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Ⅰ.はじめに
20歳から39歳までの死因順位で,がんは自殺や不慮の事故に次ぎ2位もしくは3位を占め1),若い世代であってもがんは重大な病である.19歳から45歳までの初期,成熟成人期のがん患者は,がんによって生命が脅かされ,生きるために突然,誰かに依存しなければならず,家族を残して去ることへの無念や,なぜこの自分が生き残れないのかという怒りと絶望が交錯する2).若年性がん患者の終末期に経験する症状は,倦怠感,運動機能低下,疼痛があり,3つ以上の症状を50%以上が経験し,死への恐怖,孤独感,退行,うつ病などの心理社会的な問題は避けられない3).このように,人生の意味や目的の喪失に苦悩し,さまざまな症状を呈する終末期の若年性のがん患者が自分らしく生きることを支えるためには,気遣う,意思を尊重する,存在の価値を認める,自立を助ける,そばにいるなどの終末期がん患者が捉えるケアリングが必要だと考える4).
先行研究では,若年がんサバイバーをケアする看護師は,自分にできる力を尽くし,特別視せず関わり,患者にとってちょうど良い距離を探り士気を高めて患者に向き合う構えがあることや5),希望の存在を捉えてその実現可能性を見極め,希望を支えることが明らかになっている6).しかし,若年のがん患者をケアする看護師の認識として患者が亡くなること自体に辛さを感じ7),若年患者の終末期ケアの経験が少なく,自信がもてないことが明らかになっている8).これらの先行研究では,若年性がん患者に対する看護師の認識や希望を支える看護ケアを明らかにしたものにとどまる.
看護師のケアリングは,がん患者がたどる軌跡の中で,相互的信頼,エンパワーメントや癒しとなり,欠くことはできない9).また,知ること,共にいること,誰かのために行うこと,可能にする力をもたせること,信念を維持することという5つのカテゴリーもしくはプロセスからなり,互いに相いれないものではないといわれ10),相手が成長し自己実現することを助けることとしてのひとつの過程であり,専心がケア(caring)にとって本質的とされる11).しかし,終末期がん患者が捉えるケアリングは明らかにされているが4),若年性の終末期がん患者に対する看護師のケアリングの様相は明らかにされていない.
そこで,本研究は,終末期の若年性がん患者に対する緩和ケア病棟看護師のケアリングの様相を明らかにすることを目的とした.本研究によって,人生の意味や目的の喪失に苦悩し,さまざまな症状を呈する終末期の若年性のがん患者が自分らしく生きることを支える看護実践に有用な示唆を得ることができる.
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