連載 事例から探る地域医療再生のカギ・4
釜石地域の医療再生
伊関 友伸
1
1城西大学経営学部マネジメント総合学科
pp.518-523
発行日 2015年7月1日
Published Date 2015/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209892
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■何が問題だったのか
①地場産業の衰退に伴う病床過剰・医師不足
岩手県釜石市は,県の南東に位置する自治体である.1857(安政4)年に,大島高任がわが国初めての洋式高炉を建設し,出銑に成功して以来,釜石製鉄所を有する「鉄の町」として栄えてきた.しかし,1960(昭和35)年には8,000人の従業員を抱えた釜石製鉄所も,生産体制の合理化により職員削減が進められ,1989(平成元)年には線材工場のみの280人体制に縮小されることが決定,高炉の全面休止が行われた.釜石製鉄所の事業縮小に合わせて市の人口も減り,国勢調査人口は1960年の87,511人をピークに,2005(平成17)年には4.3万人に減少していた[2015(平成27)年2月の推計人口は35,640人に低下している].
これまで釜石市では,製鉄で栄えた時代のなごりで県立釜石病院,釜石市民病院のほか,国立釜石病院,民間のせいてつ記念病院の4つの中小規模の病院が医療を提供していた.このため,2004(平成16)年の釜石保健医療圏は,県沿岸部で最も病床過剰(248床過剰)である一方,2002(平成14)年度の人口10万人当たりの医師数は121.1人で,全国平均の195.8人,岩手県平均の170.9人に比べ医師不足が深刻な地域となっていた.
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