胃と腸 4巻7号 (1969年7月)

今月の主題 胃の変位と変形(2)

綜説

潰瘍による胃の変形 増田 久之
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Ⅰ.はじめに

 胃の変形という揚合には,胃が全体として形を変え,本来の胃の形状からかけはなれている場合を指すのが普通である.しかし胃の輪郭,たとえば小彎や大彎をとりあげてみた際に,その一部分がある程度の陥凹や突出を形成することがあり,これも一種の変形といってもよいわけであるが(広義変形),胃全体としての変形はほとんどなく,限局性変形とも呼ぶべきものである.このように,胃の変形には2種類があるが,一般に胃の変形という場合には,限局性変形は含まれないのが普通であり,まず全体性変形(狭義変形)が問題にされる.

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Ⅰ.はじめに

 いまX線所見で大切だとされているものに,胃変形,胃辺縁の異常,壁硬化,伸展不良,粘膜異常像などがある.この中で,胃変形と辺縁異常像だけで行なうX線診断の価値を考察してみた.早期癌の精密検査が行なわれている現在,また,内視鏡検査も併用してその診断の限界を追いつめている現在,なぜ,こんな余りにも古典的な行き方を主張しなくてはならないのか,という疑問がわく.今までに苦心していろいろな撮影術式を使って見つけた症例について,全く古典的な手法を当てはめ,立位充満像の変形と辺縁異常像の2所見だけを取り上げて,その診断価値の限界を改めて知ろうというのである.

 どんな変形が,現状では役立つのであろうか.現時点では,どんな変形と辺縁異常をひろい上げなくてはならないか.また,その組み合わせが役立つのであろうか.Gutmannが指摘した像に,さらに何か別な所見を補足できるであろうか.どんな像をみたら,他撮影像の読影に一そうの注意を払わなくてはならないのか.また,集検問接フィルムを読むとき,どんな変形と辺縁異常像を取捨選択すればよいであろうか.これは,集検の能率化にも関係することでもある.

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Ⅰ.はじめに

 胃疾患の診断,治療,研究の分野において内視鏡はすでに不可欠のものとしてその実績をあげつつある.X線検査法との組合わせによる相乗的な効果は多くの人々の認めるところであろう.

 ところで,胃内視鏡検査において噴門,宥薩部,体上部後壁などの部位は,その観察に多少の技術的な問題があり,更に胃内視鏡の構造上の制約があったり,病変の出現頻度が幽門部や胃角部などに比して少ないということもあって,しばしば十分な観察をすることなく終るという恐れがないとはいえない.X線検査においてもこの部位は診断学的に容易とは言いにくいこともまた事実であろう.しかし,ここまで進歩した胃疾患の診断学において,多少観察しにくくても,また病変発現頻度が比較的低くても,それを理由にこの部位がとりのこされることはもはや許されない.胃内視鏡検査は「すべての部位を十分に」(Complete and thorough)把握するものでなければならない.

 反転法やすでに開発されている新型Vb型胃カメラなどは,強い変形を伴わない胃におけるこの種の問題をかなりな程度まで解決していると思われ,先の第11回日本内視鏡学会総会におけるシンポジウムの中で遠藤,斉藤らがなした総括は記憶に新らしい.

 そこでここには変形胃のうちで最もしばしば遭遇する瀑状胃の内視鏡検査について2,3述べてみたい.

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Ⅰ.はじめに

 胃疾患の診断の進歩とともにより微細な病変がとらえられるようになったが,一方では術前早期胃癌と診断され手術を行ない,良性の病変である症例も少なくない.われわれは最近早期胃癌を疑い手術を行ない,良性病変であった例を経験したので報告し,併せてわれわれの経験した早期胃癌を疑われた良性病変の症例についていささか述べたい.

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Ⅰ.症例

 患者:31歳女子

 昭和42年6月,心窩部痛があり胃X線検査,内視鏡検査をうけ,胃角小彎に潰瘍瘢痕が認められ,経過観察をするようにいわれていた.その後患者は妊娠したため,約1年後の昭和43年8月再検査をうけ,Ⅱcの疑いで入院した.入院後の精密検査で,胃角小彎を中心としたⅡcであることが確認された.切除胃の病理学的検索では,胃角小彎に約3×3cmの粘膜内癌があり,その周辺は胃粘膜の強い萎縮が認められた.

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Ⅰ.緒言

 最近肉眼的にⅡaまたはⅡaの疑いと診断されたものが病理組織学的に良性異型であったという例にしばしば遭遇するようになり,数年前よりそれらの鑑別診断が問題とされて来ている.著者らはⅡa類似の良性病変の1例を経験したのでここに報告する.

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 本症は他にもreactive lymphoreticular hyperplasia等の多くの名称があり,最近散発的に症例報告がなされており,胃癌,特に早期癌との鑑別に非常な興味を持たれている疾患である.私共も3例の本症に遭遇し,いずれも早期癌と極めて類似した病像を呈したが,そのうちの1例を報告する.

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 増田 本日は諸先生方お忙しいところをお集まりいただきまして,有難うございました,今日のテーマは「胃の変位と変形」ということであります.この変位と変形の定義というのは,非常に難しいわけですが,変位は胃が本来の位置から外れて位置を変えておる,つまりVerlagerungあるいはDisplacementといったふうに解釈することにいたします,そうして変形は胃の形が変わっておるということ,FormveränderungあるいはDeformity,こういったものとひとつ割り切って考えたいと思います.もちろん変位と変形と同時に示しておるのも沢山あると思います.

 最初に変位につきまして,考えてゆきたいと思います.本日の諸先生方は非常に御経験が多い方ばかりでいらっしゃいますし,また変形についていろいろ専門的に御検討しておられる先生もあるわけでございますから,読者のために非常に貴重な御経験とか,御意見なりが伺えるものと思っております.大変拙い司会でございますけれども,暫らく御協力いただきたいと思います.

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Ⅰ.はじめに

 胃の二重造影法には,仰臥位の二重造影法のほかに,立位や半臥位,第2斜位の二重造影法があり,さらに腹臥位の二重造影法があるが,今回は,仰臥位二重造影法だけを取り上げてみる.なにしろ,立位充盈像を撮影したあと,透視台を倒して患者を仰臥位にしてみたら,幽門部の微細病変が今までにないほど容易に,しかも,きれいに現われていたといったことから,二重造影法の開発がはじまったのである.その後,いろいろな創意工夫が加えられ,今では上述のような二重造影法が開発されたとはいっても,やはり仰臥位二重造影法が基本となるからである.

 近年,わが国では二重造法(とくに仰臥位二重造影法)が広く普及しているが,どうも,ただ漫然と二重造影像さえ撮影すれば,微細病変までもが,すべて現われるものだといったぐあいに考えている向きもあるようである.確かに二重造影法は微細病変を現わすのに非常によい検査法であるが,それはあくまでもよい二重造影像が撮れたときの話である.従って,よい二重造影像が撮れたかどうかの判定をしたうえでなければ,二重造影像の読影,ひいては二重造影法による微細病変のX線診断は成立しないのである.近年,一見よい二重造影像のようにみえながら,病変が全く写っていない写真をみせられて,読影に苦しむことがよくある.活用すれば,二重造影法は非常によい検査法であるだけに,残念だと思うことも度々である.そこで,今回はよい二重造影像とは何か,またよい二重造影像をとるためにはどうしたらよいかといったことを話題の中心にしてみよう.

診断の手ほどき

幽門洞小彎のⅡc 春日井 達造
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幽門洞小彎のⅡcの内視鏡診断,特に直視下の細胞診および生検診断を中心にのべる.

研究会紹介

山形県X線読影委員会 熱海 明
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 山形県医師会成人病検診胃部レ線読影委員会は,昭和38年山形県で初めて胃集検車が購入された時に,県医師会に設けられたものである.委員会には中央読影委員会と地区読影委員会があり,地区の数は12で,これは県医師会を構成する郡市医師会の数に相当し,郡市医師会を基盤とするものである.一方,中央読影委員会は各地区の代表者1名ないし数名から構成されている.

 地区委員の数は山形市の22名を最多として,3名ないし13名で,総数89名である.その中の13名が中央委員をかねている,そしてこれらの委員の大部分は山形県消化器病懇話会の会員である.

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 北から南へと,各県,各地区の消化器病研究会の紹介の記事を読ませていただいていますと,何れの会も非常な盛況の様子が偲ばれます.私達の研究会も自己紹介させていただく順番になりましたが,発足はまだ浅く,3年足らずしか経過していません.しかし決して他の会に劣らないと自負しています.

 福井県は大学ももちろんなく,人口も全国で最小から二番という小県で,どうしても地方のひけめを感じていた訳ですが,昭和41年の春頃から福井県立病院外科医長の山崎先生を中心として,公立病院および福井市内の消化器病専門の開業医の先生方約十名が,発起人となり,自分達も,第一線のレベルに遅れずにX線内視鏡の読影力を向上させようとの意見ができました.丁度その頃金沢へ来られまして見事な二重造影のX線写真を御披露して下さった白壁先生の講演会を契機として,昭和41年9月第1回の例会を開きました.

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欧文目次

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 本書はすでに長い歴史をもち,わが国の内科診断学の定本とされたものであり,わたくし自身も多年にわたって本書を用いて学生の講義や実習に当ったもので,いま本書の書評をするに当っても,なつかしさが一ぱいである.

 本書の初版は,序文に沖中先生が書かれているように,戦後間もないころで,外国の本の入手が困難なときに,東大で実際に診断学を教えておられた3人の先生方が自ら執筆されたものである.このことは,今日の第7版にいたるまで一貫して本書の特徴といってよい,つまり,実際に学生を教えるものの立場からみて,経験と知識をうまくおりまぜたものであり,外国語の本のうけうりでないことなのである.このたび久しぶりに第7版を拾い読みさせていただいたが,3人の先生の人がらがよくあらわれており,また平常言っておられ考えておられることが行間ににじんでいる.他の人では絶対に書けないことが多いのである.

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 この本はその書名の通り,常用の外科手術について,豊富な図をもって,わかりやすく説かれてある.以前に原勇三先生著の図解手術書があったが,それでは専ら写真が用いられていたのに対し,この本ではすべて線画が用いられているのが特徴で,私はむしろ線画の方が要領よく理解しやすいように思う.

 本書では従来の手術書と異り,臓器別にとらわれることなく,手術を難易の段階にしたがって二分し,入門編と中級編とに分けて述べてあって,特殊な高級編は他の大手術書に譲るという形をとっているが,中小病院で実地に取扱う手術は全部取り上げられている.

編集後記 岡部 治弥
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 胃のX線診断では,立位充満像における変形の読みがいかに大事であるかということは,古くから多くの学者により強調されてきたところであります.本号では,あえてその変形を取り上げたわけですが,それには,変形にも色々の要素があるので,それを整理してみることと,現在の極めて進歩したX線診断学のレベルで,この変形の意義ないし価値を再検討してみようという二つの目的があったわけです.そういう気持で本号の綜説を読んでいただけますと,変形の意味するもの,更にそのとらえ方,読み方について得るところが大きいと思います.さらに座談会では,この問題について多年熱心に分析研究された方々が自ら築きあげた理論と豊富な体験から,自由に発言したり,珍らしい症例を提示しており,これまた,読者を飽かせないことでしょう.

基本情報

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胃と腸
4巻7号 (1969年7月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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