病院 76巻9号 (2017年9月)

特集 「生きる」をデザインする病院—医療の再構築に挑戦する

巻頭言 神野 正博
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 日本の社会構造は急速に変わりつつある.それは,少子高齢化,人口減少というこれまで世界で誰も経験したことのない社会である.それに伴って,社会保障ばかりではなく,産業や経済,財政,社会インフラ,雇用などで多くの変革が必要だ.加えて,本特集の高橋論文でも触れられているように,人々の価値観の変化への対応も不可欠となる.

 これまで,われわれ病院は,患者がドアをノックした時から病の治療に関わり,癒えるとともに手を離した.介護保険施設もまた,要介護者からのコンタクトがあった時から関わるのみであった.しかし,高齢者が増えるに従って,入院医療や入所介護の需給バランスは崩れていく.かつ,慢性的な疾患や要介護状態は癒えることはない.人は病や要介護状態と共存したまま,生活の場で「生きる」必要があるのだ.

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●少子高齢社会,人口減,産業構造の変化,そして価値観が変化していく中で,病院はこれまでの常識とは決別しなければならない.

●病院は,患者や地域住民の生命や生存ばかりではなく,生活や人生に関わりを持ち,その全てを統合する戦略を模索しなければならない.

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●超高齢社会において地域の安心を保障するために医療施設の社会化が必要になる.

●病院には自施設が存在する地域の「地域品質」を高めるための貢献が求められる.

●病院が地域包括ケアをデザインするために主体的な役割を担うことが期待される.

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●明治・大正世代,昭和二桁世代,団塊の世代と進むにつれ,「どう老いたい,どう亡くなりたい」という平均的なイメージが劇的に変化し,家族もケアの提供側もその価値観の変化に対応する方向で,今後老い方や死に方が急速に変わるだろう.

●早期のリハビリやハイテク機器の導入や効果的なトイレ誘導を含めた手段を駆使し,死ぬ直前までトイレに行き続けるのが,2025年の老い方の主流になる.

●食べる元気がなくなったら穏やかな死を選択するのが,2025年の亡くなり方の標準になるだろう.

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●ITや金融工学が発展し経済のグローバル化が進む今日,医療の国際展開など海外ではもはや話題にもならなくなっている.ただ問題にされるべきは,さまざまな境涯にある全ての人々に限られた資源を使っていかに効率よく公平な医療を提供できるかなのだ.

●医療と社会は並行して発展していくべきものであり,そこにずれが生じると社会の発展は阻害される.医療に対するニーズは人種や地域,経済力などで異なり,“医療の丸ごと輸出”は必ずしも役に立たない.

●少子高齢化は日本の専売特許ではない.介護人員や財源の不足,ニーズの多様化など日本の直面している諸問題を深く掘り下げ,他国に頼らない解決策を考えることが遅かれ早かれ同じ問題に直面する世界を救うことにつながる.

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●23年前に医療法人の経営を始めた時から,来るべき受難の時代に備えた.

●そのためにはブルーオーシャン戦略をとると決めた.

●イノベーションは想いの実現である.

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●医療の中で最も「デザイン」に適しているのは情報システムであると言っても過言ではない.IoT,AIなどの先端技術が日々登場してくる中で,わが国の医療情報システムはそれらを迅速に柔軟に活用することができているであろうか.

●本稿では,システムデザインの基本を概説するとともに,Precision Medicine,先端技術によるシームレスなケア環境の構築,Learning Healthcare Systemについて紹介する.

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社会と病院,生活と医療の関係は切っても切れない.

医療制度は大変革の時代を迎えたと言われて久しく,医療を受ける人々の意識も変容している.

病院の不易流行を確認しつつ,地域の住民が「生きる」形をデザインする病院のあり方を展望する.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・33

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■はじめに

 今回取り上げる病院は,2007年9月に開院した塩原温泉病院である.この病院は,設計者の選定に当たって,日本医療福祉建築協会の「医療・福祉施設の設計プロポーザル・ガイドライン(2002)」を全面的に準拠して行われたのが記憶に新しい.このガイドラインによって,公平性,透明性が確保された設計者選定となった.

 プロポーザルの結果,伊藤喜三郎建築研究所が選定された.困難な敷地条件の中での建て替え計画であったが,その困難さを感じさせない見事な病院にでき上がっている.開院から10年が経った今回,医療と環境(ハード)の関係を概観し報告する.当院は地域のリハビリテーション機能を担う役割のはっきりした病院であることから,特にリハビリテーションと空間の対応関係などの視点から,病室・病棟計画について報告する.

連載 医療と法の潮流を読む・4

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■医療と介護の連携が不可欠な時代

 医療提供施設に限らず,在宅をはじめ多様な場で生活を送る,医療と介護の双方を必要とする者が多くなってきている.これらの者に対して,誰が,どのように関わって,必要な医療や介護を提供するのかという課題が突きつけられている.

 例えば,痰の吸引という医行為は,本来は医療職によって行われるべき行為である.ところが,家庭・教育・福祉の場において,これを家族が24時間担っており,その負担軽減が問題となっていた.このため,当面のやむを得ない措置として,ヘルパーや養護教諭など家族以外の非医療職が,一定の条件の下で例外的に痰の吸引を実施しているという実態があった注1

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・17

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何が問題だったのか

深刻な医師不足,社会保険病院改革

 2008年6月,北陸のある町の首長が,埼玉県坂戸市にある筆者の大学の研究室を訪問された.首長の名前は野瀬豊氏,同年5月の福井県高浜町の町長選挙に当選したばかりであった.

 福井県高浜町は,福井県の最西端に位置する人口約11,000人の町.ビーチの国際認証である「BLUE FLAG」をアジアで初めて取得した若狭和田ビーチのほか7つの海水浴場があり,夏には多数の観光客が町を訪れる.町では,漁業,農業,観光業に加えて,原子力発電所およびその関連企業に従事する人が多い.

連載 事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・5

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 ななえ新病院(以下,同院)は北海道函館市に隣接する七飯町で,慢性期医療を中心に提供している.町自体は人口2万8千人程度と小規模ではあるものの,函館市のベッドタウンでもあり,2016年には隣接する北斗市に北海道新幹線の新函館北斗駅が開業したことで,人口の流入は増えている.

 同院の特徴は,2003年に国立病院の移譲を受けて開設してから2016年までに,病床転換を5回実施している点にある.これまでに介護療養病床を療養病棟入院基本料2へ,療養病棟入院基本料2を療養病棟入院基本料1へ,15:1入院基本料を地域包括ケア病棟入院料へ,と制度の動向や患者の変化に合わせて病床転換を行ってきた(表1).

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・17

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 前回に引き続いて,福岡県での試みをもとに地域医療構想調整会議の運営例を説明する.使用するデータは前回と同様,福岡県地域医療構想1)および当教室で作成した説明資料である2).なお,紙幅の都合上図表を省略しているので,適宜当教室のホームページ2)で資料を確認されたい.

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要旨

 現在,回復期リハビリ病棟は疾患ごとに入院期間が定められているものの,疾患によっては重症度が大きく異なるが,詳細な分類はされていない.そこで,FIM利得を算出し,回復期リハビリ病棟の適応について検討した.また,歩行自立に至るまでの期間を調査し,回復期リハビリ病棟のあり方について考察した.結果,重症患者は正の相関,その他の患者は負の相関関係を認めた.すなわち,重症患者や軽症患者は改善が得られにくく,病棟機能を鑑みれば,中等症患者が最も適応であることが示唆された.歩行自立に至るまでの期間は,重症患者は平均64日,最長で120日以内に自立し,軽症患者は平均30日,最長で60日に自立していた.入院期間について,脳血管疾患患者の入院料算定上限日数150日もしくは180日は長すぎる可能性が示唆された.以上より,疾患の重症度など詳細に分類し,単価設定することなどで,医療費の適正化が図られるのではないかと考える.

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基本情報

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病院
76巻9号 (2017年9月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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