作業療法 39巻1号 (2020年2月)

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要旨:本論では,自閉症スペクトラム障害児(以下,ASD児)に対する,より効果的な作業療法の開発に向けて,応用行動分析学(以下,ABA)を取り入れることを検討した.ABAは,強力なエビデンスを持つとともに,作業療法士はこれを適用するためのスキルを持っている.そのため,本論から我が国の作業療法士がABAを取り入れることを吟味し実践することで,ASD児に対する,より効果的な作業療法となることが期待される.

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要旨:本研究の目的は,家族介護者の従事する「介護」という作業の構成概念を生成することである.要介護者と在宅介護生活を1年以上経験している家族介護者16名を対象に非構造化面接を実施し,SCAT(Step for Cording and Theorization)を用いて分析した.その結果,構成概念は102の意味コードが生成され,家族介護者の想い,介護する生活,介護と環境の3つの大カテゴリーが得られた.作業療法士は家族介護者の作業適応への支援として,これらの視点で検討する必要性が示唆された.

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要旨:脳血管障害患者の表情認知の特異性を表情名から表情画像を選ぶトップダウン情報処理表情認知課題(TDFERT)と,表情画像から表情名を選ぶボトムアップ情報処理表情認知課題(BUFERT)を用いて脳損傷領域別に比較した研究は希少である.本研究は両課題を用いて前頭葉損傷(FS)群,基底核損傷(BS)群,放線冠損傷(CS)群で成績の比較と特異性を調べた.領域間の検討からFS群とBS群はCS群に比べBUFERTの嫌悪と恐怖の成績が低下した.特に嫌悪は課題間の検討から3群ともTDFERTよりBUFERTの成績が低く課題形式により成績が異なる可能性が推察された.一方,喜び表情は3群ともに成績が高く他表情より認知しやすいことが推察された.

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要旨:本研究の目的は,作業療法学生の自己決定意識が個人の中でどのように意味づけられているかを明らかにすることである.まず,作業療法士養成課程の大学生181名に自己決定意識尺度の回答を求めた.次に,尺度の回答および個別調査の協力が得られた66名の中から,尺度得点の高い者と低い者それぞれ3名,計6名を抽出し,自己決定意識についての個人別態度構造分析を行った.その結果,自己決定意識の高い者は,内的統制型で自律的な動機づけを有し,低い者は,外的統制型で他律的な動機づけを有しており,心理構造に違いが見られた.このことから,他律的動機づけから自律的な動機づけへの移行には,自己決定意識が重要であることが示された.

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要旨:地域リハビリテーションでは高齢者の役割支援が課題とされるが,役割の促進要因や健康関連Quality of life(以下,HRQOL)への影響を明らかにした報告はきわめて少ない.本研究の目的は役割チェックリスト3の日本語暫定版を用い,要支援・要介護高齢者の役割遂行,環境要因,身体機能がHRQOLへ与える影響を包括的に明らかにすることである.作成した仮説モデルを構造方程式モデリングにて分析した結果,環境要因からHRQOLへの直接効果と役割遂行を介した間接効果があった.一方,身体機能からHRQOLへの影響はなかった.要支援・要介護高齢者においては環境を包括的に支援し,役割遂行を十分に促すことでHRQOLの向上につながることが示された.

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要旨:壮年期あるいは中年期に脳卒中を発症した人(以下,壮・中年期脳卒中発症者)が麻痺側上肢の不使用に至るプロセスを,その語りから明らかにすることを目的とし,麻痺側上肢の不使用に至った壮・中年期脳卒中発症者8名の語りを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに準拠し質的に分析した.分析から20概念,4サブカテゴリー,4カテゴリーが生成され,壮・中年期脳卒中発症者が麻痺側上肢の不使用に至るプロセスは,周囲の人との社会的相互作用の中で,【発症前との比較】を行いながら,非麻痺側上肢を用いて【役割を担える自分の回復】に成功する一方,麻痺側上肢に対し【まだ使えない手という認識の深まり】を促進するものであると示された.

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要旨:本研究の目的は,軽費老人ホーム入居者で完全自立しておらず,リハビリテーションや食事以外の活動に参加しない高齢者を対象に転倒群と非転倒群に分け,転倒要因と結果から考えられる作業療法士(OT)の課題の明確化である.身体機能,日常生活評価(FIM),転倒転落リスク評価(FRI-5)を含む7項目を評価した結果,睡眠時間とFIMに両群間で有意な差を認め,FRI-5とは睡眠時間とFIMで負の相関を示した.睡眠時間の短縮とADLの介助量が多いことが,転倒しやすいパターンの一つであると推測される.さらに,環境調整に加え個々のニーズに合わせ自発性および活動性を向上させる作業療法プログラムを立案することが,OTの課題であることが示唆された.

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要旨:回復期リハビリテーション病棟にて,調理にデマンドを述べた脳卒中患者に,AMPSとACQ-OPの結果に基づき,調理練習を継続的に実施した.週に1回の頻度で,クライエント(以下,CL)と共に,メニューと目標をそのつど設定して取り組んだ.その結果,AMPSのADL運動能力測定値は0.7 logits,ADLプロセス能力測定値は0.2 logits,ACQ-OP測定値は0.6 logits改善した.両評価を用いることで,作業遂行上の問題をCLと共有しやすくなり,継続的に目標に反映させた介入を展開することに役立った.AMPSとACQ-OPを作業療法プロセスに取り入れることによる効果を検証するために,さらなる事例の蓄積が望まれる.

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要旨:本報告の目的は,認知症のクライアントに対し,意図的関係モデルと人間作業モデルを併用した介入の有用性を検討することである.介入当初,認知症の行動・心理症状が強く見られていたことから,良好な治療的関係の構築に困難が予測された.そこで意図的関係モデルにより,作業療法士はクライアントが好む関係性を考慮して関わり,その上で人間作業モデルを用いて,興味と価値を反映した生活習慣の構築を図った.その結果,良好な信頼関係が築けたことで,生活史を反映した作業への従事が促されて,行動・心理症状に改善が見られた.認知症のクライアントに対し,意図的関係モデルと人間作業モデルを用いた作業療法介入の有用性が示された.

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要旨:回復期リハビリテーション病棟に入院する重度認知症者に対し,人間作業モデルに基づく介入がもたらした変化と要因を提案する.Mini-Mental State Examination,認知症行動障害尺度短縮版,機能的自立度評価法,人間作業モデルスクリーニングツールを,入棟1週目,介入2ヵ月後,それ以降1ヵ月毎に測定した.自宅退院に必要な日常生活活動への介入と,興味や役割の情報と人間作業モデルスクリーニングツールの結果から計画したちぎり絵やキャッチボールといった介入を約4ヵ月間実施した結果,各評価法の評定は入棟1週目よりも全て改善した.従って,人間作業モデルに基づく介入は,対象者の認知機能と行動・心理症状の良好な変化を導いたと考えられた.

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要旨:レビー小体型認知症の発症により,作業ができなくなり自分らしさを獲得できなくなったクライエントに対し,Person-Environment-Occupation Model of occupational performance(PEOモデル)を用い介入した.クライエントと作業療法士は作業ニーズを特定し,作業歴を紐解き作業分析を行い,人-環境-作業の適合を見極めるため,それぞれを個別に評価した上で作業遂行場面を観察したところ,作業形態と意味が満たされた.クライエントを主語に作業を基盤とした介入を実施した結果,人-環境-作業が最大限に適合し,クライエントは日記に「自分が生まれた感じがした」と表現する作業的存在を確認できた.さらに作業の力は,傾眠回数の減少にも寄与した.

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要旨:右手動作の拙劣さと両手に道具把握の障害を呈した,左の前頭葉および頭頂側頭葉梗塞例を経験した.手指分離動作は十分可能で協調運動障害もなかった.しかし,右手での手指形態模倣や,衣服のボタン操作,手袋の操作が困難であった.さらに箸やスプーン,ハサミなどが,左右手ともうまく把握できなかった.この症状に対して右手の課題指向型訓練を14日間実施した.本例は道具を一旦正しく把握できれば,それ以降の使用動作は問題なく行えた.また,把握の誤りは,検査者が道具を手渡したり,一方の手でもう一方の手に道具を持たせたりすると少なくなった.この残存能力を生かして訓練を行ったところ,日常生活における右手の使用頻度が増加した.

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■欧文目次

基本情報

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作業療法
39巻1号 (2020年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

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