Neurological Surgery 脳神経外科 44巻7号 (2016年7月)

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 四方を海に囲まれ,諸外国と地政学的に隔絶されたわが国では,行政や教育をはじめすべてが原則として日本語という単一言語のみによって行われてきたが,近年,global languageはいかにあるべきかという観点から大きな変革が起こりつつある.脳神経外科の分野においても,急速な意識改革の必要性が叫ばれて既に久しい.われわれ脳神経外科医は,英語literacyについてはそれぞれがかなりの能力を有していることは間違いないが,果たして,聞く,話すという面ではどうであろうか.

 そのような中で,日本脳神経外科学会が他の学会に先んじて行ってきた事業の1つに日本脳神経外科学会英語同時通訳団の設立があり,若い同時通訳者養成のため毎年夏に研修会が開かれ,今年は第30回を迎える.植村研一,小林茂昭両名誉教授をはじめとした類いまれな英語能力をもつ先達の指導下に多くの実力者が関わり,わが国の医学諸学会の中で異彩を放っている.海外からの研究者と誰でも自由に討論ができるというmeritは実に大きい.

総説

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Ⅰ.はじめに

 2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定し,スポーツ医学が活況を呈してきている中,脳損傷はスポーツにおける外傷のうち最も重要視されている事柄の1つである.本稿では,この分野の専門医として脳神経外科医に対する社会的な要求が高まる中で,再確認したい最近の話題を提供したい.

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Ⅰ.はじめに

 1970年代に開発されたスノーボードは1990年代に爆発的ブームとなり,1998年には長野冬季オリンピックで正式種目になった.しかし,その後2002年をピークにスノーボード人口は減少し,スキー人口の減少も相まって,スキー場の経営は厳しい現状を迎えている16)

 スノーボード人口の減少に伴って,当院(齋藤記念病院)に搬送されるスノーボード頭部外傷例も減少している.しかし,スノーボード外傷に伴う急性硬膜下血腫(acute subdural hematoma:ASDH)の発生がなくなったわけではない.今回われわれは,当院に搬送されたスノーボード頭部外傷によるASDH症例をまとめ臨床的に検討し,文献的考察を行った.

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Ⅰ.はじめに

 2014年1月,本邦で脳神経領域の動脈塞栓術においてエンボスフィア®(日本化薬,東京)の使用が保険適用となった.ゼラチンでコーティングされたアクリル系共重合体からなる非吸水性マイクロスフィアで,今後塞栓物質の中心的な役割を担うと考えられている.当施設では巨大な髄膜腫の摘出術前に塞栓術を実施しており,今回,エンボスフィア®を用いた塞栓術後の初期成績について検討したため報告する.

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Ⅰ.緒  言

 頚動脈ステント留置術(carotid artery stenting:CAS)において,不安定プラークが想定される場合や高度狭窄例では,バルーン付きガイディングカテーテルを用いたproximal balloon protection(PBP)法が安全とされている1-3,7).しかしながら,上肢からのアプローチやtypeⅢ大動脈弓の症例ではバルーン付きガイディングカテーテルを誘導できず,distal protectionで行うか,CASは断念せざるを得ない.そこでわれわれは,6Frガイディングシースでも実施可能な信頼度の高いprotection法を編み出した.この方法はやや手技が煩雑となるが,より低侵襲かつ安全にCASが行えるようになったので紹介する.

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Ⅰ.はじめに

 破裂脳動脈瘤の治療において,塞栓術は直達手術に比べて機能予後良好であることがInternational Subarachnoid Aneurysm Trial(ISAT)やBarrow Ruptured Aneurysm Trial(BRAT)にて示され7,9),塞栓術が選択される症例が増加している.塞栓術の合併症として,動脈瘤穿孔や血栓塞栓症,血管損傷,コイルの母血管への突出などがある.瘤内塞栓術中に離脱したコイルが母血管へ突出してしまうことはしばしば経験される合併症であるが5,8,15),術後遅発性に母血管へのコイル突出を来した症例の報告は少ない.今回われわれは,破裂脳動脈瘤の塞栓術後,遅発性に瘤内より母血管へコイルが突出してきた2症例を経験した.術後のコイル突出の機序,対処法について文献的考察を加えて報告する.

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Ⅰ.はじめに

 くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)で発症した解離性椎骨動脈瘤(vertebral artery dissecting aneurysm:VADA)は発症早期,特に24時間以内に再破裂を起こす頻度が高く6,7),迅速かつ確実な予防治療が求められる.近年,直達手術に代わってより低侵襲な血管内治療が主たる治療戦略の1つとなりつつある.ただし,解離部に後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery:PICA)を含むPICA involved typeの症例では血行再建が必要になるため,その治療選択は未だ暫定的である.VAから分岐する重要な血管として前脊髄動脈(anterior spinal artery:ASA)がよく知られており,今回われわれはASAを解離部に含む極めて稀な症例を経験した.われわれが渉猟し得る限り初めての報告であり,文献的考察を加えて報告する.

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Ⅰ.はじめに

 本邦において頭痛のみで発症した頭蓋内解離性動脈瘤は,山浦らの報告によると,全体の7%であり20),自然改善例も多く,一般に予後は良好とされている7)

 一方,頚部内頚動脈解離も若年者脳卒中の原因の1つであるが1),本邦では発生頻度が低く,多発解離であったとする症例の多くが線維筋性形成異常症(fibromuscular dysplasia:FMD)と診断されている9,14,18).厚生労働省特定疾患研究班による診断の手引きによれば,FMDの診断には脳血管撮影ないし病理学的検討のいずれかが必要であり,脳血管撮影での念珠状変化は典型的所見とされる.診断はこの所見が得られれば確定となる.

 今回われわれは,頭痛発症の椎骨動脈解離が短期間でくも膜下出血を来し,さらには経過中に両側頭蓋外内頚動脈と健側椎骨動脈の3血管に念珠状変化が明らかとなり,上記の診断基準からFMDの診断に至った症例を経験した.画像所見やFMDと解離の関連を中心に報告する.

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Ⅰ.はじめに

 内頚動脈狭窄症(internal carotid stenosis:ICS)の外科的血行再建術〔頚動脈内膜剝離術(carotid endarterectomy:CEA)もしくは頚動脈ステント留置術(carotid artery stenting:CAS)〕では,高い安全性が求められる3,17).ICSに対するrandomized clinical trialsでは,心筋梗塞(myocardial infarction:MI)や死亡がendpointとして含まれていることも多く2,5,6,9,14,22,24),ICS患者の治療では心臓合併症にも留意する必要がある13)

 MIを含む急性冠症候群の28%は冠動脈に責任病変が認められず,そのうちの49%は冠攣縮が原因とされる19).冠攣縮はMIや重症不整脈の原因となり,非心臓手術の周術期にも起こり得る11,12,16,26).しかし,術前に予測できるまでには至っていない.

 今回,CEA術前の精査で異常を指摘できず,全身麻酔導入を契機に完全房室ブロックから心停止となり,後日冠攣縮と診断した1例を経験した.

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Ⅰ.はじめに

 頭蓋骨陥没骨折は頭蓋骨骨折の1形態で,古典的には小さなインパクターが高速で衝突した際に生じるとされ,通常は頭蓋骨の外板と内板に同時に骨折を生じる.また,頭蓋骨の内板を含む骨折は硬膜損傷や静脈洞損傷のリスクがあり,臨床上重要である.今回われわれは頭蓋骨内板のみの骨折を呈した1症例を経験した.症例は保存的加療のみで後遺症もなく良好な転機を得た.小児のping-pong ball型陥没骨折のように頭蓋骨に弾性がある場合には外板が骨折に至らない形態もあるが,成人における内板のみの陥没骨折は稀であり,その機序は不明である.今回われわれの経験した頭蓋骨内板のみの頭蓋骨陥没骨折の症例およびその力学的背景について,人体シミュレーションモデルを用いた文献を基に考察したので報告する.

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●作法は初心者のうちに学ぶべし

 今どきの〈愛想の良い本〉ではない.〈臨床研究をなぜやるか,どうやるか,ロジックは,統計処理は〉などを1cmの厚さにまとめてある.

 論文を10本書いた人が本書を開けば,自分の研究計画が杜撰だったとか,もっと理を詰めるべきだったなど思い至ることもあるかもしれぬ.しかし,多少でも研究の道を歩いてきたなら,自分の流儀が出来上がっていて,いまさらイチから習う気にはならぬもの.下手なゴルフを20年続けてきたのに,30回のレッスンを受けるために駅前のスクールに通う人は少ない.

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Ⅰ.はじめに

 中枢神経原発悪性リンパ腫(primary central nervous system lymphoma:PCNSL)は節外性リンパ腫の1つであり,近年,特に高齢者において発生頻度が増加しているといわれている.PCNSLと一般臓器に発生したリンパ腫が二次性に頭蓋内に進展(転移)したものとは鑑別可能であるが,治療に関しては,中枢神経系に進展している場合,他臓器のリンパ腫の治療だけでは有効でないことが多い.大量メトトレキサート(high-dose methotrexate:HD-MTX)療法がPCNSLのスタンダードな治療となってから10年以上経過し,治療成績が多くの施設から報告されているが,5年生存率はまだ高くないといわざるを得ない.本稿では,PCNSLの最新の報告をまとめる.

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欧文目次

「読者からの手紙」募集

お知らせ

略語および度量衡単位について

次号予告

編集後記 宮本 享
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 本号も力のこもった多くの原稿をいただいた.谷諭先生のスポーツ関連脳損傷に関する総説は,最近の話題が箇条書きのように非常に読みやすい文体で書かれており,各章の要旨がone phraseでまとめられている.読者にとって非常に有益な総説であり,ぜひご一読いただきたい.この総説に続いて小山論文「スノーボードによる急性硬膜下血腫」が掲載されており,ちょうどよいタイミングでの掲載となった.その他,エンボスフィア®を用いた腫瘍塞栓術に関する下田論文(研究)をはじめ,テクニカルノート,症例報告においては血管内治療や脳血管障害に関する論文が多く掲載されている.本邦の脳卒中医療は脳神経外科医によるcontributionが大きく,脳神経外科手術で最も比率が高いのは脳血管障害であるため,脳血管障害に関する症例報告が多いのも当然であろうと思われる.

 症例報告は貴重な症例の経験を読者と共有するという意義のほかに,ビギナー筆者にとって論文投稿の登竜門としての意味合いがある.現在の日本脳神経外科学会専門医認定制度では,peer reviewのある医学誌への筆頭著者としての論文掲載が受験資格となっている.学会機関誌のNeurologia medico-chirurgicaが英文であることを考えると,和文である本誌は若手脳神経外科医が専門医を目指すうえでも,症例報告を投稿する際の第一候補になり得ると思われるので,本誌にはその面においても発展を期待したい.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
44巻7号 (2016年7月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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