臨床医からの質問に答える
ST合剤のMIC値の見方・考え方を教えてください.
藤田 崇宏
1
1北海道がんセンター感染症内科
pp.54-57
発行日 2018年1月1日
Published Date 2018/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207041
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MIC値は“読んで”はいけない
最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)値について,臨床医から問い合わせがきた場合は要注意である.なぜならMIC値についてほとんどの臨床医は正しく理解していないからである.臨床医が最も理解していないことは何か? それは“自分がMIC値を見てもほとんど意味がない”ということである.
臨床医は微生物検査結果をなんのために見ているだろうか.ほとんどの臨床医はこう答えるだろう.“抗菌薬を選びたいから”と.微生物検査の結果をもって抗菌薬選択を考える行為自体には問題はない.問題があるのは,検査結果に載っているMIC値を見て抗菌薬を選ぼうとすることである.多くの医師は最低限の知識として“MIC値は微生物の発育を抑制する最小限の濃度である”ということは理解している.しかし,多くの医師はMIC値の測定方法,およびその解釈についてはきちんと教わったことがないため,その最低限の知識を元にして“発育を阻止できる最低限の濃度なので,その濃度が低いほうが効果が高い”という勝手な論理展開をしている.そのため,微生物検査の報告にずらっと並んでいるMIC値を眺めて,“同じ感性(susceptible:S)ならば,一番低い数値を示している薬剤が当該の微生物に対して最も効果のある薬剤である”と考えて抗菌薬を選ぶこともあるのだ!
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