Neurological Surgery 脳神経外科 29巻4号 (2001年4月)

雑感 原 充弘
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 長年住み慣れた東京を後に,2000年4月から母校の大阪市立大学脳神経外科学教室に就職することになった.大阪で生まれて大阪で教育を受け,インターン闘争の余波で6年間東京の病院で卒後教育を受け,その後私立医科大学に就職し,診療・学会活動・研究・教育に携わってきた.帰阪前は,もともと大阪育ちと自負していたので,なんら自分自身赴任に対して違和感はないと思っていた.しかし就任後,大学病院のある天王寺地区周辺はこうも関東と風習・文化が異なるのかと,改めて奇異に感じる昨今だ.

 まず,地下鉄では乗り降りが整然とせず,降りる前に乗る人が入ってくる.エスカレーターの追い越し側が東京と反対である.間違って追い越し側に立っていると、後ろからせかされる.きちんと行儀良く列車の座席に座らない客が多い.地下鉄ホーム内で禁煙を無視した喫煙客のなんと多いことか! タクシーに乗ってわかったことは割り込み,車線変更に勇気がいることである.とても自分は大阪,とくに天王寺地区での運転は無理だと思い,断念してしまった.規則に縛られることに抵抗があり,せっかちな人が多いためだろうか?

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I.はじめに

 ヒト成人脳における神経幹細胞の発見により1,2,13,19,20,24,27),神経系の発達,正常脳の維持機構(cell turn over),神経系の各種疾患に対する認識,および神経機能回復を目標とした新治療法の開発戦略は,今後,相当変化すると予想される.特に,ヒト神経幹細胞の抽出・培養が可能となったことで,神経幹細胞が脳機能再建における新たな治療法開発のbreak throughになることは,今や世界中の科学者,医師,患者が期待するところである.

 過去数十年にわたり,中枢神経系疾患による機能障害に対する新治療法の開発を目的として,多くの神経移植研究が行われてきた.神経組織の移植による治療は,パーキンソン病において臨床的にも有用であることは周知の事実であるが,近年では,細胞レベル(ヒト由来の神経系細胞を含む)での移植が各種神経疾患の機能回復に有効であることが実験的に認められ,細胞移植療法(a cell therapy)は中枢神経系疾患に対する治療戦略の一つとして有望と考えられ始めている1,2,13,14,15,18,19,20,24,25,42,46)

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I.はじめに

 内頸動脈閉塞および中大脳動脈閉塞例に対する浅側頭動脈‐中大脳動脈(superficial temporal artery-middle cerebral artery, STA-MCA)吻合術は,1985年のEC-IC bypass study17)で脳虚血によるstrokeを防止できなかったと報告され,われわれ脳神経外科医にとって不本意な結果であった.しかし,EC-IC bypass studyではbypass手術を行った群で周術期にmajor strokeを4.5%も起こしていたことがその後のbypass群の予後評価に重大な影響を及ぼし,strokeの予防に内科治療群と比較して有意な差が出なかったと考えられる.さらに,脳血流の評価による患者の選択がされていなかったために,hemodymamic comprom—iseにある患者以外,たとえば脳塞栓による脳虚血例にも手術がされていた可能性があり,そのために,有意な差がでなかった可能性も考えられている6,15)

 著者らは,1988年からは内頸動脈閉塞および,中大脳動脈閉塞例に対し,脳血流検査の評価を参考にしてSTA-MCA吻合術を行ってきた.

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I.はじめに

 欧米やオーストラリアではヘリコプターは日常の救急医療に広く活用されている1,3,7).日本でも最近ヘリコプターおよびその周囲の整備が進み,時に救急医療の現場に応用されるようになってきた.今回われわれは,頭部外傷後気管内挿管,中心静脈栄養施行中の重症脳損傷患者をヘリコプターにて搬送する機会があり,その現状と問題点を検討したので報告する.

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I.はじめに

 脊髄空洞症の原因としてChiari奇形I型は最も頻度の高いものであるが,治療法に関しては種々の論議がなされている5).脊髄空洞症の発生機序に関しては幾つかの仮説が提唱されているが4,6,15),未だ明確にされているとは言いがたい.その自然経過に関する報告は少ないが1),一方では自然寛解に関する報告も散見される.最近われわれは比較的短期間に自然寛解したChiari奇形I型に合併した上部頸髄空洞症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 頭蓋内真菌症において,稀に海綿静脈洞部に真菌性肉芽腫を形成し発症することがある.海綿静脈洞部真菌症は診断,治療技術の進歩した今日であっても予後不良とされている5,10).自験例は,海綿静脈洞部に真菌性肉芽腫を形成して発症し,その原因を究明する時期を逸し,結果的に真菌性敗血症と脳底動脈を中心に真菌塊による塞栓を起こし不幸な転帰をとった,海綿静脈洞部アスペルギルス症の1例である.本稿では,海綿静脈洞部アスペルギルス症の臨床的問題点を踏まえながら,自験例を考察してみたい.

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I.はじめに

 脊髄血管芽腫は稀な脊髄腫瘍とされてきたが,近年MRIの普及によって比較的容易に診断されるようになってきた.脊髄血管芽腫はその発生部位によって髄内,軟膜下髄外,脊髄神経根に分類される.今回われわれは,比較的稀とされている脊髄神経根から発生した脊髄血管芽腫の1例を経験したので報告する.

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I.はじめに

 前大脳動脈解離性動脈瘤は従来比較的稀な疾患と考えられてきた.近年,脳血管撮影の解像力が向上し,その報告例は増加傾向にある.また,computerized tomographic angiography(CTA)やmagnetic resonance angiography(MRA)が確定診断に有用であった例も報告されている3).今回われわれは,脳虚血症状およびくも膜下出血を来した前大脳動脈解離性動脈瘤の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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I.はじめに

 脊椎披裂を伴わない脊髄脂肪腫は稀な良性腫瘍であり,全脊髄腫瘍の約1%を占めるにすぎない.われわれは,MRIが質的診断のみならず病巣の把握にも有用であった頸髄軟膜下脂肪腫の1例を経験したので,特にその画像所見の特徴を中心に報告する.

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I.はじめに

 近年,解離性中大脳動脈瘤の報告が増加し,治療についても保存的治療から積極的な外科治療まで様々な試みがなされるようになった.今回,右頭頂後頭葉皮質下出血で発症し,当初の脳血管撮影では異常を認めなかったものの,その7日後にくも膜下出血を生じ,右解離性中大脳動脈瘤の出現が判明した1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

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I.はじめに

 近年の脳血管内手術法の発達により,脳動静脈奇形(AVM)に対しても塞栓術が有効な治療法の一つになっている.塞栓術のみで完治可能な症例は少ないものの,開頭術ないしは放射線治療との併用は有用として広く用いられるようになっている1,6).AVMに対する塞栓術の成績はマイクロカテーテルや塞栓物質の改良に伴い向上しているが,術後出血のリスクはいまだ克服できていない.今回,われわれは塞栓術後に出血を繰り返したAVMの1例を経験した.塞栓術後の出血はよく知られた合併症の一つであるが,これまでその報告は少ない.手術所見ならびに病理所見を合わせて報告する.

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I.はじめに

 海綿状血管腫は体のあらゆる部位に生じる血管奇形の一種であり,脳実質内には人口の約O.4〜0.5%に生じると報告されている2,25).近年,MRIの普及と撮像法の発達に伴い,家族性に発症する報告が散見される.われわれは父子に多発性の脳内海綿状血管腫を認めた症例を経験したので,日本人での報告を中心に文献的考察を加え報告する.また,家族性の海綿状血管腫に対しては放射線治療が重要な治療法と考えられ,併せて考察を加える.

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I.はじめに

 平成12年4月より日本に介護保険制度が導入された.この制度は,40歳以上の国民が介護保険料を収め,これを財源として老人の介護にかかわる費用を支出することを目的としている.この保険の給付を受けられる第1号被保険者は,疾患にかかわらず一律65歳以上であるが,「老化に伴う疾患」によって介護を必要とする40歳以上の人々も,第2号被保険者として給付の対象となっている.「老化に伴う疾患」には脳卒中・パーキンソン病をはじめとする神経疾患が含まれており,われわれが扱う脳血管障害も対象となっている.

 医療は社会保障制度の給付に基づいて成り立っており,社会制度の変遷とともに変化しないと質の良い医療は提供できなくなる.医療および介護の質を保つために,施設側はある程度十分な報酬を得なければならない一方で,介護を必要としている患者・家族はできる限り費用を抑制しようとする.われわれ脳神経外科医も,脳神経外科疾患の慢性期診療で医療保険と介護保険をどのように使い分けるかを理解しなければならない.今回,現在の医療保険と介護保険での施設側と患者側の収支を検討した.

基本情報

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Neurological Surgery 脳神経外科
29巻4号 (2001年4月)
電子版ISSN:1882-1251 印刷版ISSN:0301-2603 医学書院

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