扉
華佗と開頭術
古和田 正悦
1
1秋田大学脳神経外科
pp.573-574
発行日 1993年7月10日
Published Date 1993/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436900667
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後漢の名医である華佗(141?−208年)が麻沸散による全身麻酔で開腹術を行ったことはよく知られており,中国外科学の鼻祖とされている.その華佗が開頭術も行ったように伝聞されている.有史以前に穿頭された頭蓋骨がむしろ稀にしか発掘されない東洋において,古代に開頭術を行って史書に名を残す人物はいったい誰なのか,かねてから興味を持っていたので,昨年と一昨年の訪中の折に,華佗について二・三の耳学問をさせてもらった.
華佗の医案は『三国志(本伝)』華佗伝・別伝と『鍼粂甲乙経序』にみられる22例で,『後漢書』方術伝やその他の医書の医案はすべて『三国志(本伝)』と重複しているという.そのうち開腹術は2例で,1例が完治し,他の例は10年後に死亡する.しかしながら,開頭術の記載はない.強いて頭部疾患の医例を求めれば,羅貫中による小説『三国志演義』第七十八回「治風疾風医身死」に「眉間生一瘤」を切開する医話がある.ある人が眉間に瘤ができて,かゆくてたまらないため,華佗に見せると,「その中に飛ぶものがいる」と言って,それを切開したところ,一羽の黄雀(ニュウナイスズメ)が飛び立ち,病人は治るのである.
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