I.はじめに
松果体部に発生する髄膜腫は比較的稀であり,松果体部腫瘍の8%程度とされている29).この部に発生する髄膜腫は,その発生部位は硬膜(いわゆるfalcotentorialjunction)から発生するもの,硬膜に付着部を持たないvelum interpositumに発生するもの,およびpinealbodyのconnective tissueから発生するものに分けられている.われわれはこれまで6例のfalcotentorial junc—tionから発生した髄膜腫(falcotentorial junction menin—gioma,以下FTJM)を経験した.このFTJMの発生頻度は極めて低く(ちなみに小脳天幕に発生する髄膜腫も全髄膜腫の2.5-3.7%と少ない7,29),文献上はわずかに24報告者により32例が報告されているにすぎない1-3,5,11-13,15,23,25,26,28,30,31,36,39,41,44,45,53,58,59,68,70).
脳深部に存在し深部静脈系および中脳・視床などの重要な組織と密接な関係をもつFTJMの手術は,その発生頻度が低く経験する機会も少ないことも相まって,脳神経外科医にとって極めて治療の困難な疾患といえる.FTJMを含め松果体部腫瘍に対する手術方法については,歴史的に幾つかの方法が報告されている.これらのうち主なものとしては,infratentorial supracerebellarapproachLM24.50), occipital transtentorial approach20,25),transventricular approach60), parietal transcallosalapproach8),あるいはanterior transcaliosal transveluminterpositum approach47,48)などがある.これらのうち,FTJMに対する手術方法としては,文献上報告された22開頭例によれば,occipital transtentorial approach(後頭葉部分切除の有無を問わず)が10例5,11,25,26,28,31,36,45,53,70),parietal or occipital interhemispheric approachカ5例3,23,30,39,59),supra-and infratentorial approachが2例30,36), infratentorial supracerebellar approachのみが1例26),その他1例13)および記載の不明瞭なもの3例2,12,68)であった.