臨床検査のピットフォール
適切な圧挫標本作製できていますか?
松本 慎二
1
1福岡大学病院病理部病理診断科
pp.824-827
発行日 2021年7月1日
Published Date 2021/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208446
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はじめに
生検による術前の病理診断が不可能な中枢神経病変において,脱髄性疾患や感染症などの非腫瘍性(炎症性)病変と腫瘍との鑑別を含めた術中迅速病理診断は極めて重要である.しかし,豊富な細胞外基質(マトリックス)と水分を含む神経組織では,凍結時の氷の結晶形成による人工変化(アーチファクト)が強く表れやすく,個々の細胞形態も含めてその組織構造の詳細な観察が困難なことが多い.一方,圧挫標本および捺印標本による細胞診標本では,細胞個々の核所見はもとより,細胞質形態ならびに組織構築を反映した細胞の出現パターンが保持されるため,凍結標本の補助として極めて重要な情報を提供してくれる.
このような理由から中枢神経病変における術中診断に際し,細胞診標本の併用は不可欠であるが,サンプリングを含めた検体の取り扱い,圧挫標本作製時の圧の加え方などによっては観察不能な不適切な標本となってしまう.本稿では,臨床情報から推定される病変に応じた標本作製法の適応とそのポイントを概説する.
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