作業療法 35巻6号 (2016年12月)

  • 文献概要を表示

要旨:腎不全患者に対し「腎臓リハビリテーション」が新たな治療概念として提唱されているが,透析患者のADL低下因子やリハビリテーション(以下,リハ)介入効果を検討した研究は少なく認知機能への関心も高くはない.今回,当院入院透析患者でADLとリハ介入効果を解析し,FIM総得点は約65.1点から約77.1点に改善しFIM認知項目はFIM総得点改善の有意な関連因子だった.FIM認知項目25点以上群は24点以下群よりFIM総得点非改善患者が半減しMMSEとHDS-Rの注意機能もそれぞれ6倍,4倍と高く,ADL改善には認知機能(特に注意機能)の維持・向上が重要であり理学療法士・作業療法士の2職種介入などの治療戦略も期待される.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究は,適合的かつ実用的なストレス尺度を作成し,作業療法士の労働職場ストレッサーとそれによるストレスの全容と特徴を明らかにすることを目指した.当事者インタビューと先行研究をもとに労働職場ストレス多項目尺度を作成し,岐阜県下の作業療法士に郵送調査を実施した(有効回答率72.4%).そのデータを因子分析し,6つの下位尺度を構成した.その後,尺度構成と各労働職場ストレッサー経験者割合・強度について検討した.「作業療法への無理解」や「指導・育成への負担感」は,他職種にない作業療法分野特有のストレッサーである可能性が示唆された.また,経験者割合・強度ともに高い数値を示すストレッサー項目を明示することができた.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究の目的は,当院に入院した高齢者施設入所者において,認知症行動・心理症状(以下,BPSD),ADL,認知機能が,入院期間中のせん妄出現の予測に有用であるか否かを明らかにすることとした.入院前BPSD,N-ADL,NM scaleを調査し,入院期間中のせん妄出現の有無にてロジスティック回帰分析を行った.本研究の対象は487例,せん妄出現は74例(15.2%)であった.ロジスティック回帰分析の結果,入院前BPSDでは転倒の危険,攻撃的言動・行動,幻覚,不眠,N-ADLでは排泄,NM scaleでは会話が有意因子として抽出された.せん妄出現を予測するには,入院前BPSD,N-ADL,NM scaleが重要であることが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨:意味のある作業への従事(作業参加)は健康・well-beingにとって重要であるが,その関係性を疫学的に実証した研究は少ない.本研究では作業参加が生きがいに及ぼす影響を明らかにすることを目的に,健康な地域中高年者456名(男性121名,女性335名,平均年齢63.8歳,範囲50〜85歳)を対象に1年間の追跡調査を実施した.作業参加,生きがい,基本属性・社会経済的要因を調査し重回帰分析を行った結果,作業参加が生きがいに肯定的な影響(β=0.35,p<0.001)を及ぼし,1年間では余暇活動,生産的活動,セルフ・ケアの3領域全てで同程度の影響があることが明らかとなった.本研究結果は健康増進・予防的作業療法の基礎的・疫学的根拠の一つとなる.

  • 文献概要を表示

要旨:我々は,右手関節離断後に,訓練用筋電義手を用いたプログラムを経て復職に至った症例を経験した.訓練用筋電義手を用いたことで,本義手作製前に,①筋電義手の制御と操作の獲得,②筋電義手装着時の重量の体験,③日常生活や仕事での使用が可能となった.そして,これらの経験を踏まえた上で,最終的に本義手として筋電義手を作製するか,症例自身に選択する機会を提供することができた.訓練用筋電義手の導入は,本義手作製前に種々の体験を可能とし,症例自身の義手の役割の理解につながった.この過程は,筋電義手を日常生活の中で使用し続ける上で重要であることが示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨:右半球広範の病巣で,重度の麻痺と半側空間無視(以下,USN)を呈する患者は,車椅子駆動の自立を必要とされるが,獲得困難なことが少なくない.筆者らは,左方向の探索課題・文字読み課題,および右左転換課題で構成した「視覚性注意練習(以下,VAE)」とUSN症状を考慮して課題を設定した「車椅子駆動スキル練習(以下,WDSE)」を考案した.2つの練習は別々のタイミングで導入し,各々が最後の課題まで確実に行えるようになった時点で2つの練習を組み合わせた結果,車椅子駆動が自立に至った症例を経験した.このVAEとWDSEの段階的プログラム内容と重度USNの典型例と言える本症例の作業療法経過を報告する.

  • 文献概要を表示

要旨:右大腿骨近位部骨折と軽度認知症を呈した患者に対し,COPMやAMPSを用いて,「クライエントができるようになりたいことや,周囲からすることを期待されていること(以下,作業)」に焦点を当てて介入を実施した.COPMによりクライエントのニーズを特定し,AMPSにより作業遂行の様子を観察して原因の明確化を行い,クライエントと共に目標と介入を考え実施した.その結果,身の回りのことだけでなく,在宅での役割であった調理や買い物などが安全に行えるようになり,独居生活に対して自信を持って退院することが可能となった.実際に行うことで,作業ができるようになり,クライエントの自信を取り戻すことにつながると考えられる.

  • 文献概要を表示

要旨:咽頭癌による構音障害と脳出血後の麻痺によりコミュニケーション能力が低下した症例に対し,症例にとって意味のある作業を把握するため,Paper版ADOCと重要度・満足度・遂行度に関するNumerical Rating Scaleを,初期,中期,後期,退院時の4期別に評価した.炊事と友人との交流が重要な作業として示され,症例にとって意味のある作業に焦点を当てることが可能となり,症例の主体性が向上し意欲的な作業活動につながった.今回の評価・介入方法は,症例にとって意味のある作業に焦点を当て主体的な作業活動を促す一助になった.また,経時的に評価を行うことで症例の現状を把握でき,症例と作業療法士の目標共有を促せたと考える.

  • 文献概要を表示

要旨:医療従事者の接近および身体接触に対するストレス反応と発達遅延を認めた児およびその家族に対して,玩具・あそびを用いた作業療法を展開した.月齢6ヵ月より作業療法が開始され,児が敏活な反応を示す視聴覚刺激に,手指を中心とした感覚運動経験を加えたあそびを提供した.また,両親には情報および役割の提供を行い,児との相互作用を促した.月齢15ヵ月までにストレス反応を示さずに座位姿勢での自発運動を獲得した.直接的な身体接触を伴わない玩具・あそびを介した関わりがストレス反応を軽減し,ハンドリングなどの身体接触を伴う介入を可能にしたことに加え,両親の親としての役割が機能したことで発達が促進されたと考える.

  • 文献概要を表示

要旨:脳卒中後に非流暢性失語と右片麻痺を呈した慢性期の一症例に対して,両側の一次運動野への経頭蓋直流電気刺激と総指伸筋に対する末梢電気刺激を用いたニューロモデュレーション(Neuro-Modulation;以下,NM)後にCI療法を実施した.その結果,麻痺側上肢のFugl-Meyer Assessmentは,臨床上意味のある向上を示した.さらに,標準失語症検査における呼称を含む言語機能に改善を認めた.本症例報告は,NMとCI療法による手段的・応用的作業における麻痺手の使用が,言語機能を改善する可能性を示した.この報告により,作業療法の一部が言語練習を補完する可能性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨:地域包括ケアシステムでは,フレイル高齢者も含めた地域在住高齢者を対象とした一般介護予防事業が開始され,その継続した活動が求められている.本報告では,従来の一次予防事業において実施した運動教室が自主グループ活動につながり,市内全域に広がった経過と作業療法士の関わりをまとめた.我々が過去11年にわたり,18地区で11週間の運動教室を実施した結果,21会場で自主グループ活動が継続し,年間の参加延べ人数は2万人を超えるまでになった.この経過から,作業療法士が自主グループ活動への移行と継続を支援しながら展開した本事業は,新たな一般介護予防事業を構築する際のモデルになりうると思われた.

--------------------

■欧文目次

基本情報

02894920.35.6.jpg
作業療法
35巻6号 (2016年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

文献閲覧数ランキング(
10月4日~10月10日
)