症として念頭に置く必要がある.確実な縫合閉鎖が内ヘルニアの発生を予防するために重要と考えられた.

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◆要旨:胆囊摘出既往例における総胆管結石症の治療は,内視鏡的切石術が第一選択とされるが,不可能な場合では外科的手術が行われる.当科では外科的手術として腹腔鏡下総胆管切石術を行い,切石後のドレナージとして総胆管内へ内視鏡用胆管プラスチックステントチューブを留置し,減圧したうえで総胆管の一期的縫合を行っている.本ステントチューブ留置法は胆道の減圧が可能なうえ,術後内視鏡下に抜去が容易であり,有用な手技である.

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◆要旨:筆者らは早期胃癌に対する腹腔鏡補助下幽門側胃切除時に小切開創からの手縫いBillroth I法再建を行っている.小切開は十二指腸球部の高さで約5cmの正中切開を行う.吻合はAlbert-Lembert法にて行うが,後壁Lembert縫合糸を切離せずに残しておく.この縫合糸を牽引して後壁全層を挙上すると良好な視野が得られ,後壁Albert縫合を安全に行うことができる.これまでに早期胃癌50症例に施行し,縫合不全を認めなかった.その手術手技や工夫などについて紹介する.

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◆要旨:食道切離が高位(縦隔内)となる腹腔鏡下噴門側胃切除症例に対して,現在,当科では細径胃管を用いた再建を行っている.細径胃管を用いることで,高位での食道胃吻合が可能となり,空腸を用いる再建に比べて手術時間は短縮される.一方で食道胃吻合は術後の逆流性食道炎が問題となるが,食道胃吻合にはナイフレス自動縫合器を用いた再建法を導入し,逆流防止の工夫を行っている.ナイフレス自動縫合器で細径胃管を食道背側へ固定することによって,吻合口より頭側の胃管が穹窿部様となる.また吻合口の大きさは共通孔から食道―胃管のステイプル6列の中央を1.5cm程度切離することによって調節している.

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欧文目次

EVENT NEWS

「日本内視鏡外科学会雑誌」投稿規定

著作権譲渡同意書ならびに誓約書

編集後記 北野 正剛
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 本誌の発行などを通して安全な内視鏡外科医療を国民に提供することが本会の大きな責務の一つです.2004年に発足した技術認定制度の成功が折に触れ国内外から高い評価を得ているのも,未編集ビデオを匿名化して公平に評価する世界に誇れる制度を確立できたからです.今年度の技術認定試験の合格率は,十分な経験のもとベストビデオを提出していただいたはずであるにも関わらず,依然30%と最難関の試験です.それは地域と専門領域における指導者としての知識と安全な技術が要求されるからです.合否の判定は,難手術に挑戦するスーパードクターを求めているわけではなく,いかに安全で理にかなった標準的な手技を行っているかを審査員に伝えるかにかかっています.この認定証取得者こそ真の意味での専門医であると考えています.もともと専門医の概念は一般的に「5年間以上の専門技術研修を受け,資格審査ならびに専門医試験に合格して,学会等によって認定された医師」とされています.

 わが国における専門医整備に関わる活動としては,1981年の“学会認定医制度協議会”に始まります.その後,紆余曲折があり2001年,“専門医認定制協議会”と名称が変更された後,突然2002年に厚生労働大臣告示「専門医広告に関する基準手続き等」いわゆる外形基準9項目が提示され,これを満たせば専門医として広告できることとなった経緯があります.本会は2010年をもって一般社団法人となり研修機会の整備と手続きを踏めば,いずれも専門医を認定できることになりました.しかし,評議員会総会で報告の通り,世界に誇れる技術認定をいろいろな学会が認定している多くの専門医と同列のものではなく,“より特色のある技術認定に基づいた新たな認定と専門医”の公的認定が可能かどうか,担当部局と現在やり取りしている最中です.本格的な認定には法律の改正など,大きな壁があるのも事実ですが,不可能を可能にするつもりで何とか乗り越え,早急な技術認定の公的認知と診療報酬への反映を求めていきたいと考えています.会員諸氏のご支援とご協力を切に願っています.

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第24回日本内視鏡外科学会総会を下記の通り開催いたします.会員の皆様には多数ご参加下さいますようお願い申し上げます.

詳細は総会ホームページ(http://www.congre.co.jp/jses2011/)に掲載いたしますのでご確認下さい.

第24回日本内視鏡外科学会総会 会長 星合 昊

会 期:2011年(平成23年)12月7日(水)~9日(金)

会 場:大阪国際会議場

    〒530-0005 大阪市北区中之島5丁目3-51

    TEL 06-4803-5555

    リーガロイヤルホテル大阪

    〒530-0005 大阪市北区中之島5丁目3-68

    TEL 06-6448-1121

基本情報

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日本内視鏡外科学会雑誌
16巻5号 (2011年10月)
電子版ISSN:2186-6643 印刷版ISSN:1344-6703 日本内視鏡外科学会

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