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はじめに
腎臓には糸球体,近位尿細管,ヘンレ(Henle)のループ,遠位尿細管,集合管から構成される最小機能単位であるネフロンが約100万個存在し,複雑に配置されている.さらには間質,脈管,神経など多種多様な構成要素が三次元的に秩序だって成り立ち,おのおのが互いに協調することで,血液からの老廃物や余分な水分を濾過し,尿として排泄している.また,腎臓は内分泌臓器でもあり,エリスロポエチンやビタミンDなどのホルモン調節により体内の恒常性を維持している.腎臓のそれら機能が失われ末期腎不全に至った場合,機能代替のため一生涯の透析治療が生命を維持していくうえで必要となる.透析治療から離脱するには,移植治療が唯一の方法であるが,移植臓器不足は深刻で,現行の治療法だけでは限界を迎えている.そのため“再生医療”に大きな期待が寄せられている.自己の細胞からもう一度新たな腎臓を再構築することが可能となれば,透析・移植治療に代わる真に究極の治療法となる.
人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)はその発見以後,再生医療の重要なツールとなっている.iPS細胞は体細胞から人工的に作られた多能性幹細胞であり,体内の種々の細胞・組織に分化する能力を有している.iPS細胞から網膜色素上皮シート,心筋シートなどが作製可能となっており,次々とこれらの組織再生による臨床応用が実施・計画される一方で,腎臓領域における臨床応用はあらゆる臓器のなかで最も遅れをとっている.これはひとえに,腎臓の形態学的・機能的複雑性による.単一組織のみの再生とは異なり,複雑な形態・機能をもった腎臓を再生することは非常に至難の業であると考えられている.このようななか,近年になって腎臓再生に有用な方法がいくつか報告されてきている.本稿では,①組織工学を用いた方法,②幹細胞(iPS細胞など)を用いた方法に大別して概説したいと思う.
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