病院 76巻12号 (2017年12月)

特集 上手に補助金を活用する

巻頭言 伊関 友伸
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 これから到来する本格的な少子高齢社会に対応するため,医療機関は医療提供体制の再構築を求められている.診療報酬が抑制傾向にある中で,行政補助金は政策誘導の効果的な手段となっている.例えば,2009年度の補正予算による「地域医療再生基金」や2014年度より交付が開始されている「地域医療介護総合確保基金」は政策誘導のための補助金の典型である.地方自治体においても,医師不足による地域医療崩壊を契機として,必要な医療を維持するため,民間医療機関に対し補助金を交付する動きが進んでいる.

 手続きの煩雑さもあり,補助金から遠いと考えがちな民間病院であるが,補助金獲得の方法を習得すれば,新たな収入源となる可能性がある.病院関係者が考える以上に補助金交付のメニューは多い.

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●政策実現のための誘導手段として「補助金」は効果を有する.

●地域包括ケア推進における市町村の医療介護に関する行政計画は不十分である.

●地域に貢献している民間病院の財政支援は,地域医療介護総合確保基金の拡充とともに,地方自治体の単独費による補助を拡充することが効果的である.

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●2014年に消費税増収分を財源とする地域医療介護総合確保基金(基金)が創設された.

●基金(医療分)の対象は,病床の機能分化・連携,在宅医療の推進,医療従事者の確保である.施設整備のみならず,医療情報ネットワークシステム,多職種連携などにも活用されている.

●基金の事業計画は都道府県が地域の実情を踏まえて作成する.基金を活用しようとする際には,各医療機関は地元の地域医療構想をきちんと把握し地域のニーズに沿った自院の将来像を描いておきたい.

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●地域医療再生基金は有効であり,医療介護総合確保基金に引き継がれた.

●都道府県と地元大学医学部の連携が進んだ.

●地域医療再生基金を契機に病院再編が進んだ.

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●民間病院に対しても,医療提供体制施設整備交付金や地域医療介護総合確保基金事業など,かなりの公的な補助が行われており,病院財政の安定にはこれらの補助金の活用は重要な課題である.

●公的補助は政策の実現が目的なので,補助金を活用したい民間病院は,政策の動向を注視するとともに,日頃から計画を立てておくなどの準備が求められる.

●補助制度の拡充に向けては,現場視点からの課題や解決策を行政側に伝えて,計画や政策に反映させる努力も必要である.

【行政補助金を受けた事例】

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●神栖市は,平成20(2008)年度,市内の深刻な医師不足に対して,全国的にも珍しい医師確保事業補助金を創設した.

●医師報酬の一部に対して市補助金の交付を受けることにより,経営面において多大な恩恵を受けている.

●医療過疎地域である当地域においては,当該補助金の活用などによる医師確保の取り組みにも限界がある.行政の支援を受けながら病院を再編統合し,医師にとって魅力ある病院をつくることが,医師確保のための最終的な打開策であると考えている.

病院改築と行政補助金 大田 泰正
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●当院が平成28年5月に開業した「新・外来棟」の建築に当たって,「医療施設耐震化整備事業」による補助金を活用した.

●補助金取得に際しては,行政側と根気よく折衝し,進捗管理ができる事務担当者の存在が重要である.

●補助金ありきではなく,将来を見据えた経営方針や中長期ビジョンが求められる.

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●民間病院が病院機能を維持するために,新規事業を展開していくことは重要である.事業開始の決定には,補助金情報が必須である.当法人の2016年度の実際を述べる.

●補助金を獲得するために必要な点として,早期の情報入手,所管部署の明確化,社会貢献のシナリオ,行政担当者と関係構築,職員教育の重要性についてまとめた.

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●補助金獲得までの道程は長かったり,短かったり,精神的につらい業務となることもある.

●しかし,補助金は「生産性がない」といわれがちな事務部門が直接お金を得る方法である.

【資料】

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紙幅の都合により,ここには5つの「柱」(928ページ参照)のうち

「1.地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設又は設備の整備に関する事業(病床の機能分化・連携)」

のみを掲載しています.

上記「1.」に「2.居宅等における医療の提供に関する事業」「4.医療従事者の確保に関する事業」の2つの柱を加えた医科の事業一覧*は,下記のURLまたはQRコードから弊誌特設サイトにてご覧いただけます.

 *歯科・調剤薬局・訪問看護ステーション関係事業を除く

http://www.igaku-shoin.co.jp/prd/byoin7612/

 ID:byoin パスワード:7612

(2017年11月10日現在,厚生労働省HPでは平成29年度分は未公表) (『病院』編集室)

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世界に類を見ない人口減少時代に突入した日本.

労働力も患者も減っていくなかで,医療提供体制はどう変わるのか.

それを議論し,決定する場はどこであるべきか.

前・中医協会長が改革への道筋を提言する.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・36

宮城県立こども病院 厳 爽
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 宮城県立こども病院(以下,こども病院)は,東北地域唯一の小児周産期・高度専門医療機関として,2003年に88床の規模で開院した.「宮城県母子総合医療センター設立推進協議会」を主体とした署名運動やチャリティコンサートの開催などによる一連の働きかけ,医療福祉環境の向上を県政の骨子に掲げた浅野史郎県知事(当時)をはじめとする県の理解の下に実現した悲願のプロジェクトであった.市民が積極的に関わった経緯もあり,敷地内に建設された集会やコンサートのためのホールとボランティアハウスはボランティアの活動拠点として機能し,現在も多くのボランティアが病院の運営を支えている.当初から,県外患児への対応を見据えて,病院のそばに建設された全国第2号のドナルド・マクドナルド・ハウスは現在も県内外の患児のみならず,長期入院患児の外泊先としても重宝されているようである.

 2000年代初頭においては,患者(施設利用者)の療養環境向上は医療福祉建築における大きなテーマの一つであった.このため,この時期に計画・建設された同院も建築計画の工夫による看護単位の小規模化,患児の心理に配慮したインテリアデザインの実現など,患児と家族のための包括的な環境を持ち,優れた療養環境を有することでエポックな病院1〜3)として注目を浴びた.2016年には肢体不自由児のための医療型障害児入所施設「宮城県拓桃医療療育センター」との統合により,新たに「拓桃館」(以下,療育センター)がこども病院の外来駐車場とヘリポートの敷地に増築された(図1,2).

連載 ケースレポート

地域医療構想と民間病院・19

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■はじめに

 平成28(2016)年度中に全ての都道府県で地域医療構想(以下,構想)の策定が終わり,現在,各地域で地域医療構想調整会議(以下,調整会議)が始まっている.調整会議における議論に資する目的で厚生労働省が作成し,各都道府県に配布しているデータブックには人口動態や病床数,傷病構造の現状と将来推計などの基本的な情報が含まれており,ほとんどの都道府県の構想ではこのデータを用いた記載が行われている.この意味で,今回の地域医療構想は,これまでの医療計画などに比較して,より詳細な検討が可能となっている.しかしながら,構想の記述内容には都道府県で大きな差があり,個々の医療機関の今後の経営の在り方を考えるためには,不十分な点も少なからずある.これについては,今後優良事例などを参考に,各都道府県がさらに内容の充実を図っていく必要がある.

 その上で,今後構想およびそれに続く地域医療計画を実効性のあるものにしていくための課題は,記述されている情報をいかに各施設の施設計画に反映させるかであろう.各病院が今後どのような方針で経営を行っていくのかという明確な計画がない状況では,いくら調整会議で議論を行っても,具体的な施策には結びつきにくい.公的病院などが,急性期病床の一部を地域包括ケア病床などに転換し一般病床におけるケアミックス化を行うことに対する民間病院関係者からの反対意見が出され,調整会議で建設的な議論が行いにくい状況もあると聞く.しかしながら,上記のようなケースで民間病院の側から地域医療の在り方について具体的な提案も行われるような例は少ない.こうした状況を改善するためには,公私にかかわらず地域内の病院の全てが今後の経営に関する明確な計画を持つ必要がある.

 フランスでは地域医療計画に基づいて,各施設が当該地方の医療を管轄する地方医療庁(Agence Régionale de Santé:ARS)と複数年計画を締結し,各施設の施設計画と地方医療計画の整合性が図られる仕組みが導入されている1).ここでポイントとなるのが各施設が作成する施設計画である.これは国が提供する各種統計資料をもとに各施設が自施設のある地域の傷病構造を分析し,自施設の今後のサービス提供に関する方針(他施設との連携も含む)とその工程表を数値目標と共に記述するものである.計画に基づいて,各施設はARSと交渉を行い,必要であればその内容を修正した後,契約を結び,その実行状況がARSによってモニタリングされる.こうした枠組みが設定されたことで,各施設のマネジメント能力は向上し,また地域医療計画の実効性も大きく高まっている.また,各施設のこうした取り組みを支援するために,国は全国医療・社会医療機関支援機構(ANAP)を設立し,計画策定のための技術的な支援を行っている.

 今回,わが国においても地域医療構想に関連して公的医療機関等2025プラン(以下,2025プラン)が導入されている.これはフランスの医療計画における施設計画に相当するものである.筆者はこのプランをフランスの施設計画のような強制力の強いものにすることには反対である.しかし,このプランの枠組みを活用して,各施設が自施設の在り方を具体的に考える体制を作ることは,社会保障財政が厳しい今日の状況下で,各施設が適切な経営を行っていくために非常に有用であると考えている.その意味で,今回導入された2025プランの枠組みを用いて,公私にかかわらず全ての病院が自施設の今後の経営方針を検討することが有用であると考える.そこで,これから連載2回にわたって,この2025プランの活用方法について,福岡県の地域医療構想2)を用いながら筆者の私見を述べたい.

連載 医療と法の潮流を読む・7

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 死後の安楽な手続まで阻害しているとすれば,医師法20条を古色蒼然たる遺物と呼びたくなるのも無理はない1),注1

連載 病院勤務者のためのDPCデータ解析入門(番外編)・5【最終回】

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■はじめに

 前回は診療報酬改定時に厚生労働省から送付される「患者別返却データ」を使用したDPC点数のシミュレーション方法について解説した.今回はその続編として,前回行ったシミュレーションの評価視点について解説する.また,今回をもって本連載が最終回となることから,DPCデータの解析の意義についてまとめたい.

連載 多文化社会NIPPONの医療・3

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 2017年に入ってから,沖縄に観光に来た妊娠7カ月の女性が急に破水して800万円を超える医療費が発生した事例や,都内の大学病院で1800万円の未収金となった事例が続けて報道されたこともあり,「今後,外国人患者が増えると未収金が増えるのでは?」という不安を聞く機会が増えた.

 当院に国際診療部が新設された当初,「未収金対策は医事課の責任」という空気があったため,国際診療部のコーディネーターが積極的に関与できない状況であった.医事課も外国人の受診動向をリアルタイムで把握できないことから支払いに問題がある事例への対応が遅れ,結果として未収につながっていた.そして,未払いのまま退院・帰国した外国人に日本語で督促状を送るなど,実効性のない対応も行われていたため,部門を越えて改善のための検討を行い,「より早期に未収リスクをキャッチし,迅速に対応を行う」体制に変更した.まだ試行錯誤の途上であるが,結果として未収金の件数・金額の減少につながった取り組み例を紹介する.

連載 赤ふん坊やの地域ケア最前線!—病院と地域のかかわりを学ぶ旅・[18]

北海道札幌市 佐藤 健太
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 北海道札幌市では,市内の社会経済的困難を多く抱える地域に根差す病院として,院内・多職種を機能強化することを通じて,地域の病院に求められる役割を果たそうと取り組んでいる病院があるんだ! 連載第18回目の今回は,地域への取り組みから後進の育成までを手掛ける,勤医協札幌病院の取り組みを紹介するね! 困難地域の中小病院で,地域に根差す“病院家庭医”として地域と向き合う,佐藤健太先生にお話を聞きました!

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次号予告

「病院」第76巻 総目次

基本情報

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病院
76巻12号 (2017年12月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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