交見室
前立腺囊胞性疾患についての一考察
勝岡 洋治
1
Yoji Katsuoka
1
1新久喜総合病院泌尿器科・透析科
pp.613
発行日 2020年7月20日
Published Date 2020/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413206982
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筆者は他誌に「血尿・血精液症を主訴とした前立腺小室囊胞の1例」(泌外32 : 1543-1546, 2019)と題した症例報告を投稿した.論文作成の過程で文献検索を行うと,多様な疾患名で報告されていることに当惑した.過去の症例報告を散見すると,「前立腺囊胞の○○例,Müller管囊胞の○○例,前立腺貯留性囊腫の○○例,前立腺囊胞性腺腫の○○例,前立腺小室囊胞の○○例,前立腺正中囊胞の○○例」などがある.これらが明確に鑑別診断されているとは限らない.これには前立腺囊胞の分類化された疾患の間に明確な診断基準がなく,その取り扱いに混同がみられるためと思われる.
Emmetは前立腺囊胞を先天性と後天性に大別し,前者はMüller管やWolff管の退化したもの,後者は貯留性囊腫,囊胞腺腫,前立腺癌に伴うもの,ビルハルツ住血吸虫やエキノコックスによるものに分類している(J Urol 36 : 236-249, 1936).棚橋は発生の相違よりMüller管やWolff管由来のものを先天性前立腺囊胞から除外すべきであると述べている.さらに,前立腺を含む副性器に発症した囊腫の部位別として,正中(前立腺小室囊胞,Müller管囊胞),傍正中(射精管囊胞,精管膨大部囊胞),側方(精囊囊胞,前立腺囊胞)に分類されている(西日泌尿36 : 83-87, 1974).ちなみに,泌尿器科学会用語集(改訂第4版)ではMüller管囊胞を除き,前立腺囊胞を含めそれぞれの囊胞性疾患名の記載はない.
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