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MINOCAの概念と診断
急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI)の診療に関して,医療体制の整備に伴い,多くの医療機関で迅速な冠動脈造影検査(coronary angiography:CAG)および冠動脈インターベンション治療(percutaneous coronary intervention:PCI)が施行可能となり,その治療成績は著明に向上している.一方で,緊急CAGを施行した症例のなかには,閉塞血管を有する心筋梗塞(myocardial infarction with coronary artery disease:MI-CAD)のみならず,冠動脈閉塞を伴わない心筋梗塞症例に遭遇する場面もまれではない.
John F. Beltrame氏が2012年に,CAGで心外膜冠動脈に50%以上の有意狭窄病変を有さない急性心筋梗塞をMINOCA(myocardial infarction with non-obstructive coronary arteries)と呼称することを提唱し,現在その存在が広く認知されている.MINOCAは,①心筋トロポニン値上昇や胸痛などの症状・心電図・心エコー所見などからなるUniversal Definitionの心筋梗塞の基準を満たすこと,②冠動脈造影で50%以上の有意狭窄がないこと,③臨床的に明白な冠動脈疾患以外の病態を除外すること,の3つの基準により診断される1-3).MINOCAは1つの疾患単位ではなく,さまざまな基礎病態が共通の臨床像を呈する症候群である.MINOCAの診断後には,以下に示すようなMINOCAに至るさまざまな疾患を鑑別に挙げて生理学検査・画像検査などを行い,その原疾患を特定し治療方針を決定していく(図1)1-3).

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