耳鼻咽喉科・頭頸部外科 91巻11号 (2019年10月)

特集 進化する経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)—エキスパートに学ぶスタンダードな手術手技〔特別付録web動画〕

TEESの歩みと将来展望 欠畑 誠治
  • 文献概要を表示

POINT

●transcanal endoscopic ear surgery(TEES)は,外耳道を中耳および内耳への最も自然なアクセスルートとして利用する,人間工学的に優れたheads-up surgeryである。

●圧倒的な視認性に加え,傷痕がなく(少なく),術後の痛みが少ない低侵襲性から,現在TEESの適応範囲は拡大しており,顕微鏡下耳科手術と並ぶ耳科手術のスタンダードとしての地位を確立しつつある。

●本邦では約2/3の施設や耳科医がすでにTEESを導入している(日本耳科学会企画委員会調査,2018年)。

  • 文献概要を表示

POINT

●経外耳道的内視鏡下耳科手術(transcanal endoscopic ear surgery:TEES)が全世界で急速に広まっている。

●耳管開口部から乳突洞口に至る換気経路と耳小骨の関係を頭に入れて手術(TEES)にあたる。

●TEESの習得には,中耳解剖を理解することはもちろん,片手操作,単眼視というTEESの特色を理解したうえで,step-by-stepに手術を行っていくことが重要である。

TEESのための準備と関連機器 伊藤 吏
  • 文献概要を表示

POINT

●経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)の適応疾患は,術者の耳科手術経験数,TEES用手術機器の有無,真珠腫の術前評価のために利用できるモダリティなどにより,術者ごと,施設ごとに検討する必要がある。

●TEESでは0度および30度の細径硬性内視鏡にfull HD以上の高画質ビデオシステムを組み合わせることで,死角の少ない明瞭な術野を得ることができる。

●先が彎曲した吸引管や剝離子,鉗子など,TEES専用の鋼製手術器具を用いることで,後鼓室や前鼓室などの深部操作が可能となる。

●上鼓室天蓋や乳突洞まで進展した真珠腫に対する手術として,超音波骨削開器やカーブバーを用いたpowered TEESがある。

《TEESのスタンダードな手術手技》

  • 文献概要を表示

POINT

●内視鏡下鼓膜チューブ留置術は,小児例では外耳道径が比較的狭いが,外耳道長が短く,かつ彎曲が少ないため施行しやすい。

●外耳道の彎曲が強い症例では内視鏡下鼓膜形成術のよい適応であると考えられる。

●鼓膜チューブ留置術,鼓膜形成術のいずれも,これから内視鏡下耳科手術を行っていく際の第一歩の手術と思われる。

●当院では鼓膜弛緩症(atelectatic ear)や癒着性中耳炎にはsubannular tube挿入術を施行している。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

  • 文献概要を表示

POINT

●経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)の利点を享受するだけでなく,欠点をよく理解してその克服をすることが重要である。

●慢性中耳炎に対してTEESが適応となるのは,鼓膜,鼓室(上・中・前・後鼓室)に病変が存在する場合である。

●片手操作となるTEESでは,鼓膜形成においてunderlay法を選択するべきである。

●接着法を選択する場合,moist wound healing理論に基づいて術式改良をした接着法の成績は良好である。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

  • 文献概要を表示

POINT

●癒着性中耳炎は内陥した鼓膜が鼓室粘膜に線維性に癒着しており,内視鏡を近接させて繊細に剝離操作をすることで,粘膜を温存することが肝要である。

●経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)は鼓室洞などの処理において有利であるが,鼓室洞が深い場合には限界がある。

●術後含気化させるために,軟骨による鼓膜再建や補強,鼓膜換気チューブ留置を考慮するが,片手操作での再建に習熟することが求められる。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

  • 文献概要を表示

POINT

●経外耳道的内視鏡下耳科手術(transcanal endoscopic ear surgery:TEES)による真珠腫の手術では,広角の視野,高い拡大率を活かした経外耳道アプローチによる繊細で死角のない手術が行える。

●これらの特性を十分に活用するために,確実に明視下で剝離操作を行うこと,残すべき上皮を確実に温存すること,といった従来の顕微鏡手術と同様の手技を習得することが望ましい。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

  • 文献概要を表示

POINT

●中耳奇形に対する鼓室形成術はTEESの最もよい適応の1つである。

●拡大した明るい視野で中耳を観察できることが最大の利点である。

●必要な際に両手操作に移行できるよう,顕微鏡も準備して手術に臨む。

錐体尖病変に対する手術 堤 剛
  • 文献概要を表示

POINT

●錐体尖病変の開放に際し,TEESによる手技は大きなブレークスルーをもたらす。

●迷路(蝸牛)下のアプローチがTEESのよい適応となる。

●完全摘出を目的とする場合,現時点ではTEESの適用は難しい。

●術中ナビゲーションは必ずしも必要ではない。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

  • 文献概要を表示

POINT

●アブミ骨手術は内視鏡下耳科手術のよい適応である。

●内視鏡下アブミ骨手術と顕微鏡下手術とでは手術成績,手術時間に有意な差はない。

●アブミ骨へのアクセスが早く,少ない削開範囲で良好な視野が確保できる。

●片手操作になることや立体視ができないことなどの短所もあるため,十分な経験のある術者が行うべきである。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

外リンパ瘻閉鎖術 藤岡 正人
  • 文献概要を表示

POINT

●低侵襲であり,かつ明るく拡大した視野でリンパ液の漏出の有無や部位を判断できることから,外リンパ瘻に対する試験的鼓室開放術はTEESのよい適応である。

●いかにして最小限の出血で,両内耳窓(正円窓,卵円窓)を十分に明視下に置いた視野を作るかが手術のポイントとなる。

●最も注意すべき副損傷は鼓索神経損傷であり,外耳道後壁〜鼓膜輪のレイヤー解剖の理解と,術前CT画像の読影による神経走行の確認が肝要である。

●慎重に操作をする限り,本手術による骨導閾値の上昇や気骨導差増大などは稀であり,内耳窓経由での薬剤投与法への応用が期待される。

TEESの合併症とその対策 西池 季隆
  • 文献概要を表示

POINT

●スコープが正常組織に当たって損傷を起こしたり,熱損傷を起こしたりする危険性がある。

●術中止血には酸化セルロースと脳外科用X線造影材入りスポンジが有用である。バイポーラも効果的である。

●内耳瘻孔から真珠腫剝離操作を行う際には,他の部分の剝離を優先し,最後に瘻孔操作を行ったほうがよい。

*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年10月)。

Review Article

鼻呼吸と睡眠障害 内藤 健晴
  • 文献概要を表示

Summary

●最近の研究では,鼻閉は睡眠障害や睡眠呼吸障害と重要な関わりがあるとするものが多い。

●そのため鼻腔通気度を客観的に評価することは,睡眠障害の診療にとって大切である。

●睡眠呼吸障害の治療として鼻閉を解除することは,睡眠障害自体を軽減するだけでなく,閉塞性睡眠時無呼吸に対する経鼻的持続陽圧呼吸(nCPAP)治療のうえでも不可欠である。

●鼻閉と睡眠呼吸障害のより明確な関係を示すためには,さらに詳細な研究が必要である。

  • 文献概要を表示

はじめに

 原発不明頸部リンパ節転移癌とは,病理学的に癌が証明された頸部リンパ節が存在し,種々の検索にもかかわらず原発巣が見出せない病態である1,2)。従来は予後不良な疾患であったが,近年の集学的治療の発展により生存率は向上してきている。今回われわれは,当科を受診した原発不明頸部リンパ節転移癌症例の治療成績を報告する。

  • 文献概要を表示

 内視鏡下鼻副鼻腔手術のバイブル『内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術—CT読影と基本手技』が5年ぶりに改訂され,待望の第2版が発売された。ご存知のように本書は京大耳鼻咽喉科・頭頸部外科で行ってきた手術解剖実習をベースとしている。本書の特徴は,まず,付録のDVD-ROMに収められた3DCT画像を用いて,基本的な内視鏡下副鼻腔手術に必要な解剖のポイントを解説し,三次元的な構造を把握して安全な手術計画を立てる能力を身につけさせておき,鼻副鼻腔の構造に基づいて安全確実に行える「目から鱗」の手術手技が,経験豊富なインストラクターによりステップ・バイ・ステップでわかりやすく解説していることにある。2014年に刊行された初版は,これから内視鏡手術を始める専攻医はもちろんのこと,頭蓋底手術を行うエキスパートにとっても必読のバイブルとなった。

 初版から5年,本書で学んだ知識と技術を生かしてoutside-inアプローチやendoscopic medical maxillectomyなどの新たな手術手技が全国で行われるようになり,鼻副鼻腔腫瘍や頭蓋底腫瘍に対して内視鏡下経鼻アプローチを選択する施設も多くなってきた。これらの状況を反映し,第2版では,拡大前頭洞手術や視神経管開放術,有茎鼻粘膜弁による頭蓋底再建などの項目が新たに増設され,頭蓋底手術に関連する内容が充実した。さらに,手術テクニックの解説用に2時間を超える多数の手術動画が付録DVD-ROMに収録されるなど,大きな進化を遂げている。まだお持ちでない方はもちろんのこと,すでに初版をお持ちの方も,第2版を購入されることをお薦めする。

--------------------

目次

欧文目次

バックナンバーのご案内

あとがき 小川 郁
  • 文献概要を表示

 外科系各領域で低侵襲手術が急速に普及しています。実は,低侵襲手術に不可欠な内視鏡を初めて外科手術に導入したのは耳鼻咽喉科・頭頸部外科で,1985年にMesserklingerが鼻の穴を利用するkeyhole surgeryである内視鏡下副鼻腔手術を報告したのが初めです。Mouretが腹部内視鏡下手術を行う2年も前のことで,その後,1990年代になってから多くの外科手術が内視鏡下の低侵襲手術になってきています。

 内視鏡下副鼻腔手術は,従来の裸眼での副鼻腔手術の概念を覆す画期的な変革であったことに異論はないと思います。一方,耳科手術には1950年代にいち早く顕微鏡が導入され発展してきたこともあり,内視鏡の導入は限定的でした。しかし,耳科手術用の内視鏡や周辺手術機器の開発によって,内視鏡下耳科手術もこの約10年間にあっという間に普及してきました。これがTEESと呼ばれる経外耳道的内視鏡下耳科手術です。今年,米国ボストンで第3回World Congress on Endoscopic Ear Surgeryが開催され,日本からも多くの耳科医が参加しました。2年後には欠畑誠治教授(山形大学)が会長となり,京都で第4回のWorld Congressが開催される予定となっています。TEESがさらに大きく開花する契機になることは間違いありません。

基本情報

09143491.91.11.jpg
耳鼻咽喉科・頭頸部外科
91巻11号 (2019年10月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

前身誌

文献閲覧数ランキング(
2月10日~2月16日
)