診断と治療 113巻7号 (2025年7月発行)

選択した文献の文献概要を表示する書誌情報をダウンロードする

すべて選択

特集　日常診療で出会う成人先天性心疾患（ACHD）のみかた

ねらい阿古　潤哉 113巻7号 , 2025年7月 , pp.777-777

PDF(135KB)

フリーアクセス

文献概要を表示

　近年，先天性心疾患を有したまま青年期に達した状態を「成人先天性心疾患（adult congenital heart disease：ACHD）」とよぶようになってきました．手術療法をはじめとする医療の飛躍的な進歩により，多くの先天性心疾患患者が成人に達することが可能となり，その数は年々増加しています．心房中隔欠損症や心室中隔欠損症といった比較的単純な疾患にとどまらず，複雑な心奇形を有する患者も成人期を迎えることが一般的となり，わが国におけるACHD患者の数は50万人を超えると推定されています．

扉 113巻7号 , 2025年7月 , pp.781-781

PDF(113KB)

フリーアクセス

文献概要を表示

先天性心疾患を有したまま青年期に達した状態を「成人先天性心疾患（ACHD）」とよびます

医療の飛躍的な進歩により急増しているACHD患者に出会ったときのために遭遇頻度が高い疾患や合併病態の知識ACHD診療特有の問題点やフォローアップなどこれからの日常診療で役立つ知識を解説します

ACHD総論

成人先天性心疾患（ACHD）とは赤木　禎治 113巻7号 , 2025年7月 , pp.782-786

PDF(416KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・国内の成人先天性心疾患（ACHD）患者数はすでに50万人を超え，今後も1万人/年の増加が見込まれる．

・小児期から成人期へのスムーズな移行医療が進む診療体制の確立が急務であり，循環器内科医の関与が重要である．

・診療体制の充実と維持にはACHDを専門とする医師の養成が必要である．

・ACHDを扱う施設では，多領域にわたるチーム医療体制の確立が必要である．

日常診療で出会うACHD

必ずしも単純でない単純性ACHD 石津　智子 113巻7号 , 2025年7月 , pp.787-791

PDF(988KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・単純な構造異常の先天性心疾患であっても，成人期の予後は良好ではない．

・心房中隔欠損症（ASD）は無症状であっても欠損孔閉鎖が強く推奨されている．

・カテーテル心房中隔欠損閉鎖術が地域格差なく受けられるよう制度改定が進んでいる．

・できるだけ早期（無症状）の段階で，専門医と連携した診療方針決定が望ましい．

成人期に初めて診断され得るACHD―ACHDを疑うコツ― 小板橋　俊美 113巻7号 , 2025年7月 , pp.793-797

PDF(356KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・小児期を無症状で経過し，成人期に診断され得る先天性心疾患がある．

・先天性心疾患では治療方針と予後が大きく異なり，診断意義は大きい．

・先天性心疾患は，心不全，不整脈，感染性心内膜炎，肺高血圧の原因となる．

・先天性心疾患は，構造的心疾患（SHD）であり，構造異常に介入することができる．

・何らかの説明できない異常に遭遇したときには，先天性心疾患を鑑別にあげる．

フォローアップされていないACHDに遭遇したら藤田　鉄平 113巻7号 , 2025年7月 , pp.799-802

PDF(354KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・近年，先天性心疾患の多くの方が成人期まで到達してきている．

・60%近くの成人先天性心疾患（ACHD）患者が専門科のフォローアップを受けていない．

・一般内科医もしくはACHD非専門の循環器内科医がACHDの初診を対応することが予想される．

・ACHDの初診では，定期的な外来受診の重要性を伝え，専門施設との連携を行いながらフォローアップしていくことが大切である．

遭遇頻度の高いACHD

大動脈二尖弁品田　慶太郎 113巻7号 , 2025年7月 , pp.803-808

PDF(1458KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・大動脈二尖弁は新生児の1%程度に認められ，遺伝子異常や他の先天性心疾患を合併するケースがある．

・分類については諸説あるが，Sievers分類が広く用いられており，二尖が癒合し縫線を伴う形態が最も多い．

・大動脈三尖弁に比して若年で大動脈弁閉鎖不全症や大動脈弁狭窄症を合併する．

・様々な程度の大動脈拡張を引き起こすため，心エコーのみならずCTなどでの大動脈病変のフォローが重要である

心房中隔欠損症（ASD）髙谷　陽一 113巻7号 , 2025年7月 , pp.809-812

PDF(1507KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・心房中隔欠損症は，成人期に初めて診断されることが多い．

・成人期の心房中隔欠損症は，心房細動，弁膜症，肺高血圧症などを併発する．

・心房中隔欠損症は，右室容量負荷があればカテーテル閉鎖術の適応となる．

心室中隔欠損症（VSD）新居　正基 113巻7号 , 2025年7月 , pp.813-817

PDF(1937KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・心室中隔欠損（VSD）は2023年度におけるわが国の小児期発生心疾患実態調査でも先天性心疾患の40%を占め，日常診療で遭遇する可能性の高い疾患である．

・VSDの病型分類は少し複雑であり，それぞれに応じて合併症も異なってくることから，それらを理解したうえで外来診療にあたることが求められる．

・重篤な合併症をきたした症例を診察した場合には，適切なタイミングで専門施設との連携を取ることが必要となる．

動脈管開存症―成人期の未修復PDAについて― 齋藤　広大 , 杜　徳尚 113巻7号 , 2025年7月 , pp.819-822

PDF(892KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・動脈管開存症（PDA）とは，通常は出生後に生理的閉鎖する動脈管が，開存したまま遺残した状態である．

・PDAの多くは新生児期～小児期に治療が行われるが，成人期に見つかることも少なくない．近年では高齢化や診断技術の進歩により一般内科医が遭遇する機会が増えている．

・成人期の未修復PDAは長期間の容量負荷により，心不全や心房細動といった合併症状が起こり得る．また治療に際しては，形態的特徴を十分に加味する必要がある．

Fallot四徴症術後郡山　恵子 113巻7号 , 2025年7月 , pp.823-829

PDF(1584KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・Fallot四徴（TOF）は胎生期に漏斗部中隔が前方偏位することで生じる一連の形態異常により，低肺血流性のチアノーゼの病態を呈する疾患である．

・TOFの心内修復術はシャントの修復と右室流出路狭窄の解除である．右室流出路形成に使われることの多い一弁付きパッチや三尖付き導管の耐久性は約10年程度とされ，肺動脈弁逆流（PR）や狭窄を生じる．

・経胸壁心エコー図検査ではPR，右室流出路狭窄の評価は心拡大，収縮能の経時的な変化を評価する．

・心エコー図での右心の描出には限界があるため，心臓MRI（CMR）の評価が重要である．

・成人期の再介入は，CMRや心エコー図，カテーテル検査，心肺運動負荷試験など，多角的，かつ経時変化を加味した評価で至適時期を考慮する．

実地医家に必要なACHDの合併病態の知識

感染性心内膜炎天野　雅史 113巻7号 , 2025年7月 , pp.831-835

PDF(3217KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・成人先天性心疾患（ACHD）症例では，感染性心内膜炎（IE）の発症・重症化のリスク分類を念頭において，適切な診断・重症化前の早期治療を行えるように心がける必要がある．

・IEの発症を基礎疾患別にみると，心室中隔欠損症（VSD）における発症頻度が最も高く，未修復で経過をみることも事前情報がないこともあるため注意が必要である．

・IEの早期診断・治療も重要であるが，ACHD症例では外科治療がより複雑で困難さを増すため，歯科メンテナンスや予防措置，重度アトピー性皮膚炎の治療といった日頃からの患者教育も非常に大切である．

心不全坂本　一郎 113巻7号 , 2025年7月 , pp.836-838

PDF(267KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・成人先天性心疾患（ACHD）に伴う心不全は右心不全が主体になることが多く，診断が難しい．

・ACHDの心不全治療として，外科的治療やカテーテルインターベンションなどが可能でないかを考えることは重要である．

・ACHDの心不全薬物療法を考えるとき，体心室の駆出率で考えるのが妥当と考えられる．

・Fontan術後の心不全では高心拍出性心不全になることがある．

・今後，ACHD患者の心不全緩和医療も重要になってくる．

実地医科に必要なACHDの合併病態の知識

不整脈宮﨑　文 113巻7号 , 2025年7月 , pp.839-843

PDF(360KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・成人先天性心疾患（ACHD）患者の不整脈と血行動態異常は密接に関与しており，循環動態を念頭において，不整脈治療を行う．

・ACHD患者の心房性頻拍（心房内リエントリー性頻拍，心房細動）は，リズムコントロール（心房調律維持）を目指す．

・ACHDにおける上室頻拍の抗不整脈薬だけでの心房調律維持は困難で，副作用として徐脈や陰性変力作用があることから，積極的にカテーテルアブレーションを考慮する．

・心機能低下例，中等度以上の複雑先天性心疾患例に対する陰性変力作用の強いI群薬やカルシウム拮抗薬はガイドライン上推奨Class IIIである．

・ACHDにおける直接経口抗凝固薬（DOAC）の有効性・安全性はいまだ明らかでない．そのためDOACの使用は慎重であるべきである．

ACHD診療に特有の問題点

妊娠・分娩―プレコンセプション・ケア― 神谷　千津子 113巻7号 , 2025年7月 , pp.845-848

PDF(314KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・妊娠による循環血漿量や心拍数の増加，凝固能の亢進などを背景に，心疾患合併妊娠では母児リスクが高まる．そのため，先天性心疾患をもつ女性のプレコンセプション・ケアは重要で，10歳代から妊娠についての情報提供が好ましい．

・先天性心疾患をもつ女性の妊娠リスクについては，学会ガイドラインを参照し，modified WHO分類やZAHARAスコア，運動耐容能検査などを用いて評価する．

・遺伝性疾患をもつ女性のプレコンセプション・カウンセリングにおいては，パートナーも含めた遺伝カウンセリングをあわせて行うことが勧められる．

小児科から成人循環器科への移行―問題点と方向性― 平田　陽一郎 113巻7号 , 2025年7月 , pp.849-852

PDF(346KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・成人移行支援とは，小児期発症の慢性疾患をもつ患者が成人期を迎えるにあたり，本来のもてる能力や機能を最大限に発揮でき，その人らしい生活を送れることを目的とした支援のことであり，医療の範囲だけにとどまらない包括的，持続的なプロセスである．

・これまで様々な提言，ガイドライン，医療政策などが発表・施行されてきたが，患者の増加に伴ってそれらの体制は必ずしも十分とはいえない．

・今後，実地医家の前にも，先天性心疾患をもつ成人患者の受診は増加していくことが予想され，地域での「身近で頼れる総合診療医」としての役割が期待される．

ACHD治療と仕事/社会生活の両立支援における医療者の役割武藤　剛 113巻7号 , 2025年7月 , pp.853-859

PDF(580KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・成人先天性心疾患（ACHD）治療と仕事の両立支援は，これから就職する学生や，就職後に手術等での入退院を要するいずれの患者にもニーズがある．

・職場が求める主治医意見書とは，現在の心機能の観点から安全に出勤し業務を遂行できるかどうか，夜勤・残業・出張・運転機械操作・重量物・暑熱環境などの個別作業の可否・要配慮（時間や作業強度内容の制限）事項を主治医が述べるものである．

・職場産業医は，就労可否や作業内容について主治医意見書を踏まえて本人や職場環境の状況から意見を述べ，最終的に事業者がそれを決定する．

・復職時のプログラムは，リハビリ出勤や時短勤務による段階的なプログラムを用意する企業が増えている．法定障害者雇用率上昇もACHDを有しながら働く患者の両立支援に追い風である．

ACHDの専門的治療の最新知識

経皮的治療の進歩―SHDとしてのACHD― 新家　俊郎 , 藤井　隆成 113巻7号 , 2025年7月 , pp.861-865

PDF(3239KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Headline

・構造的心疾患（SHD）インターベンションの対象の1つが成人先天性心疾患（ACHD）である．

・二次孔欠損型心房中隔欠損症（ASD）は，カテーテル閉鎖術が推奨される．

・成人例の動脈管開存症（PDA）は，カテーテル治療が第一選択となる．

・Fallot四徴症の遠隔期合併症である肺動脈弁逆流に対するカテーテル治療が可能となった．

連載　何だろ？　ちょっとエコーに聞いてみる？

発熱と倦怠感，原因は？畠　二郎 113巻7号 , 2025年7月 , pp.761-764

PDF(2824KB)

有料閲覧

文献概要を表示

症例

患者：89歳男性．

1週間前から発熱と倦怠感が出現，近医で感冒として加療を受けるが改善傾向に乏しく当院受診．体温は38.4℃，身体所見上腹部に特記すべき異常は認めない．血液生化学検査では好中球増多とCRP高値がみられた．右肋間走査による超音波像を示す．

連載　弁護士が答えます！　法律相談クリニック

Q　院外で急病者に遭遇して救命措置を行ったら報酬を請求できる？笠間　哲史 113巻7号 , 2025年7月 , pp.866-867

PDF(484KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Q　道端で心肺停止（CPA）に遭遇して蘇生行為をした場合，蘇生行為に要した費用は請求できますか？

カラー口絵

カラー口絵 113巻7号 , 2025年7月 , pp.765-776

PDF(5100KB)

有料閲覧

文献概要を表示

本誌本文中にモノクロ掲載した図表のうち，カラーで掲示すべきものを並べた．

（「必ずしも単純でない単純性ACHD」p.789　図2参照）

（「大動脈二尖弁」p.804　図1参照）

（「心房中隔欠損症（ASD）」p.810　図1参照）

（「心房中隔欠損症（ASD）」p.811　図2参照）

（「心室中隔欠損症（VSD）」p.814　図1参照）

（「心室中隔欠損症（VSD）」p.816　図2参照）

（「心室中隔欠損症（VSD）」p.816　図3参照）

（「心室中隔欠損症（VSD）」p.817　図4参照）

（「動脈管開存症―成人期の未修復PDA について―」p.821　図2参照）

（「Fallot四徴症術後」p.825　図3参照）

（「感染性心内膜炎」p.832　図1参照）

（「感染性心内膜炎」p.833　図2参照）

（「感染性心内膜炎」p.834　図3参照）

（「経皮的治療の進歩―SHDとしてのACHD―」p.862　図1参照）

（「経皮的治療の進歩―SHDとしてのACHD―」p.863　図2参照）

（「経皮的治療の進歩―SHDとしてのACHD―」p.864　図3参照）

--------------------

目次 113巻7号 , 2025年7月 , pp.778-779

PDF(245KB)

フリーアクセス

本号掲載広告一覧 113巻7号 , 2025年7月 , pp.791-791

PDF(71KB)

フリーアクセス

おしらせ 113巻7号 , 2025年7月 , pp.843-843

PDF(246KB)

フリーアクセス

おしらせ 113巻7号 , 2025年7月 , pp.860-860

PDF(281KB)

フリーアクセス

バックナンバー一覧 113巻7号 , 2025年7月 , pp.870-870

PDF(165KB)

フリーアクセス

投稿規定 113巻7号 , 2025年7月 , pp.871-871

PDF(159KB)

フリーアクセス

次号予告・奥付 113巻7号 , 2025年7月 , pp.872-872

PDF(174KB)

フリーアクセス

基本情報

診断と治療
113巻7号
(2025年7月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0370-999X 診断と治療社

お気に入り登録(雑誌)
お気に入り登録(号)
最新号をみる

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング(
10月27日～11月2日
)

第1位目次診断と治療 113巻 10号 pp. 1120-1121 (2025年10月1日) 診断と治療社
第2位 5　薬剤感受性試験の読みかた上原由紀診断と治療 111巻 13号 pp. 23-27 (2023年3月23日) 診断と治療社
第3位投稿規定診断と治療 113巻 10号 pp. 1231-1231 (2025年10月1日) 診断と治療社
第4位おしらせ診断と治療 113巻 10号 pp. 1139-1139 (2025年10月1日) 診断と治療社
第5位急性肝不全とACLF 持田智診断と治療 111巻 1号 pp. 87-92 (2023年1月1日) 診断と治療社
第6位薬剤熱藤井元輝,大澤良介診断と治療 111巻 8号 pp. 1105-1109 (2023年8月1日) 診断と治療社
第7位肺高血圧症石井俊輔診断と治療 112巻 7号 pp. 845-849 (2024年7月1日) 診断と治療社
第8位おしらせ診断と治療 113巻 10号 pp. 1221-1221 (2025年10月1日) 診断と治療社
第9位食物アレルギー　新生児･乳児食物蛋白誘発胃腸症山田佳之診断と治療 109巻 7号 pp. 935-940 (2021年7月1日) 診断と治療社
第10位痛風・偽痛風岩澤三康診断と治療 111巻 6号 pp. 805-809 (2023年6月1日) 診断と治療社

投稿規定

診断と治療 113巻7号 (2025年7月発行)

特集 日常診療で出会う成人先天性心疾患（ACHD）のみかた

ACHD総論

日常診療で出会うACHD

遭遇頻度の高いACHD

実地医家に必要なACHDの合併病態の知識

実地医科に必要なACHDの合併病態の知識

ACHD診療に特有の問題点

ACHDの専門的治療の最新知識

連載 何だろ？ ちょっとエコーに聞いてみる？

連載 弁護士が答えます！ 法律相談クリニック

カラー口絵

--------------------

基本情報

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング( 10月27日～11月2日)

特集　日常診療で出会う成人先天性心疾患（ACHD）のみかた

連載　何だろ？　ちょっとエコーに聞いてみる？

連載　弁護士が答えます！　法律相談クリニック

文献閲覧数ランキング(
10月27日～11月2日
)