検査と技術 28巻2号 (2000年2月)

病気のはなし

  • 文献概要を表示

新しい知見

 クリプトスポリジウム症は激しい下痢を主徴とする原虫性疾患で,1999年4月から「全数届出感染症」に指定された.また,エイズ診断の指標疾患でもある.免疫不全患者では重症で致死的な感染を起こす.水道水による集団感染が日本を含む世界各地で発生し,大きな問題になっている.治療法はまだ確立されていない.診断には糞便検査でオーシストを検出すればよいが,通常の原虫・虫卵検査法では検出できない.ショ糖遠心沈殿浮遊法,簡易迅速ショ糖浮遊法,抗酸染色法などが必須である.最近,直接蛍光抗体法用の試薬キットも市販されており,体外診断薬として認可されれば,検査室での利用価値は高い.

技術講座 微生物

Acinetobacter属菌の検査法 田中 美智男
  • 文献概要を表示

新しい知見

 細菌遺伝子配列の解明などの分類学の進歩により,Acinetobacter属菌の菌種名は大きく変更された.比較的最近までAcinetobacter calcoaceticusがAcinetobacter属菌の主要臨床分離菌種として知られていたが,現在の分類ではA. calcoaceticusは基準株(typestrain)を含めて土壌由来である数株が確認されているだけである.臨床材料から分離されたA. Calcoaceticusと呼ばれていたもののほとんどはAcinetobacterbaumanniiであり,同定検査に際しては現在の分類を十分に理解する必要がある.

技術講座 生化学

  • 文献概要を表示

新しい知見

 血糖自己測定(self-monitoring blood glucose;SMBG)は,糖尿病患者自身が血糖を測定して,自分の糖尿病のコントロール状態を把握し,医師の指導のもとに自己管理していく重要な手段である.その結果,患者自身は,①血糖値をよくするために何をすればよいかが具体的にわかる,②低血糖に気づいたり予防ができる,③自己管理への自信が生まれ,行動範囲が広がる,④合併症の進展を防ぐことかでき,糖尿病とともに生きていく勇気を持つことができる,などの効果が得られる.

 SMBGを行うにあたって,適切な簡易血糖自己測定器が必要で,患者が正しく使用し,精度よく測定値が維持されるよう指導にかかわっていくことが臨床検査技師の重要な仕事となっている.現在,血糖自己測定器は9社から機能性,操作性に優れた測定器が販売されている.

検査データを考える

血小板減少 倉田 義之
  • 文献概要を表示

はじめに

 血小板は止血に重要な役割を果たしている細胞である.血小板数が極度に低下すると出血傾向を示すようになる.最近では感冒などで病院・医院を受診しても血液検査を受けることが多い.その際には血小板数も同時に測定されていることが多い.そのため出血などの症状は認めないが,血液検査で血小板減少を指摘されたとして来院する症例も多くなってきている.

臨床検査に必要な統計処理法・2

  • 文献概要を表示

はじめに

 直線性は,定量分析法における測定範囲全域の正確さを保証するための重要な特性である.本特性は,分析法の開発時や新規導入時などに頻繁に検討されるが,従来広く行われてきた評価法の中には,客観性に欠け,不適切といわざるをえない方法も多い.ここでは,統計学的にもその妥当性が認められるNCCLSが提示する試験法1)を紹介し,その中で具体的には明記されていない実践上重要な留意点を含めて解説する.

日常染色法ガイダンス 生体色素の日常染色法—胆汁および胆汁色素の染色法

スタイン法 栁田 美樹 , 芳賀 美子
  • 文献概要を表示

目的

 本染色法は胆汁色素を染め出す染色法である.

 胆汁色素(bile pigment)は血色素由来の色素(hematogenous pigment)であり,ヘモグロビンのヘム(heme)の異化による黄褐色の胆赤素(bilirubin,ビリルビン)と胆赤素を酸化してできた緑褐色の胆緑素(biliverdin,ビリベルジン)がある.それらは細胞内または間質に沈着する.

絵で見る免疫学 基礎編・2

  • 文献概要を表示

 感染部位で好中球やマクロファージの貪食から逃れた病原菌と,これを捕捉したマクロファージは近傍のリンパ節(lymph node)に入る(図1-①).

ラボクイズ

問題:平衡機能検査【2】

1月号の解答と解説

オピニオン

OKHOTSKのトドより 吉野 一敬
  • 文献概要を表示

 私はこれまで北海道の片隈で30年あまり病院の検査技師として仕事をしてきました.パソコンに触ってずいぶん経ちますが,インターネットに手を染めたのはここ数年のことで題名の“OKHOTSKのトド”というのはインターネット上での私のハンドル名です.私がホームページを作ろうと思った理由の1つに,臨床衛生検査技師学会の論文のことがあります.私は地方学会を含め北見病院に赴任する12年ほど前までは毎回学会に演題を出していました.しかし,それらの演題は単に抄録集という1冊の本になって埃をかぶっています.私のように長く検査技師をやっていますと,過去に発表された演題が過去の演題よりもたいして掘り下げないで発表されているのをよく見かけますが,これは過去の演題が発表者によく伝わっていないのが一因と考えます.また,学会に発表された論文は,どんなよいものであってもその場限りのものになってしまう可能性があります.他の学会論文発表においても同じようなことがいえると思いますが,これらの論文を有効に使うために,関連文献や過去の発表を調べることは容易なことではありません.そこで少し手間がかかるかもしれませんが,これだけインターネットが発達した今,学会論文などをジャンル別に分け,どこかのサーバー上にあげることで,発表者が自分の発表することに対して過去の発表や論文の検索システムができないかと思っています.

けんさアラカルト

  • 文献概要を表示

 米国総医療費は,1965年に老年者および低所得貧困者に対する公的医療保険制度であるメディケア/メディケイドプログラムが樹立されて以来,増加の一途をたどってきた.米国総医療費は指数関数的に増加し,1996年には1兆ドルを超え,GDPの13.6%を占めるに至った.米国医療総支出の膨張に大きく貢献した因子として,この制度に採用されていた出来高払い医療費償還制度(fee-for-service reimbursementsystem)が挙げられる.

 連邦政府は医療費増大抑制策として,1983年にdiagnosis-related groups(DRG)/prospective payment system(PPS)をメディケア入院患者に適用し,診断グループ別に診療費定額支払いシステムを導入した.460余りの診断グループ別に,あらかじめ決められた一本化した一定額しか1入院に対して償還しないこの定額支払いシステム下では,過剰医療は医療機関の損出に直結するため,やればやるほど収益の上がる出来高払い制度下の医療行為と対照的に,不必要な医療行為,コスト削減への強力な動機づけを持っていた.

Laboratory Practice 血液 骨髄塗抹標本の見かた

骨髄穿刺液の処理 西村 敏治
  • 文献概要を表示

はじめに

 骨髄検査は血液疾患の鑑別,種々の血液疾患に対する治療効果の判定,再発の有無の確認など造血の動態を知る最も有用な検査である.また,悪性リンパ腫や癌などの骨髄転移の有無,あるいは血液疾患のrule out時にも検索される.

 骨髄穿刺液は主に血液細胞学的検索と病理組織学的検索が行われる.細胞構成,異常細胞の有無,細胞の形態的変化について各々観察し,的確な病態把握のためにこれらの多くの所見から診断および治療効果が評価される.また,疾患によっては細胞表面マーカー,染色体,遺伝子検査などが行われる(図1).本稿では血液細胞学的検索と病理組織学的検索について概説する.

Laboratory Practice 生化学 精査と治療に生かす検査データ

血清CK上昇と急性心筋梗塞 金光 房江
  • 文献概要を表示

はじめに―急性心筋梗塞の病態と原因

 急性心筋梗塞は冠動脈の閉塞あるいは狭窄によりその血流域の心筋が壊死に陥った状態をいう.本症の原因として最も多いのは冠動脈硬化に基づく冠血栓である.冠動脈の粥状硬化による閉塞,あるいは狭窄,硬化のある動脈の内膜下出血,解離性大動脈瘤,梅毒性大動脈炎などによっても起こる.

トピックス

  • 文献概要を表示

はじめに

 腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor;TNF)αなどの炎症性サイトカインは,異物の進入による炎症や腫瘍局所の監視機構において,生体防御因子として重要な役割を果たしている1,2).しかし,この反応が過剰に発現すると,逆にいくつかの病態を引き起こす可能性が指摘されている.

 本稿では,血清TNFα活性の測定法およびその臨床的意義について概説する.

  • 文献概要を表示

はじめに

 血液凝固第II因子(プロトロンビン)は,第VII,IX,およびX因子とともにビタミンK依存性の血液凝固因子で,肝細胞で合成されている.しかし,ビタミンKの欠乏状態,ビタミンK拮抗阻害剤(ワーファリンなど)の投与時,そして肝実質細胞傷害などの際には,プロトロンビン前駆体の10個前後のグルタミン酸残基がγ-カルボキシグルタミン酸に転換されず,凝固能を持たない異常プロトロンビンが産生される.これがPIVKA-II(protein induced by vitamin K absenceor antagonist II)である.

 PIVKA-IIは従来,新生児出血症やビタミンK欠乏時の凝固障害を知る指標として測定されてきた.しかし,1984年にLiebmanら1)は肝細胞癌患者血漿中に高率にPIVKA-IIを検出し,肝細胞癌のマーカーとして有用であることを示した.わが国でも,本原ら2)がモノクローナル抗体を作製して,PIVKA-IIを特異的に検出する測定法を開発する一方,藤山ら3),Okudaら4)が腫瘍マーカーとしての臨床的意義を明らかにした.

今月の表紙

  • 文献概要を表示

症例:内科,46歳,女性

診断:慢性糸球体腎炎(IgA腎症)

検査じょうほう室 一般:一般検査のミステリー

紫色尿バッグ症候群 今井 宣子
  • 文献概要を表示

はじめに

 尿の色は患者自身が最も早くその異常に気づくことが多く,またそれが発端となって重要な疾患が見つかることも少なくない.尿の外観観察はどんなに医学が進歩・発達しても,いまなお重要な所見の1つであることに違いはない.今回は尿そのものではなく,その尿を入れている尿バッグが密かに教えてくれる重要な医療情報について話をしよう.

検査じょうほう室 輸血:輸血検査と血液型の謎

  • 文献概要を表示

はじめに

 ABO血液型は,A,O,B,AB型の4とおりに大別され,それぞれに抗原活性の異なる亜型あるいは変種と呼ばれる血液型が存在する.これを英語ではvariation(多様性)を語源とするvariantと呼び,血球,血清,唾液の性状から分類されている.A型にはAint,A2,A3,Ax,Am,Ael,Ah,Amh型,B型にはB3,Bx,Bm,Bel,Bh,Bmh型などが知られているが,以前はB型のVariantsは欧米ではあまり報告例がなく未整理であった.それゆえ,B型のvariantsの多いわが国では,A型のvariantsにanalogousなものをそれになぞらえて命名してきた経緯がある.

 表1はわが国で検出されたABO variantsを山口の分類1)に従って整理したもので,これを輸血時の適合血液の確保の点からH抗原を持つものと持たないものに分けることができる.

  • 文献概要を表示

 癌化学療法を行っている場合の心筋障害の評価につきまして,①心電図上の変化,②心エコーの指標となる心機能評価の計測法(できれば計測点も)をご教示ください.

  • 文献概要を表示

 便の抗酸菌培養は0.1%アクリフラビン液を加えて混和遠心後の沈渣を用いて,小川培地で実施していますが,このアクリフラビン液は何の作用をしているのでしょうか.また,便の抗酸菌染色は上記の沈渣で行うのでしょうか.

基本情報

03012611.28.2.jpg
検査と技術
28巻2号 (2000年2月)
電子版ISSN:1882-1375 印刷版ISSN:0301-2611 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月21日~9月27日
)