作業療法 8巻2号 (1989年5月)

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要旨:Ⅰ.我々は,昭和56年度より,車椅子常用者世帯向住宅入居者に,主にサニタリーを中心に,建設の段階で助言・測定をおこなってきた.今回その資料をもとに,入居者が選択した設備を調べ,その根拠を探ってみた.その中で,測定の重要性を知った.

 Ⅱ.さらに,入居後の生活について,訪問調査をおこなった.そこで我々は,身障者が実に多くの悩みを持ち,解決できないまま生活されている姿に出会い,単に,ハード面のみでなく,ソフト面について考えていかねばならないことを知り,作業療法とかかわりの深い問題点をまとめた.ついで,住生活をより詳しく知るために,全戸も対象にアンケート調査を実施し,日常生活状況について資料を得た.

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要旨:本論文においては,就学前の在宅する痙直型四肢麻痺を伴う重度と最重度の精神遅滞児を対象に,子どもの遊びを玩具の操作という側面から取り上げ,その内容を知的条件と運動条件との関連から分析した.

 その結果,彼らの遊び内容が,知的発達年齢と姿勢反射に規定されていることが明らかにされた.換言するなら,知的発達年齢が展開される遊び内容の質的な違いをもたらし,また同一の知的発達年齢においては,姿勢反射の獲得状況が遊び内容のレパートリーに影響を与えることが明らかにされた.

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要旨:作業療法の始まりは慢性疾患患者の療養生活の改善の必要性から生まれたとも言われる.しかし必ずしも総ての慢性疾患を対象とする医療施設で作業療法が用いられてきた訳ではない.

 ここでは主に明治42年に開設された癩療養所全生園の作業の歴史を例に,それが作業療法として成立しなかった原因について,当時の結核や精神疾患の場合と比較考察し,いかに作業療法の存立と発展にとって,患者を受け入れる社会の理解と支持が不可欠であるかについて明らかにした.

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要旨:精神分裂病者は発病以前より従順に他者に従うという役割を取り,主体性に乏しいと想定し,精神科デイ・ケアを,精神分裂病者が『主体性の獲得』を経験する場として,筆者は位置付ける.このことを,自分の意志で通う所であるというデイ・ケアの通所形態,『主体性の獲得』という経験を行うための道具としての,不参加の自由を保証されたプログラム(活動),『暖かく無視する』というスタッフの基本的な態度,メンバー対メンバーの人間関係という観点より考察した.

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要旨:近年の車社会を象徴するように,車の性能や機能向上は目覚ましく,オートマチック,パワー・ステアリング,パワー・ウィンド,リモートコントロール式サイドミラー等の機能はもはや常識となり,更にはICの利用へとすすんでいる.この様な人間工学的開発によって運転への身体的ハンディは軽減され,更には個々の障害に応じた車の改造へのアプローチも加わり,運転適性不可能領域であった者も可能となるケースが多くなっている.今回我々は両上腕切断の運転専用義手を開発することによって,義手による車の運転がはじめて認められ,免許再交付となったので,その経過と共に運転専用義手及び車の改造点等を報告する.

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要旨:誤学習や未学習のために動作学習に時間を要する重度障害児2名の,食事介助を通しての食事動作訓練について報告する.症例1には,すくうことおよび口まではこぶ動作を学習させるために,促進の技法を用いた.また,すくう,口まではこぶの自発動作が学習された後も,その動作を強化するために抵抗運動を用いて,動因の操作を行なった.また,症例2については,すくう動作の学習については,症例1と同様な方法で行ない,口まではこぶ動作については訓練前に自発動作を学習していたので,動因の操作により,自発動作の強化のみ行なった.その結果,短時間で,すくう,口まではこぶ動作を学習することができた.また,すくう,口まではこぶ動作中にスプーンから食物をこぼすことも減少し,すくう,口まではこぶの動作学習の強化を行なうことができた.

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要旨:45歳,女性.右利き.多発性脳梗塞後に後頭葉・頭頂葉の機能低下症状である視空間性知覚障害を呈した.その中でも視覚失調,視覚性注意障害,精神性注視麻痺の三徴候を示すBalint症候群の症状が著明で,ADLの自立に支障をきたしていた.そこで,作業療法ではADLの自立を目標にあげ,視覚情報の活用と,視野から外れた場合は手で触れて正確に感じとるように体性感覚を積極的に利用させた.その上,同じことを何回も繰り返して覚えさせるという動作学習の方法を用いた.

 その結果,食事動作が自立し,排泄動作,歩行が監視下で可能になった。しかし,高次脳機能の著名な改善はなく,Balint症候群の症状を呈したままであった.

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要旨:排便障害を有する二分脊椎・脊髄損傷・脳血管障害・寝たきり重度障害者などを対象として,排便用介護システム(エバキュエーション・ケア・エイドシステム)3種類を,当リハビリテーションセンター泌尿器科と一般企業3社と共に排泄問題研究会を組織し協同開発・製作してきた.現在,その2種類の排便介護システムについては試作化し,二分脊椎児・者と脊髄損傷(頸髄損傷)者を中心に,外来および入院中の患者16名に対しモニターを含む実態調査を行ってきた.その結果,洗腸療法(洗腸セット)の適応が非常に良好な経過を示し,便失禁の消失・改善,薬剤等の使用を必要としなくなる,周期的排便状態が安定,排便時間の短縮など多くの利点が見出された.

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要旨:昭和61年9月から昭和62年12月の期間に主として脳血管障害や老人痴性呆症の40名を対象に,楽しみの提供,対人交流の拡大,精神機能面への刺激等を目的に,67のゲームを行った.その結果,障害老人にとって反応の良かったゲームは,知的要素,言語・非言語的コミュニケーション要素が含まれ,他患との関わりを多く必要とする集団的な内容であった.

 反対に反応の悪かったゲームは,知的要素,言語的コミュニケーション要素が多く含まれ,静的で他患との関わりをあまり必要としない個人的な内容であった.

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要旨:身体に重度の障害を伴う人達が障害の違いはあっても共通に楽しめて,しかも安全に個々の能力を最大限発揮できる,スポーツ競技的『リハビリテーション風船バレーボール』の競技方法について紹介した.本競技の特長は,①老若男女誰でも気軽に参加でき,安全に楽しめる.②規則が簡単である.③障害状況や人数,場所などに応じて適宜に改変応用ができる.④楽しみながら身体的,精神的,社会的リハビリテーション活動が可能である.したがって,本競技は各病院や施設の治療および訓練に幅広く応用できると共に,地域リハビリテーションの活性化にも大いに役立つものと考える.

基本情報

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作業療法
8巻2号 (1989年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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