病院 74巻7号 (2015年7月)

特集 地域創生に病院は貢献するか

巻頭言 神野 正博
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 本特集企画の内容が決められた後もこの分野では国の矢継ぎ早の政策決定がなされ,ダイナミックな変化が起こりつつある.国は「地方創生」という言葉を使う.一方,われわれ「地域医療」に携わる医療者は「地域」という言葉になじみがある.本特集では,病院の視点から見るという意味で,敢えて「地域創生」という言葉を使わせていただく.

 医療界では,今年度から構想区域ごとに協議を開始する地域医療構想(ビジョン)策定が関心の中心にある.一方,国は「地方創生」を最重要課題の一つとし,「まち・ひと・しごと創生本部」(地方創生本部)を2014年9月に発足させた.2014年11月には「まち・ひと・しごと創生法」を制定し,各地方自治体においては,2015年度内に「地方人口ビジョン」および「地方版まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定が努力義務とされた.「地方人口ビジョン」および「地方版総合戦略」を策定した自治体には補助金が出るということで自治体の関心は地域医療構想策定より大きいといってもよいかもしれない.

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●「日本再興戦略」では,「2020年までに国民の健康寿命を1歳以上延伸する」などを健康長寿分野の目標として掲げ,医療分野の研究開発司令塔創設などの施策を決定した.

●「日本再興戦略改訂2014」では,医療・介護分野をどう成長市場に変えるか,制度の持続可能性をいかに確保するかなどへの対応策をとりまとめた.これを受けて,地域医療連携推進法人制度創設,公的保険外ヘルスケア産業活性化策などを決定した.

●成長戦略の各施策は,医療機関の経営者が,効率的で質の高い医療提供を行えるよう,他主体との連携や新事業展開促進の規制緩和などを図るものである.

●医療介護サービスの効率化,公的保険外サービス提供主体との協調,医療の国際展開などの担い手として,病院に期待される役割は大きい.

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●医療・介護産業は,今後2030年までに約250万人の就労者の増加が見込まれ,最も雇用増が期待される業種である.

●医療・介護産業の雇用誘発効果,経済波及効果は全産業平均や公共事業の効果を上回る.

●医療・介護産業の社会経済効果について,関係機関が連携・協力して継続的な検証を行い,その成果を国全体で共有することが重要である.

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●日本における医療の国際化の歴史について述べた.以前と異なり,日本からすぐれたものを「与える」という状況ではなくなっている.

●現状での医療の国際化についての日本の病院の状況と政策について述べた.JCI認証取得病院も増加し,国際化が進んでいる.

●地域活性化も含めて今後の方向性と期待について述べた.医療を使って地域を活性化しようという動きが出ている.

[事例]都市再生と医療・病院

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●「メディコ・ポリス構想」は,医師であり医事評論家でもあった故・川上武が,長野県の南佐久を中心に展開された故・若月俊一の実践に触発され,提示したものである.

●佐久総合病院は患者さんや社会のニーズに深く応えることを第一に実践を重ねてきた.それが地域住民や社会からの支持を集め,病院の発展にもつながった.

●地域医療に携わる人材の養成の場として,地域医療部とともに当院の国際保健医療科が果たす役割に期待をかけている.人材を養成し今後も医療活動を通じた地域づくりへの貢献をめざしたい.

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●「日本再興戦略」では,「2020年までに国民の健康寿命を1歳以上延伸する」などを健康長寿分野の目標として掲げ,医療分野の研究開発司令塔創設などの施策を決定した.

●「日本再興戦略改訂2014」では,医療・介護分野をどう成長市場に変えるか,制度の持続可能性をいかに確保するかなどへの対応策をとりまとめた.非営利ホールディングカンパニー型法人制度創設,大学病院の別法人化,公的保険外ヘルスケア産業活性化策などを決定した.

●成長戦略の各施策は,医療機関の経営者が,効率的で質の高い医療提供を行えるよう,他主体との連携や新事業展開促進の規制緩和などを図るものである.

●医療介護サービスの効率化,公的保険外サービス提供主体との協調,医療の国際展開などの担い手として,病院に期待される役割は大きい.

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●健康づくり無関心層への情報提供の構築が重要である.

●従来のヘルスプロモーションの手法のみではなく,まちづくりの視点も必要である.

●健康づくり政策は総合政策であり,パッケージ化が重要である.

●病院関係者はヘルスリテラシー向上に資する情報提供者としての役割が期待される.

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医療をはじめとする社会保障費が増え続ける一方,人口減少により縮小する地方の創生の担い手として医療・介護に期待が集まっている.

「この病院があるから,ここで暮らしたい」と思える

そんな「安心」に支えられたまちづくりの可能性を探る.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・7

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■佐久総合病院の病院再構築計画

 日本の農村医療の草分けとして知られる佐久総合病院は,「いつでも,どこでも,誰でも必要なときに必要な医療サービスが受けられる」ことを目標に医療を行ってきた.故・若月俊一先生が用いた「二足のわらじ」の言葉に表されるように,第一線の医療から専門医療まで包括的に担ってきた.しかし,医療の高度化,専門分化と診療圏拡大化の流れの中で,より広域に従来どおりの医療を提供することは不可能になってきた.そこで,地域の医師会の先生方や他の医療機関の協力を得ながら,地域全体で「二足のわらじ」を履き,医療の提供が滞らないことが今回の再構築の骨子である.

 「病院完結型医療体制」から多施設連携による「地域完結型医療体制」への転換を目指す大きな枠組みの中で,一般医療・地域医療を担う佐久総合病院本院(以下,本院)と高度専門医療・救急医療を担う佐久医療センターに分割するという,前例のない病院再構築計画が立案された(図1).

連載 Data mania・7

国民医療費調査 鈴木 将史
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調査概要

 「国民医療費調査」(以下,本調査)は,全国の医療機関などにおける傷病の治療に要する費用を推計したものです.具体的には,「医療保険制度等による給付,後期高齢者医療制度や公費負担医療制度による給付,これに伴う患者の一部負担などによって支払われた医療費を合算したもの」となります.したがって「保険診療の対象とならない評価療養(先進医療等),選定療養(入院時室料差額分等)及び不妊治療における生殖補助医療」などに要した費用は含みませんし,傷病の治療費に限っているため,「正常な妊娠・分娩に要する費用,健康診断・予防接種等に要する費用,義眼や義肢等の費用」も含みません.

 本調査は,大きく「制度区分別」と「診療種類別」に集計されており,年齢,性別,財源別,傷病分類別にも医療費を比較できるようになっています.なお,本調査は昭和29年に公表されて以来およそ60年の歴史を持つ調査です.

連載 医療の可視化と病院経営・7

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■はじめに

 平成27(2015)年3月に地域医療構想策定ガイドラインが公表され,また6月には構想策定のためのツールを用いた研修会が,都道府県の担当者を対象に国立保健医療科学院で開催された.各都道府県でも医師会を中心に構想策定のための準備が進みつつある.

 今回提供される推計ツールは二次医療圏単位が原則となっている.そのため,二次医療圏をいくつかに分割したり,あるいは二次医療圏の境界を越えて圏域を構想することは,そのままではできない形になっている.そのためいくつかの都道府県からはすでに,そのような状況に対応したツールの提供の要望も出されている.

 ここで問題になるのは,傷病別・病期別に見た患者の受療行動は地域ごとに異なっており,またその対応策も地域ごとに異なってくることである.例えば,福岡・糸島医療圏の場合,東部・西部・中央から南部の3つの地域で患者の受療行動がまとまっているが,東部に隣接する粕屋医療圏の場合,同医療圏北部の住民は福岡・糸島医療圏東部,そして同医療圏南部の住民は福岡・糸島医療圏中央から南部の医療施設を受診することがわかっている.東京都の場合は,DPC病院への入院に代表される急性期医療と療養病床への入院に関して患者の受療行動が全く異なっており,しかもそれは埼玉県・千葉県・神奈川県を巻き込んだ大きな動きになっている.さらに鹿児島県の場合は,回復期・慢性期に関しては各医療圏でおおむね自己完結しているが,急性期入院治療に関しては鹿児島医療圏に集中しているという状況がある.

 こうした住民の受療行動は,施設の偏在によってもたらされている面も否定できず,したがって住民の立場からみた時,機能別の病床の地理的配分はどのようであるべきなのかは当然議論されなければならないであろう.しかし,医療も経済行動である以上,医療提供者側の意思も尊重されなければならないし,またマクロでみたときに配置の効率性も考慮されなければならない.傷病ごと・医療機能ごとに圏域を考えるという方針はすでに第5次医療計画で出されたものであったが,これまでこの問題が都道府県の医療計画で具体的に検討されることはまれであった.少子高齢化の進行,医療技術の進歩,医療に対する国民の意識の変化,経済環境の変化などによって医療をめぐる「ヒト・モノ・カネ」といった資源制約が厳しさを増している今日,改めてこの問題に向き合わざるを得なくなっている.この圏域問題に,今回の地域医療構想にあたってすぐに結論を出すことは不可能であろう.とりあえずは現在の二次医療圏をベースとして構想をたて,平成30(2018)年に予定されている第7次医療計画に向けて必要なデータを体系的に整理していく作業を,今回の構想策定と同時並行で行っていく必要がある.

 連載の7回目である本稿では,現在活用できるデータでどのようなことを検討すべきなのかを,東京都と鹿児島県を例に説明してみたい.

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・4

釜石地域の医療再生 伊関 友伸
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■何が問題だったのか

①地場産業の衰退に伴う病床過剰・医師不足

 岩手県釜石市は,県の南東に位置する自治体である.1857(安政4)年に,大島高任がわが国初めての洋式高炉を建設し,出銑に成功して以来,釜石製鉄所を有する「鉄の町」として栄えてきた.しかし,1960(昭和35)年には8,000人の従業員を抱えた釜石製鉄所も,生産体制の合理化により職員削減が進められ,1989(平成元)年には線材工場のみの280人体制に縮小されることが決定,高炉の全面休止が行われた.釜石製鉄所の事業縮小に合わせて市の人口も減り,国勢調査人口は1960年の87,511人をピークに,2005(平成17)年には4.3万人に減少していた[2015(平成27)年2月の推計人口は35,640人に低下している].

 これまで釜石市では,製鉄で栄えた時代のなごりで県立釜石病院,釜石市民病院のほか,国立釜石病院,民間のせいてつ記念病院の4つの中小規模の病院が医療を提供していた.このため,2004(平成16)年の釜石保健医療圏は,県沿岸部で最も病床過剰(248床過剰)である一方,2002(平成14)年度の人口10万人当たりの医師数は121.1人で,全国平均の195.8人,岩手県平均の170.9人に比べ医師不足が深刻な地域となっていた.

連載 地域医療構想と〈くらし〉のゆくえ・4

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 「地域包括ケア」という言葉を,特に行政サイドから耳にすることが増えてきました.地域医療構想の策定にあたっても,患者さんのニーズに応じた医療提供体制を構築するばかりではなく,地域包括ケアとの連携が不可欠となります.このことについて,行政からの文書には「医療と介護の提供体制を一体的に整備する」とか,「切れ目のないサービス提供を地域で実現する」という文言が並びがちですが,病院で働いていても,どうも漠然としているように感じます.地域包括ケアというものが,一人ひとりの患者さんにおいて,どのような意味をもつのかわかりにくいですね.

 この言葉,一応,法律で定義されています.

連載 病院経営に効く1冊・7

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これからのわが国の医療介護行政は「地域包括ケア」体制の実現を最重要課題として展開されていく.地域包括ケアとは住民の日常生活圏域(おおむね30分で行ける圏域)で医療・介護・予防・生活支援・住のサービスが総合的かつ包括的に受けられる体制である.少子高齢化そして人口が減少する社会でこれを実現する作業は,地域のリノベーションを要求する.高齢化という現実を考えれば,このリノベーションは医療・介護の視点を持つことが不可欠であり,それゆえに地域包括ケア体制の実現の可否がその地域の今後30年の在り方に大きく影響すると言ってよいだろう.平成27(2015)年度から策定が始まっている地域医療構想もこの大きな流れの中で動いているということを医療関係者は理解する必要がある.

 地域包括ケア体制の構築の基本的な枠組みを作ってきたのが厚生労働省老健局長の私的勉強会である「地域包括ケア研究会(座長:田中滋・慶應義塾大学名誉教授)」である.そして,行政側でこのビジョン策定に長く,そして深く関わってきたのが本書の著者である宮島俊彦・前厚生労働省老健局長(現内閣官房社会保障改革担当室長)である.本書では地域包括ケアの考え方について構想策定の責任者としての立場から包括的に論じられており,そしてその内容はまさに今,実現に移されつつあるものである.特に,第2章の一体改革の構図の内容は重要である.例えば,医療計画についてはその役割を「供給目標の設定と連携体制の確保」とした上で,それを実現するための都道府県のデータ分析能力向上の必要性や医療計画に記載された内容を実現するための「医療・介護・住宅整備ファンド」の設立が提言されている.これはまさに現在,地域医療介護総合確保基金として具体化されているものである.

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要旨

 厚生労働省は「特定行為に係る看護師の研修制度」に至るまで看護師特定行為・業務試行事業を実施した.本事業に参加した大学院修了の看護師(以下,研修生)に注目しOn the Job Trainingの実態やニーズを明らかにした.全国の研修生の研修実態や希望,および態度・能力の到達度に関する自記式質問紙の郵送調査を行った.回収数25部(有効回答率59.5%)で,プライマリケア(Pr)領域12名,クリティカルケア(Cr)領域13名であった.研修期間の希望は2年間が60.0%の最多であった.研修診療科は,Pr領域の経験診療科は呼吸器内科33.3%,循環器内科33.3%,総合診療部25.0%で,希望はこれら3診療科が66.7%で,Cr領域では経験および希望診療科とも救急部84.6%であった.研修方法の経験は,回診に同行100%,希望は処置・手術に同行88.0%,症例フィードバック72.0%であった.2年間の期間で,医師に同行かつフィードバックし,医師の目線からの判断や対応を学びたいというニーズが強く示された.

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基本情報

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病院
74巻7号 (2015年7月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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