作業療法 35巻5号 (2016年10月)

  • 文献概要を表示

要旨:非利き手における箸操作訓練は学習の困難性が報告されており,学習における失敗経験は意欲と学習能力の低下を引き起こす.よって代替手段により巧緻動作,それに伴う箸操作性を高めることは重要である.本研究では,健常者17名(右利き)を対象に4週間,週6回,1日1回,1回20分の頻度でボールローリングエクササイズを非利き手で行い,巧緻動作と箸操作困難感への影響を確認することを目的とした.結果,巧緻動作向上および箸操作困難感の減少を認めた.本研究結果は,ボールローリングエクササイズが非利き手での箸操作困難感の減少に有益である可能性を示唆しており,新たな利き手交換訓練の1つとして用いることができると考えた.

  • 文献概要を表示

要旨:寿地区簡易宿泊所で独居生活となる事例への退院支援のため,事例らが生活の中で何を重視しているか理解することを目的として簡易宿泊所で独居生活の事例にインタビューし,Steps for Coding and Theorizationを用い質的分析を行った.その結果,人間関係,金銭管理,身体機能,日中の活動,住環境の5つのテーマが抽出された.特に,人間関係と金銭管理についての発言が多く聞かれた.退院後に関わる支援者との良好な人間関係構築に資する情報提供,利用サービスの費用面において本人の納得が得られる十分な対応,簡易宿泊所環境に合わせたADL・IADL自立度向上のための柔軟な対処という視点が重要であると考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨:訪問サービスを利用しながら都市部で一人暮らしをしている男性高齢者が地域社会から孤立を強めるプロセスを明らかにし,訪問作業療法による支援への示唆を得ることを目的に,対象者11名に面接調査を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに準拠して分析した.その結果,【一貫した自分を探す】,【人との相互作用から自分を認識する】,【孤立を強める不活発状態】の3つのカテゴリーと8つのサブカテゴリー,26の概念が抽出された.訪問作業療法において社会的孤立を予防するためには,人生の一貫性や諦めた作業についての対象者の認識,経済状態などを評価しながら,心理面や人との繋がりの支援をすることが重要だと考えられる.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究では,精神障害者を対象にWell-Beingを促進する作業への関わりの程度を評価(Assessment of Positive Occupation;以下,APO)できるAPO等化尺度を開発した.方法は,Well-Beingの促進に寄与する50項目に対して項目反応理論の水平等化を用い,2種類の等化尺度を開発した.分析の結果,2種類の尺度は良好な結果(TLI:1.000,CFI:1.000,RMSEA:0.000)を示し,概ね同等の高い測定精度を有していることが示された.APO等化尺度は,作業療法実践で対象者の変化を的確に測定することができ,効果測定で一般化した結果を作業療法士に提示できることが考えられた.

  • 文献概要を表示

要旨:手の浮腫・腫脹の測定法であるリングゲージ法と掌囲(中手骨頭レベルでの手の周径)法の信頼性と妥当性を明らかにした.健常成人40例80手を対象に,2人の検者がリングゲージ法,掌囲法,Figure of Eight法を2回測定した.信頼性は級内相関係数,妥当性はFigure of Eight法との相関係数を用いた.検者内信頼性のICC(1,1)はリングゲージ法が0.99,掌囲法が0.99,検者間信頼性のICC(2,1)はリングゲージ法が0.98,掌囲法が0.98〜0.99であった.Figure of Eight法との相関係数はリングゲージ法がr=0.76〜0.84,掌囲法がr=0.91〜0.94だった.リングゲージ法と掌囲法は信頼性と妥当性が高く手の周径法として使用可能な方法と考えた.

  • 文献概要を表示

要旨:人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty;以下,TKA)後患者の破局的思考は生活の質に影響を与える要因である.本研究は,COPMに基づいた目標設定と介入が破局的思考と疼痛に与える影響を検討することを目的とした.TKA後患者を対象とし,COPM群47名とControl群45名に分類した.評価指標として破局的思考にはPain Catastrophizing Scale(以下,PCS),疼痛にはNumerical Rating Scale(以下,NRS)を測定し,分散分析と多重比較にて解析した.その結果,COPM群においてPCS下位尺度得点である無力感に交互作用を認めた.本結果より,TKA後患者に対する作業療法介入の有用性が示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨:在宅ケアサービスを利用するクライアントのQOLの変化に影響を及ぼす要因を明らかにするため,異なるQOLの変化パターンを示すクライアントに面接を実施し,ナラティヴ分析を行った.その結果,「自尊感情が再建され自己効力感が発現していくプロセスの物語」,「誰かがそばにいてくれることから生まれる安心感の物語」,「自分自身に起こりうるすべてのことへの感謝と受容の物語」,「自分自身の人生を再建できないことへの葛藤の物語」という4つの物語が生成された.援助者が個々のクライアントの背景にある心情に留意してケアを提供するならば,両者間に共感的な理解が生まれ,QOLの向上につながる可能性があることが本研究を通して示唆された.

  • 文献概要を表示

要旨:通院治療センターにて化学療法中に,作業療法(以下,OT)を実施した認知症患者への介入についての症例報告である.外来がん患者のOTでは,リスク管理やADL,IADLなどの活動性の維持・向上に加えて,外来という限られた時間内で病状を把握すること,他職種と情報を共有すること,病状や治療内容・環境を考慮した作業の提供,治療選択における患者の意思の尊重,患者を支える家族への支援,さらに,認知症など治療継続に支障を来す病態への対策が必要であると考える.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究は,若年性認知症の人とその配偶者に面接を行い,語りの分析から介護生活をどのように意識し意味づけしているかを整理し,在宅生活支援のあり方について考察することを目的とした.分析の結果,夫は妻との確執があることを語った.一方,妻は夫を患者であるかのように評価してしまう自らの介護態度に悩んでいた.この感情の不一致が自宅でのトラブル発生の要因であると考えた.また,夫婦は,不満や不安を抱えながらも希望を絶やさず,認知症という病と向き合っていることが明らかとなった.デイケアでは,認知症の人と家族介護者のニーズを把握し,自宅でのトラブル要因を分析しながら,家族も含めた支援を行うことが重要であると考える.

  • 文献概要を表示

要旨:本論は,家族の希望により約7年間長期入所し当施設で最期を迎えた事例に対し,洗濯を通して死去される前まで事例らしく生活を送れるよう援助できた実践の報告である.A氏は衣類の整理にこだわりがあった.そこで,A氏が在宅生活で行っていた洗濯が,役割のある作業になる可能性があるのではないかと考え,導入した.洗濯は,開始してから体調不良時以外,拒否することは一度もなかった.またA氏は家族に自己の存在をアピールするようになり,日々の生活の一部として定着した.また役割をもつことにより,自分が自分らしくいられる礎となった.そして洗濯を最期まで継続して行え,A氏らしく過ごすことができた.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究は1年間の健康増進活動に参加した中高年者を対象に,活動期間中と活動終了3ヵ月後の縦断的視点から行動変容ステージ変化と心理・社会的要因との関連を検討した.その結果,分析対象者18名のうち,活動期間中の行動変容「あり」群は10名,「なし」群は8名であった.行動変容ステージの前進や維持の関連要因として,多重比較の結果より活動前半の運動セルフ・エフィカシーの向上,群間比較より家族や友人からの肯定的なソーシャル・サポートの受領といった心理・社会的側面の影響が考えられた.これらより,社会的ネットワークやソーシャル・サポートの受領を豊かにすることが運動の行動変容の促進には必要性が高いことが示唆された.

--------------------

■欧文目次

基本情報

02894920.35.5.jpg
作業療法
35巻5号 (2016年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

文献閲覧数ランキング(
3月18日~3月24日
)