連載 アーキテクチャー×マネジメント・36
宮城県立こども病院
厳 爽
1
1宮城学院女子大学生活科学部生活文化デザイン学科
pp.912-917
発行日 2017年12月1日
Published Date 2017/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210595
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宮城県立こども病院(以下,こども病院)は,東北地域唯一の小児周産期・高度専門医療機関として,2003年に88床の規模で開院した.「宮城県母子総合医療センター設立推進協議会」を主体とした署名運動やチャリティコンサートの開催などによる一連の働きかけ,医療福祉環境の向上を県政の骨子に掲げた浅野史郎県知事(当時)をはじめとする県の理解の下に実現した悲願のプロジェクトであった.市民が積極的に関わった経緯もあり,敷地内に建設された集会やコンサートのためのホールとボランティアハウスはボランティアの活動拠点として機能し,現在も多くのボランティアが病院の運営を支えている.当初から,県外患児への対応を見据えて,病院のそばに建設された全国第2号のドナルド・マクドナルド・ハウスは現在も県内外の患児のみならず,長期入院患児の外泊先としても重宝されているようである.
2000年代初頭においては,患者(施設利用者)の療養環境向上は医療福祉建築における大きなテーマの一つであった.このため,この時期に計画・建設された同院も建築計画の工夫による看護単位の小規模化,患児の心理に配慮したインテリアデザインの実現など,患児と家族のための包括的な環境を持ち,優れた療養環境を有することでエポックな病院1〜3)として注目を浴びた.2016年には肢体不自由児のための医療型障害児入所施設「宮城県拓桃医療療育センター」との統合により,新たに「拓桃館」(以下,療育センター)がこども病院の外来駐車場とヘリポートの敷地に増築された(図1,2).
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