検査と技術 49巻7号 (2021年7月)

病気のはなし

悪性中皮腫 草苅 宏有
  • 文献概要を表示

Point

●悪性中皮腫におけるアスベスト曝露から発症までの潜伏期間は30〜40年といわれ,発症のピークは2025年頃と考えられている.

●動物実験や次世代シーケンサーによる網羅的検索により発癌メカニズムが少しずつ解明されてきた.

●病理診断では抗BAP1抗体とFISH法によるp16の欠失検索が注目されている.

●早期発見が難しく,予後不良な疾患である.

技術講座 生化学

シリーズ 臨床化学の基礎をなす方法と原理・2

  • 文献概要を表示

Point

●分光比色分析を測定原理とする定量分析法では,特定波長の光を用いて目的とする光の成分の溶液への吸収量から成分濃度を求める.

●終点分析法と初速度分析法では定量演算に用いる反応様式の違いから,反応試薬に求められる条件も異なる.

●それぞれの検査項目に用いられている分析法の特徴・特性を十分に理解して使用することが,信頼あるデータを臨床に返すうえで重要である.

技術講座 微生物

  • 文献概要を表示

Point

●目的に合わせて無染色や他の染色を組み合わせることで効率的に病原微生物の同定につなげることができます.

●無染色での微生物の動きを観察することで有用な情報を得ることができます.

●微生物検査での知識の他,標本上の細胞成分などの背景を観察することでより有用な情報を得ることができます.

  • 文献概要を表示

Point

●薬剤耐性菌を効率的に検出することが,耐性菌スクリーニング培地の目的である.

●患者背景や菌性状を確認することで,耐性菌スクリーニング培地の有用性はより向上する.

●重要なことは使用目的の明確化および耐性菌スクリーニング培地の特性の把握である.

技術講座 生理

  • 文献概要を表示

Point

●子どもを緊張させない環境づくりが必要である.

●各疾患の診断に必要な解剖の知識がある.

●複雑な構造はさまざまな断面から評価する.

●外科手術との関連で心エコーを評価する.

トピックス

  • 文献概要を表示

はじめに

 医薬品は,ターゲット探索,ヒット探索,ヒットtoリード,リード最適化,前臨床,臨床試験という多くの段階を経て研究・開発されているが,全体の成功率はわずか数%程度といわれ,非常に長い年月とコスト(開発期間10年以上,費用1,000億円以上)を要する.そのため,文献情報・オミクス情報からの標的タンパク質予測,タンパク質の立体構造予測,ヒット化合物のスクリーニング,リード化学構造の自動生成・合成経路予測,薬剤の体内への吸収・分布・代謝・排泄(absorption,distribution,metabolism,excretion:ADME)の予測,副作用予測,治験における意思決定支援など,さまざまな創薬AI技術が世界中で開発されている.これらのAIは,いずれも実際の実験や試験を行う前に予測を行うことで失敗確率を減らすことが主目的であり,実験や試験の手数を減らすことで開発の費用と期間を劇的に抑制できるものと期待されている.

  • 文献概要を表示

はじめに

 エコーによる下肢動脈の灌流状態評価は,大腿動脈および膝窩動脈の血流波形分類1)と,AT(acceleration time)120ms未満が基準範囲の目安として臨床応用されており,測定部の中枢側に存在する閉塞性病変を推定することができる.しかし,足首部主幹動脈(後脛骨動脈および前脛骨動脈)の血流波形を同様の手法により詳細に解析しても,下腿動脈の灌流状態を評価することは困難である.そこで提唱されたのが,TVF(ransit time of vessel flow)である2)

  • 文献概要を表示

はじめに

 臨床検査技師学校養成所指定規則(以下,指定規則)は2000年以来,科目承認校関連法規は1987年以来33年の長きにわたって大きな見直しが行われてこなかったが,2020年4月厚生労働省(以下,厚労省)臨床検査技師学校養成所カリキュラム等改善検討会から報告書が発出された1).本報告書に基づき,臨床検査技師教育が今後どのように変わるかを解説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響で,会議や研修会は対面からオンラインへと,パラダイムシフトが急速に起こりました.メディアやインターネットではさまざまなアプリが紹介され,新しい日常へと浸透しましたが,オンラインミーティングに対して日本では根強い抵抗があるのも事実です.

 そこで,初心者でも始められるWeb会議・研修会の開催方法から,問題点・注意点について,実際に導入した経験をもとに,できるだけわかりやすく解説いたします.

Laboratory Practice 〈精度管理〉

  • 文献概要を表示

はじめに

 臨床検査部門の業務において,同一項目の異なる試薬または異なる機器での測定値間の統計解析(相関・回帰,一致度)を行う機会は多い.特に,試薬や機器の変更・更新に際して新旧測定値の互換性・継続性を評価するうえで必須となる.ここで,測定値間の関係式を検討する場合,独立変数と従属変数を区別する通常の最小二乗法による回帰分析を使用するのは,回帰式に変数交換性がなく,適切ではない.したがって,いずれも誤差を伴う測定値間の関係式を求める場合,両変数が交換可能な回帰分析法を用いるべきである.その方法としては,parametric法とnon-parametric法があり,それぞれ,Deming法1,2)とPassing-Bablok(P-B)法2,3)が代表的な方法である.さらに,相関・回帰だけでなく,測定値の一致が望まれるような場合には一致度の検討も必要となり,この場合は主にBland-Altman(B-A)法4,5)が用いられる.

 Deming法は,対応する測定値それぞれに正規分布する一定の誤差項を仮定する方法で,さらに重み付きDeming法では誤差項が一定でなく比例的であると仮定する方法である.P-B法は,分布を仮定せず散布図上の全ての2点間の傾きの平均を求める方法である.P-B法は,例数が比較的少ない場合への適用や外れ値の影響を受けにくいなどの特長がある.B-A法は,対応する測定値間の平均と差の関係をプロットする方法である.

 これらの方法を実行する場合,専用のプログラムを用いる必要があるが,一般的な統計ソフトには含まれていないので,実施できていない施設も多いと思われる.そこで,統計分析フリーソフトR(https://cran.r-project.org/)を利用することを提案する.Rにはここで紹介した方法を実行するためのパッケージが全てそろっている.R環境の設定やパッケージのインストール方法はよく知られているので説明を省略する(文末の補足を参照)が,現在Windows版の最新バージョンとして,R 4.0が入手できる.データファイルは,全て1行目が項目名となるCSVファイルを用いることを前提とする.

過去問deセルフチェック!

血管内皮機能検査
  • 文献概要を表示

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説
  • 文献概要を表示

 血管内皮細胞の機能(血管内皮機能)として,血流依存性血管拡張反応(flow-mediated dilation:FMD)があります.FMDは,血流によって血管内皮にずり応力(shear stress)が生じ,内皮細胞から血管拡張作用を有する一酸化窒素(NO)が分泌され,血管が拡張する反応です.FMDによる血管拡張を測定することで,早期の動脈硬化性変化とされる内皮機能障害を評価できます.

 上腕動脈を対象とする超音波機器を用いたFMD検査(図1)の手順は,①安静時に収縮期血圧を計測し(観察側と対側の上腕で計測),観察対象となる上腕動脈血管径を超音波で計測する(観察側の上肢と超音波探触子の位置はずれないよう固定しておく),②検査側の前腕もしくは上腕を5分間駆血し血流を遮断する(駆血圧は安静時収縮期血圧の+30〜+50mmHgにする),③駆血を解除し,解除後の血管径を2〜3分間程度観察する(血流増大によりFMDの作用で血管が拡張する),④最大血管拡張時の血管径を計測し,安静時血管径と比較した血管拡張率(%FMD)を算出する,となります.

疾患と検査値の推移

肺結核 永井 英明
  • 文献概要を表示

Point

●わが国は結核“中まん延国”であり,胸部X線写真に異常陰影を認める患者では喀痰の抗酸菌培養検査を日にちを変えて必ず3回行うべきである.

●検体から結核菌を検出することが確定診断に必要であり,非結核性抗酸菌との鑑別が重要である.

●結核菌が培養で得られた場合,薬剤感受性検査を必ず行う.塗抹検査,同定検査,薬剤感受性検査の結果は,それぞれ,1日,10〜14日以内,15〜30日以内に臨床現場に報告すべきである.

●現在では結核感染の有無を調べる検査は,ツベルクリン反応ではなく,インターフェロンγ遊離試験(IGRA)である.

臨床検査のピットフォール

  • 文献概要を表示

はじめに

 生検による術前の病理診断が不可能な中枢神経病変において,脱髄性疾患や感染症などの非腫瘍性(炎症性)病変と腫瘍との鑑別を含めた術中迅速病理診断は極めて重要である.しかし,豊富な細胞外基質(マトリックス)と水分を含む神経組織では,凍結時の氷の結晶形成による人工変化(アーチファクト)が強く表れやすく,個々の細胞形態も含めてその組織構造の詳細な観察が困難なことが多い.一方,圧挫標本および捺印標本による細胞診標本では,細胞個々の核所見はもとより,細胞質形態ならびに組織構築を反映した細胞の出現パターンが保持されるため,凍結標本の補助として極めて重要な情報を提供してくれる.

 このような理由から中枢神経病変における術中診断に際し,細胞診標本の併用は不可欠であるが,サンプリングを含めた検体の取り扱い,圧挫標本作製時の圧の加え方などによっては観察不能な不適切な標本となってしまう.本稿では,臨床情報から推定される病変に応じた標本作製法の適応とそのポイントを概説する.

  • 文献概要を表示

尿中白血球検査の意義1〜3)

 尿中白血球の測定は,腎・泌尿器系の炎症の診断に重要な指標となる.尿中に出現する白血球のほとんどは好中球であり,その主要な原因は尿路感染症である.膀胱炎,腎盂腎炎,前立腺炎では多数の好中球が尿中に出現する.好中球以外では,慢性尿路感染症や糸球体腎炎,抗癌剤治療中では単球,間質性腎炎やアレルギー性膀胱炎では好酸球,腎移植による拒絶反応やリンパ管尿管瘻ではリンパ球が出現する4〜6)

 一方,尿白血球試験紙は尿路感染症のスクリーニング検査として,尿中亜硝酸塩検査と併せて用いられている.白血球試験紙法は尿中白血球のもつエステラーゼ活性により,基質よりインドキシルやフェニルピロールを生成させ,ジアゾカップリング反応でジアゾ色素にすることで呈色させている(図1).好中球は強いエステラーゼ活性をもつが,単球は弱く,好酸球とリンパ球は活性をもたない.また,尿試験紙は原理上,多くの偽陽性,偽陰性要因をもつことに注意が必要である.

Q&A 読者質問箱

  • 文献概要を表示

Q “IMT-C10”の臨床的意義を教えてください.

A 頸動脈の内中膜厚(intima-media thickness:IMT)については,従来はmax IMTとmean IMTの両者を計測していましたが,「超音波による頸動脈病変の標準的評価法2017」1)では,max IMTは総頸動脈,頸動脈洞,内頸動脈の3カ所で評価することになりました.また,mean IMTの計測方法が一部変更され,10mm内の多点計測が基準となり,手動計測よりもtrace法での計測が提案されました.さらに,定点計測としてIMT-C10が新たに追加されました.

ワンポイントアドバイス

  • 文献概要を表示

はじめに

 各種血液疾患の診断では,骨髄塗沫標本の観察が重要であるが,同じく形態学的な検索法でありながら,これまで骨髄生検標本にはあまり関心が注がれてこなかった.しかし,骨髄生検標本からは,骨髄塗沫標本からは得られないさまざまな情報がもたらされる.

連載 帰ってきた やなさん。・21

1コマ入魂! 柳田 絵美衣
  • 文献概要を表示

 「学生,誰も反応してくれない(涙)」と同僚(50代,男性)がうな垂れていた.そう,同僚と私は検査の某学校で病理学の講義を担当することになり,同僚は第1回目の講義を担当した.病理検査学ではなく,病理学(総論&各論)だ.臨床検査技師が教えるにはハードル高くない?……と思う.まぁ,私は,“がんゲノム”や“感覚器”など,休日に好きな項目(全体の1/3ほど)だけ担当するのですがね(すまん,同僚,あとは頼んだ).「新しい先生で学生も緊張してるんやろ」と励ましておいた.落ちこぼれだった柳田が,学校で講義を担当しているなんて……母校の先生方が知ったら,ひっくり返って驚くだろうな,マジで(柳田はこんなに大きくなりましたよ,先生方!).

 第2回の講義は私が担当.とりあえず自己紹介.「病理学を担当する柳田です」(学生無反応)「学生時代,落ちこぼれで国家試験は合格できないだろうと言われていました.こんな私でも合格できたので,絶対に最後まで諦めないでほしい!」と,熱すぎる気持ちを語る通常運転の私(学生無反応).「検査技師になって,患者さんや社会のために頑張りましょう!」と,これまた熱すぎる気持ちを語る私(学生無反応).……わ,若者の心をつかむって難しい(涙).「……はい,では染色体の異常について講義します」とヨボヨボしながら教科書を開いた.その瞬間,ザザッ,ペラペラ!っと一斉に教科書を開く音が.「ヒトの染色体は46本あって……」と話し始めると,教室中にカリカリカリ!とノートに書きこむ音が一斉にする.その音と姿勢に圧倒される私.なんだ,この張り詰めた緊張感と学問への積極的な前向き圧力! くっ,いかん,この圧力に負けそうだ!(汗)

ラボクイズ

一般検査 小堀 祐太朗

6月号の解答と解説 溝口 義浩

--------------------

目次

『臨床検査』7月号のお知らせ

あとがき・次号予告 谷口 智也
  • 文献概要を表示

 ちょうど1年前の4月にもこの“あとがき”を書いていました.本当にこの1年間はコロナに翻弄され,落ち着かない日々が続いたことと思います.現在全国各地で「まん延防止等重点措置」が適用され,さらに,4都府県に3度目の「緊急事態宣言」が出されました.しかし,昨年と違い,少しずつではありますがワクチン接種も行われ,さらに新薬の研究開発も進んでいるようです.まだまだ油断はできませんが,それでも少しずつ“withコロナ/afterコロナ,postコロナ”における新しいライフスタイルや働き方が見えてきたように思います.そして1年前よりも確実に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について多くのことがわかってきました.私たちは,今回得た知識と経験を忘れてはいけません.

 学校では,昨年中止となった入学式も今年は行うことができ,そして何より対面授業が一部再開されました.まだオンラインや動画の授業と併用ではありますが,期待と不安をもって入学してきた学生たちを前に,あらためて対面の大切さを実感しています.一方,教育現場では“リモート授業”という新しい武器を得ることもできました.慣れない撮影や資料作成に,YouTuberの人たちの大変さがわかりました.本号のフォーカスでは,「How toオンラインミーティング Web会議・研修会の導入と今後」を掲載しています.ぜひ,参考にしていただければと思います.

基本情報

03012611.49.7.jpg
検査と技術
49巻7号 (2021年7月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月7日~6月13日
)