小腸は,外界との境である口や肛門から最も離れた,数mに及ぶ狭い管腔臓器であり,腸間膜で支持され可動性に富む.これが内視鏡の到達を阻んでいた要因である.また,上皮の細胞回転が速く,リンパ装置が発達している.内容物は液状で通過が速く,消化酵素活性が高く,腸内細菌が少ない.これらは腫瘍(特に上皮性)が少ないことと関連付けて考えられている.
古くから小腸腫瘍では,①腫瘤,②腹痛,③出血が3徴として有名であるが,他にも貧血,腸閉塞などさまざまな愁訴を契機に発見される.悪性腫瘍は増大して顕在化するが,良性腫瘍は多くが無症状で経過する.スクリーニング検査の対象となる条件は検査が比較的容易で疾患頻度が高いことであるが,小腸はいずれも満たさない.偶然を除き無症状の小病変は検出されず,小腸腫瘍の全体像は不可知である.小腸腫瘍の頻度や疾患構成を探る試みは従来度々行われてきたが,手法によって観測値は大きく変化する.