臨床泌尿器科 74巻8号 (2020年7月)

特集 これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ〈特別付録Web動画〉

企画にあたって 小島 祥敬
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 今回の特集のタイトルは,「これが最新版! 過活動膀胱のトリセツ」です.「トリセツ」とは,「取扱説明書」の略称で,もともとは製品の「取扱説明書」をつくる製造会社,印刷会社,販売店が言葉を短縮して,隠語的に使用していた言葉とのことです.それが,歌手の西野カナさんが2015年にリリースした「トリセツ」という曲により,若い世代に受け入れられ,今では一般的に幅広い意味で使われる言葉になりました.

 さて,本誌2016年1月号で,「決定版! 過活動膀胱―All about OAB」と題し,過活動膀胱の特集を組みました.早いもので4年半が経ちました.4年半前の特集は,過活動膀胱診療ガイドライン第2版が発刊された翌年で,「発症メカニズム」「診断」「標準的治療」「難治性過活動膀胱に対する治療」と項目分けして,ガイドラインをベースにして企画させていただきましたが,内容はどちらかというと総論的なものでした.

〈過活動膀胱の発症メカニズムと疫学〉

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▶ポイント

・過活動膀胱(OAB)の発生機序として,①膀胱・尿道における求心性神経活動の異常亢進と,②脳における求心性入力の処理障害の2つが想定されている.

・膀胱における求心性神経活動の異常亢進には,膀胱壁内自律収縮機構の亢進と,尿路上皮・求心性神経伝達系の活性化の関与が示唆されている.

・さらに,その背景因子として,虚血,炎症などによる尿路上皮細胞・間質細胞・平滑筋細胞の障害や神経変性などが推察される.

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▶ポイント

・非神経因性過活動膀胱(OAB)とメタボリック症候群,特に肥満との間に関連性があることが報告されている.

・肥満を伴うOAB患者では,薬物療法などの治療を行うと同時に体重減少を勧めることが大切である.

・非神経因性OABでは,エネルギーの産生異常との関連性が示唆されている.

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▶ポイント

・下部尿路機能を司る自律神経の交感神経と副交感神経,体性神経の3系統は脳幹より上の高位中枢および脳幹と腰仙髄の排尿中枢によりコントロールされている.

・神経因性の過活動膀胱(OAB)の背景には,排尿筋過活動と(排尿筋過活動を伴わない)膀胱知覚増強・尿意切迫がある.

・これらは蓄尿反射の脱抑制,排尿反射の異常な促進,中枢性または末梢性の知覚増強による.

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▶ポイント

・最新の疫学的知見によると尿失禁だけでなく,過活動膀胱(OAB)もフレイルとの関連が示唆される.

・フレイルは進行すれば要介護や寝たきりに至るが,適切な介入でまだ健康な状態へ回復しうる段階としてきわめて重要である.

・フレイルとの関連に着目することで,OABに対する新たなアプローチが見出される可能性がある.

〈過活動膀胱の治療と問題点〉

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▶ポイント

・行動療法には大規模前向き研究が少なく,エビデンスレべルは十分ではない.

・侵襲がほとんどなく,経済的にも負担が少ないため,まず試されてよい治療法であり,過活動膀胱(OAB)治療の第一選択と考えられている.

・どれか1つを選択するのではなく,各種治療法を組み合わせた統合的なプログラムによって症状緩和に努める.

薬物療法:抗コリン薬 竹澤 健太郎
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▶ポイント

・排尿筋収縮を抑制することで尿意切迫感を軽減すると考えられるが,そのメカニズムはよくわかっていない.

・認知機能障害との因果関係は証明されておらず,今後の検討課題である.

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▶ポイント

・β3作動薬は,本邦で創製・開発された薬剤である.

・β3作動薬はβ3アドレナリン受容体を刺激し,蓄尿期のノルアドレナリンによる膀胱弛緩作用を増強することで過活動膀胱(OAB)に伴う蓄尿症状の改善をもたらす.

・β3作動薬は副作用が少ないことや抗コリン負荷がないことなどから,処方しやすい薬剤である.

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▶ポイント

・抗コリン薬とβ3作動薬の併用療法は,各単独による治療よりも過活動膀胱(OAB)の症状改善効果が良好である.

・β3作動薬,もしくは抗コリン薬のどちらかを単独で先行投与し,その後にもう一方を追加する併用療法でも,長期的に良好な改善効果が得られる.

・併用療法による有害事象(AE)は,抗コリン薬単独によるものと同等であるが,高齢者においてはその発生頻度が高い可能性があり,注意を要する.

〈過活動膀胱に対する新しい治療と未来展望〉

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▶ポイント

・仙骨神経刺激療法(SNM)は主に求心路に作用し,正常な排尿サイクルへ戻す排尿の調整役として機能していると考えられている.

・リード線挿入術は治療の成否を決める重要な行程である.また,機器挿入術であるので感染対策が重要である.

・ボツリヌス毒素療法との比較試験では,SNMのほうが術後の合併症頻度が少ないと報告されている.

*本論文中、[▶動画]マークのあるものにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年7月末まで公開)。

ボツリヌス療法 本田 正史 , 武中 篤
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▶ポイント

・A型ボツリヌス毒素製剤(ボトックス®)は過活動膀胱(OAB)および神経因性膀胱への保険適用が認められている.

・OAB患者を対象とした国内第Ⅲ相試験で,尿失禁回数,切迫性尿失禁回数,尿意切迫感回数,排尿回数などで有意な改善を認めている.

・有害事象として,残尿量増加,尿閉,尿路感染,血尿に注意する.

*本論文中、[▶動画]マークのあるものにつきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2022年7月末まで公開)。

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▶ポイント

・病態時におけるnon-cholinergic収縮成分の増強と,それを治療標的とした創薬探索が模索されている.

・膀胱知覚求心路への作用は,尿意切迫感の病態解明および創薬探索に結びつく可能性がある.

・過活動膀胱(OAB)においても,ドラッグデリバリーシステム(DDS)を用いた効率的な薬物投与が,安全で副作用の少ない治療となりうる可能性がある.

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筆者は他誌に「血尿・血精液症を主訴とした前立腺小室囊胞の1例」(泌外32 : 1543-1546, 2019)と題した症例報告を投稿した.論文作成の過程で文献検索を行うと,多様な疾患名で報告されていることに当惑した.過去の症例報告を散見すると,「前立腺囊胞の○○例,Müller管囊胞の○○例,前立腺貯留性囊腫の○○例,前立腺囊胞性腺腫の○○例,前立腺小室囊胞の○○例,前立腺正中囊胞の○○例」などがある.これらが明確に鑑別診断されているとは限らない.これには前立腺囊胞の分類化された疾患の間に明確な診断基準がなく,その取り扱いに混同がみられるためと思われる.

 Emmetは前立腺囊胞を先天性と後天性に大別し,前者はMüller管やWolff管の退化したもの,後者は貯留性囊腫,囊胞腺腫,前立腺癌に伴うもの,ビルハルツ住血吸虫やエキノコックスによるものに分類している(J Urol 36 : 236-249, 1936).棚橋は発生の相違よりMüller管やWolff管由来のものを先天性前立腺囊胞から除外すべきであると述べている.さらに,前立腺を含む副性器に発症した囊腫の部位別として,正中(前立腺小室囊胞,Müller管囊胞),傍正中(射精管囊胞,精管膨大部囊胞),側方(精囊囊胞,前立腺囊胞)に分類されている(西日泌尿36 : 83-87, 1974).ちなみに,泌尿器科学会用語集(改訂第4版)ではMüller管囊胞を除き,前立腺囊胞を含めそれぞれの囊胞性疾患名の記載はない.

連載 医薬系プレゼンテーションの技術―知れば,学べば,必ず上達!・第7回

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ビジュアル要素

◯ビジュアルは一貫性が大切

 本連載第5回,6回ではスライドの配置,背景についてお話しした.さあ,次はスライド上のビジュアルの要素についてお話ししていこう.「あなたはプレゼンテーションスライドを作成するとき,どのような文字の書体,サイズを使い,色を用いるのでしょうか? また,それを使うのはなぜでしょうか?」と聞かれたら,多くの方はきっと答えられないだろう.なぜなら,そんなところまで考えていないからだ.文字や色には意味があり,その使い方がある.それらを用いてあなたがスライドに描くとき,常に心に留めておいてほしいのが「一貫性」だ.いったんビジュアルスタイルを決めたら,あなたはそれを貫くようにしよう.それらは聞き手の目に優しく,目線が流れやすい配置がいい.そう,聞き手にとって視覚上のトリガーになるようにビジュアル要素を決め,一貫性を貫くことだ.もちろん,時にこの一貫性を破ることは絶大なインパクトを与えることもある.例えば,一貫したスライドデザインを20枚程度見せた直後に雰囲気の違う1枚を盛り込むことは,聞き手に驚きとインパクトを与えるのだ.しかし,これはあなたが一貫性を保って初めて効果的になることを忘れてはいけない.では,早速それらについて見ていくことにしよう.

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 泌尿器科は,新生児から高齢者まで全ての年齢層を対象としており,扱う領域は,悪性疾患,尿路性器感染症,腎機能障害,腎移植,下部尿路機能障害,内分泌疾患,性機能障害,小児・女性泌尿器など,多岐にわたります.教育病院,市中病院,民間病院,クリニック,それぞれの施設やそれぞれの地域において特徴的な医療を行っており,泌尿器科疾患の全範囲に常に触れているわけではありませんので,全ての最新知見に精通している泌尿器科医は決して多くないと思います.一方,診療ガイドラインの改訂や取扱い規約の改訂は,以前よりも間隔が短くなっており,各自の守備範囲としている領域においても,全ての改訂内容をフォローできている専門医は決して多くはないことと思います.インターネットが身近に利用できる環境が整い,検索すれば最新情報を入手することは可能ですが,あまりなじみのない領域ではキーワードすら思いつくことができず,自分の知識をアップデートするのはなかなか容易ではないのが現実ではないでしょうか.

 本書では泌尿器科診療の全ての領域にわたって,最新情報として押さえておくべきポイントについて,それぞれの専門家がコンパクトにまとめて記載しています.セッションの冒頭で,以前の常識(平成の常識)と現在の常識(令和の常識)がコラムとしてピックアップされています.これまでの常識について,「確かにそうであった」とうなずきながら読むことで,読者はここで安心することができます.そして,これまでの診断や治療の変遷を踏まえて読み進めることで,新しい常識を吸収しやすくなっているのが,本書の特色だと思います.診療ガイドラインや取扱い規約が改訂されて多数出版されていますが,本書では現在の常識として改訂ポイントをピックアップして記載しているので,最新の知見と改訂ポイントを一読で確認することが可能です.本邦の各種診療ガイドラインにおいて,EAUやNCCNガイドラインのような小まめなアップデートは,現実的には困難です.そのような現状ですが,次の診療ガイドラインが出版される前に,WHO分類のアップデートに伴う知見や海外のエビデンスを基にした知見など,すでに日常診療として実践されていることが多々あります.また,新規治療薬の国内承認が相次ぎ,用法追加承認もしばしば行われています.診療ガイドラインでは追いついていない治療方法についても,本書では新しい常識として取り上げられており,up to dateの診療を患者に提供する際の根拠として利用することが可能です.

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目次

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次号予告

編集後記 大家 基嗣
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 新型コロナウイルス感染症の影響で,読者の皆様も多大なご負担のなかで診療を行っておられると思います.私が奉職する慶應義塾大学病院におきましては院内クラスターの発生に伴い,診療機能を約30%にまで縮小せざるを得ませんでした.現在は徐々に回復させているところです.

 コロナ以前の生活形態には完全に戻すことはできないと皆様の考えは一致していると思います.診療形態にも大きな変化がありました.コロナに対応できる病棟と人員を確保するための構造改革に加え,PPEなどの物資の保有状況の確認,手術患者に対するPCR検査のルーチン化などを当院では行うようになりました.

基本情報

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臨床泌尿器科
74巻8号 (2020年7月)
電子版ISSN:1882-1332 印刷版ISSN:0385-2393 医学書院

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