小児科診療 84巻4号 (2021年4月発行)

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特集　小児科医の疑問に答える!子どもと新型コロナウイルス

基礎の疑問に答える　ウイルス学的特徴は? 森内　浩幸 84巻4号 , 2021年4月 , pp.449-458

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●ヒトコロナウイルスには、感冒コロナウイルス4種類と新興コロナウイルス3種類がある。●4種類の感冒コロナウイルスも、元々は自然宿主動物由来の新興コロナウイルスだった。●コロナウイルスはrecombinationしやすく、今後も新型ウイルスが出現する可能性は高い。●SARS-CoV-2はその感染性と病原性から、感冒コロナウイルスとして定着すると思われる。●小児患者が少なく軽症の理由は、受容体の発現レベルの低さや免疫応答パターンの違いにある。

基礎の疑問に答える　世界的流行はどのように起こった? 菅谷　憲夫 84巻4号 , 2021年4月 , pp.459-463

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●SARS-CoV-2は、中国の武漢で発生した。●SARS-CoV-2は、スペインかぜに匹敵する重いウイルス感染症である。●2020年の秋になり、欧米諸国では、激しい第2波流行が起きた。●わが国のSARS-CoV-2死亡者数(人口10万人あたり)は、欧米に比べて少ないが、アジア諸国のなかでは、台湾、ベトナム、タイ、中国、シンガポール、韓国などよりも多い。

基礎の疑問に答える　小児における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の広がりと対策は? 新橋　玲子 , 多屋　馨子 , 鈴木　基 84巻4号 , 2021年4月 , pp.465-469

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●小児におけるCOVID-19患者数は徐々に増加しているが、全体に占める割合は小さい。●感染源は多くが家族と推定されている。●感受性は成人より低く、特に年少児において低い。●年齢別の感染性については現時点で結論は得られていない。●学校におけるクラスター発生は限定的であり、休校措置による効果は小さいと考えられる。

基礎の疑問に答える　クラスターとは? 新庄　正宜 84巻4号 , 2021年4月 , pp.470-474

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●クラスター(患者の集団)は人が集まればどこでも発生しうる。●｢3密回避｣｢手指衛生｣｢マスク｣｢長時間接触の回避｣｢物品非共有｣｢体調不良時の療養｣。●医療施設においては、｢コロナと思わずに対応していた｣｢休憩室での感染｣に注意する。●小･中学校生は家庭内のクラスター、高校生は学校内と家庭内のクラスターに注意する。●普段会わない人達(お互いにそれまでの行動が不明)同士の集まりにも注意する。

診療の疑問に答える　子どもの臨床像とは? 堀越　裕歩 84巻4号 , 2021年4月 , pp.475-479

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●生来健康な小児のCOVID-19では、無症候性、軽症が多い。●COVID-19重症化のリスクは、新生児、特に年長児での基礎疾患の併存である。●胸部画像所見の異常がみられるが、臨床的に検査意義は軽症では乏しいかもしれない。●小児のCOVID-19で死亡の転帰はまれである。●小児のCOVID-19の典型的でない経過では、他の原因の検索を行うべきである。

診療の疑問に答える　病原診断をどのようにすすめる? 河島　尚志 , 森地　振一郎 , 山中　岳 84巻4号 , 2021年4月 , pp.481-486

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●診断方法は、核酸検出法、抗原検出法(定性、定量)、抗体検出法に分けられる。●検体採取にあたり、医療従事者に一定の曝露があるため、フェイスシールド、サージカルマスク、手袋、ガウンといった個人防護具による感染防御を要する。●症状発症から9日以内の者について、唾液を用いたPCR検査が可能である。●抗原検査は最近偽陽性の報告が多くあるため除くが、感度は37～53%である。●発症から10日間経過し、症状が軽快してから72時間過ぎれば、PCR検査なしで退院可能である。

診療の疑問に答える　特徴的な画像所見とは? 服部　真也 , 横田　元 84巻4号 , 2021年4月 , pp.487-491

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●小児に対して新型コロナウイルス感染症のスクリーニング、診断を目的とした胸部CT撮像は推奨されない。●胸部CT所見は成人と小児でおおむね共通する。ただし、小児ではより所見が軽い。●特徴的なCT所見として両肺下葉背側の末梢優位に分布する非区域性すりガラス影があり、ときに浸潤影を伴う。●中枢神経病変はPRES、ADEM、脳梗塞、脳梁膨大部病変など多彩な像を示す。●小児多系統炎症性症候群を起こし、回盲部周囲の炎症、冠動脈瘤、心筋炎をきたすことがある。

診療の疑問に答える　気管支喘息への影響は? 松本　翼 , 手塚　純一郎 84巻4号 , 2021年4月 , pp.493-497

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●新型コロナウイルス感染症とアレルギー疾患の関係性はまだ明らかになっていない。●新型コロナウイルス感染者では気管支喘息の基礎疾患保有率が低く、重症度との相関関係はなかった。●気管支喘息の病態の主となる2型サイトカインとアンギオテンシン変換酵素2とは負の関係性があり、TMPRSS2とは正の関係性がある。●コロナ禍においても喘息長期管理薬は継続されるべきである。

診療の疑問に答える　循環器疾患への影響は? 小柳　喬幸 , 山岸　敬幸 84巻4号 , 2021年4月 , pp.499-503

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●わが国では、小児循環器疾患に関連したCOVID-19の罹患率、重症化の報告は少ない。●重症化リスクの高い心臓病(学会提言)には、注意する。●一方、重症化リスクが低いと考えられる心臓病では、過度な不安を払拭する配慮も重要。●発熱や呼吸器症状がなく循環器症状が悪化した症例のなかに、COVID-19陽性例が潜んでいる可能性もある。●小児循環器･先天性心疾患症例では個別性が高いので、主治医は個々の患者･家族とよく話すことが肝要。

診療の疑問に答える　糖尿病への影響は? 皆川　真規 84巻4号 , 2021年4月 , pp.505-508

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●糖尿病合併は成人では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染のリスク、COVID-19の重症化、合併症、予後増悪のリスクとなる。●入院したCOVID-19患者の血糖コントロールを厳格に行うことは、重症化リスクや予後の改善に有用である。●小児糖尿病がCOVID-19の感染、重症化、合併症、予後リスク因子となるかどうか明確なエビデンスはない。

診療の疑問に答える　Multisystem inflammatory syndrome-Cと川崎病との関連性は? 濱田　洋通 84巻4号 , 2021年4月 , pp.509-513

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●2020年3月以降、欧米で小児･青年期の若者が新型コロナウイルス感染症罹患後に多臓器障害をきたし集中治療を必要とするケースが相次いでいる。●現在multisystem inflammatory syndrome-childrenとよばれるこの疾患は、当初、川崎病に似ていると報道され、川崎病患者の多い日本国内では心配の声があがった。●疾患の報告から半年が経過し詳細な臨床症状が蓄積され、現在ではMIS-Cは川崎病とは異なる疾患であることがわかってきた。●しかしながら、MIS-C血管炎の機序解明は川崎病の病因解明を前進させる可能性がある。

診療の疑問に答える　新生児への影響は? 森岡　一朗 84巻4号 , 2021年4月 , pp.515-519

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●SARS-CoV-2は、胎内感染の可能性はあるものの、その頻度は低い。●SARS-CoV-2の新生児への主要感染経路は、飛沫･接触感染である。●母親から新生児へ飛沫･接触感染を防ぐために、分娩後より一時的な母子分離はやむを得ない。●SARS-CoV-2陽性の母親から経母乳感染のリスクは低い。●人工呼吸を必要とする蘇生や入院管理が必要となった場合は、エアロゾル化したSARS-CoV-2微粒子に注意してN95マスクや眼保護も含む適切な防護具を装着する。

治療･管理の疑問に答える　医療従事者の感染対策は? 満田　年宏 84巻4号 , 2021年4月 , pp.521-525

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●新型コロナウイルス感染症においては、おもな伝播経路は飛沫感染であり接触感染がこれに続く。エアロゾルを介した感染ルートの関与の割合については今後のエビデンスの構築を待つ必要がある。●パンデミックの渦中の医療業務中は、サージカルマスク(ユニバーサルマスキング)と眼の保護具を常時着用し、マスク装着が可能な年齢の児にはマスク装着を促し感染予防する。●曝露リスクの評価項目としては個人防護具装着状況に加え、(1)患児との距離、(2)(直接触れるなど)接触度合い、(3)接触時間、(4)時間換気回数、(5)処置内容などが伝播のリスク要因となる。●エアロゾル発生時はN95マスク、眼の保護具、ガウン、手袋など適切な個人防護具を装着する。

治療･管理の疑問に答える　家庭や学校の感染対策は? 内田　敬子 84巻4号 , 2021年4月 , pp.527-535

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●児童生徒の感染経路は家庭内が最も多い。●学校での感染拡大を防ぐためには家庭での健康観察と健康管理が必須である。●学校現場においても手洗い･マスク着用･3つの密の回避が感染対策の基本である。●児童生徒自身が自主的に感染対策を実践できるよう、教育的に指導する。●感染状況と学校での学習活動とのバランスで具体的な感染対策を決定していく。

治療･管理の疑問に答える　治療薬の現状は? 森島　恒雄 84巻4号 , 2021年4月 , pp.537-543

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●感染拡大や変異ウイルスの侵入などにより、今後小児の重症例の増加が危惧される。●既存薬の中から有効な薬剤を探索することになり、単剤での効果は限定的である。●現在、わが国ではレムデシビル、デキサメタゾン、抗血栓用ヘパリンが適応承認されている。●ウイルス増殖阻害薬･抗炎症/免疫調節薬など病態に対応した治療薬の組み合わせが重要。●小児ではどの治療薬も使用経験が少なく、安全性に十分配慮していく必要がある。

治療･管理の疑問に答える　重症例の特徴と治療は? 中川　聡 84巻4号 , 2021年4月 , pp.545-549

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●成人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症者で、わが国では、人工呼吸患者でもECMOを必要とした患者でも、死亡率は他国に比べて低かった。●海外からの報告では、小児のCOVID-19の重症者は、乳児と10代の基礎疾患を有する患者に多い。死亡者においても同様の傾向にある。●新型コロナウイルス感染に関連した小児の全身性炎症症候群(MIS-C)が注目されている。新型コロナウイルス感染から2～4週後に、症状が出るとされる。重症者では、ショックとなりICU管理を必要とする。最重症例ではECMO治療の報告もある。●MIS-Cの治療は確立されていないが、川崎病に使用される免疫グロブリン療法やステロイドの使用が多いと報告されている。

治療･管理の疑問に答える　新型コロナウイルスワクチンの開発は? 安原　敦洋 , 山吉　誠也 , 河岡　義裕 84巻4号 , 2021年4月 , pp.550-556

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●92種類以上のワクチンが非臨床試験の段階にあり、40種類以上のワクチンで臨床試験が行われている。●10種類のワクチンについて第III相試験が行われており、そのなかで4種類が条件付きで承認されている。●小児へのワクチン接種は有効と予想されるが、小児を対象とした臨床試験はすすんでいない。

治療･管理の疑問に答える　子どものメンタルケアは? 鴇田　夏子 84巻4号 , 2021年4月 , pp.557-561

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●東日本大震災における放射能汚染下における子どもと家族の心のケアを振り返り、相違点、類似点をもとにコロナ禍における心のケアについて考察する。●コロナ禍における家族のあり方を観察し、それぞれの家族にいかに寄り添うかについて考察する。●医療者が、健全な状態で患者･家族のケアに当たるためには医療者の心のケアも必須である。

症例報告

炊飯添加型サプリメントが奏効した発達障害を伴う壊血病児の1例中野　友理佳 , 南川　将吾 , 石田　悠介 , 上村　克徳 , 中岸　保夫 84巻4号 , 2021年4月 , pp.562-565

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現代でも発達障害に伴う極度の偏食のために壊血病の発症例は散見されており、そのような症例では内服治療に難渋する場合がある。症例は2歳女児。下肢痛のため当科を受診し関節痛、点状出血、偏食歴から壊血病の診断に至った。発達障害によりビタミン剤内服に難渋したが、炊飯添加型サプリメントを用いることで治療介入に成功した。米飯は偏食のある児でも摂取可能なことが多く、炊飯添加型サプリメントは有効な治療法となる。

頭痛関連の周期性嘔吐症候群が再燃した14歳女子例秋谷　進 84巻4号 , 2021年4月 , pp.566-568

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周期性嘔吐症候群は小児例でよくみられ、片頭痛に移行することが知られている。しかし、月経などに誘発される成人例の報告が近年増加している。本症例は、14歳女子で、既往に周期性嘔吐症候群があった。寛解3年後に、月経開始と同時期から頭痛および嘔吐症状が再燃した。月経前症候群と類似しており、診断に苦慮した。頭痛に対してスマトリプタン、バルプロ酸ナトリウムが著効し、頭痛関連の周期性嘔吐症候群と診断した。