作業療法 36巻1号 (2017年2月)

  • 文献概要を表示

要旨:特別支援教育における小中学校の通常の学級への訪問活動時の妥当な観察手段が求められている.本研究の目的はOTが通常の学級を訪問した際に,対象児を取り巻く人的・物理的環境の「誰・どこ」を「どのように」観察するかについての環境因子観察項目を提示することである.研究Ⅰでは,訪問活動経験の豊富なOT 12名に対し半構成的インタビューを行い,KJ法にて分析した結果978の観察項目を生成した.研究Ⅱでは,全国のOT 51名に対し各項目の重要度をDelphi法に基づく3回のアンケートで調査した.その結果,99の観察項目が抽出され,環境因子観察項目が提示できた.本研究は,通常の学級の観察評価のための観察チェックリスト開発への一歩となった.

  • 文献概要を表示

要旨:独居高齢者は孤立リスクや精神的不安を抱えており,自己の健康管理が必要との報告がある.本研究では要介護認定を受けた独居高齢者の生活実態と主観的健康観(以下,SRH)を調査した.対象者をSRHの高さで2群に分け比較したところ,年齢,情緒的・機能的支援者の有無,婚姻状況,IADLでGood SRH群の方が高値であった.要介護認定を受けた独居高齢者が生活を継続するにはADLが修正自立以上であり,良好なSRHを得るためには情緒的・機能的支援者がいて,IADLでは屋内家事は十分に,屋外家事もある程度行えることが重要である.作業療法士は独居高齢者の支援のために,ADL機能の変化,IADLの遂行頻度,情緒的・機能的支援者の状況の把握が必要である.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究の目的は大腿骨近位部骨折患者の精神心理機能を明らかにすることである.大腿骨近位部骨折患者24名と地域在住高齢者34名を対象とし,Mini Mental State Examination(以下,MMSE),Trail Making Test(以下,TMT),高齢者抑うつ尺度短縮版(以下,GDS-15),日本語版WHO-5精神健康状態表(以下,WHO-5),新版STAI状態─特性不安検査(STAI)を調査測定比較した.大腿骨近位部骨折患者群は,MMSE,WHO-5で有意に低く,GDS-15は有意に高く,Delta TMTは異常値を示した.大腿骨近位部骨折患者のリハビリテーションでは,精神心理機能について,さらに着目する必要性がある.

  • 文献概要を表示

要旨:地域在住高齢者が作業を始めたきっかけとその思いを明らかにすることを目的として,12名にインタビューを実施し,質的分析を行った.結果,840のラベルが得られ,8つの概念(作業の概要,作業に伴う状況,作業の始まり,作業への思い,健康への思い,作業の影響,今後の作業,やめた作業と思い)が得られた.対象者の作業は,自分のペースで行え,他者との関わりを有し,様々な感情を伴うものであった.また,作業を始めたきっかけには内的要因に加え外的要因が関連し,特に健康維持への思いと他者からの関わりが影響していた.そして,高齢者は自身や周囲の環境の変化に合わせて,作業の形態を変化させていることが明らかとなった.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究では,作業適応の危機を経験しながらも大切な作業を継続もしくは変更をしながら続けている高齢者を対象に,作業の意味生成様式を明らかにすることを目的として,65歳以上の高齢者で地域コミュニティに参加し,身辺処理の自立,認知機能に問題のない方を対象に非構造化面接からSCAT(Steps for Coding and Theorization)を用い分析をした.その結果,作業の意味生成様式として,根本的価値観,方略性,作業がもたらす影響,内外状況との対話という4つの大分類が抽出された.作業適応の危機を通して,内外状況との対話から,自身の根本的価値観や生活を守るための方略性を展開させ,作業を行う中で作業がもたらす影響という語りで意味づけていた.

  • 文献概要を表示

要旨:回復期リハビリテーションを受ける高齢者を対象とした包括的環境支援地域連携クリニカルパスを開発するための達成目標とタスクを作成し,その内容的妥当性を検討した.包括的環境要因調査票の構成概念に準拠して作成したパス原案は,達成目標10領域,タスク26項目から構成されるものであった.Webアンケートシステムを利用し,回復期病院と維持期施設の専門職31名を対象としたデルファイ法を実施して原案を検討した結果,達成目標9領域,タスク24項目の内容的妥当性が確認された.このパスを有効な手段として活用するためには,PDCAサイクルに基づき,パスを運用してバリアンス分析を実施し,パスの見直しを図るプロセスが必要となる.

  • 文献概要を表示

要旨:近年,脳卒中後上肢麻痺を呈した症例の実生活における麻痺手の使用頻度に対する評価は,患者の主観的検査が使われている.しかし,一部の研究者は検査の客観性に問題があると報告している.今回,脳卒中後上肢麻痺を呈した一症例に,CI療法前後の麻痺手の使用頻度について,客観的な指標を提示するために加速度計を用いた結果,従来の上肢機能と加速度計の値はともに変化を認めた.さらに,両手を用いた活動において,麻痺手の使用割合が向上した.しかし,本研究は事例報告であり,結論には至らないが,加速度計は麻痺手の使用頻度を測る客観的な検査になる可能性がある.

  • 文献概要を表示

要旨:脳卒中を呈したクライエントに対して,Cognitive Oriented to daily Occupational Performance(CO-OP)を基盤とした訪問作業療法を実施した.この実践では,自身の目標であった調理などの作業を,問題が生じない方法を自ら考えながら練習することで,それらの技能も獲得できた.この経験を牡蠣養殖の仕事といった他の作業へ応用することにより,その技能を獲得することができた.在宅における自立支援を考えた際に,自ら問題に気づき対処する方策を獲得することは非常に重要であり,本実践の有用性が示唆された.加えて,一連の技能獲得に麻痺手を有効活用するなどの計画を立てたことで,麻痺側の上肢使用頻度が向上し機能も回復した.

  • 文献概要を表示

要旨:脳卒中片麻痺患者に対する訪問リハビリテーションにおけるHome based constraint-induced movement therapy(HCI療法)を実施した.症例は脳卒中発症後,慢性期の90歳の女性,右片麻痺患者である.介入は患者の自宅で,大切な作業である「麻痺手で歯磨きをする」,「麻痺手を使って箸でご飯粒をつまむ」の達成を目的に1日60分,週3回の訪問リハビリテーションを10週間行った.結果,STEF,Fugl-Meyer Assessment,Motor Activity Logにて大幅な改善を認め,患者の設定した作業目標も麻痺手を用いて達成された.HCI療法は慢性期の脳卒中片麻痺患者の麻痺手の機能を改善させ,大切な作業を実現するための治療手段となる可能性がある.

  • 文献概要を表示

要旨:介護老人保健施設(以下,老健)の入所者に対して,入所前から生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)を用いて介入し,在宅復帰支援の有用性を検討した.実践の結果,研究期間中に対象者21名のうち15名が自宅に退所した.ADLは移乗,歩行,階段昇降,更衣,トイレ動作が改善し,生活行為の合意目標に対する自己評価の実行度と満足度はともに向上した.合意目標に含まれた介入要素を国際生活機能分類(ICF)で分析すると,介入要素は,心身機能・身体構造9%,活動と参加70%,環境因子21%の割合で,活動と参加に最も多く含まれていた.MTDLPによる目標設定は,対象者の活動と参加に焦点を当て,老健での在宅復帰支援に有用と考える.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究では,ADL尺度の最小値を示す対象者の割合によって床効果を検討し,重度・最重度認知症者に対する既存のADL尺度の内容妥当性を改めて検証した.医療・介護療養型病床に入院する108名の重度認知症患者に対し,FIM,Disability Assessment for Dementia,Self-Care Rating for Dementia Extended,Hyogo Activity of Daily Living Scale(以下,HADLS),N式老年者用日常生活動作能力評価尺度(以下,N-ADL)で評価し,床効果を検討した結果,HADLSの総点,摂食,整容,洗面,N-ADLの総点,摂食以外は全て床効果を呈し,本結果は重度・最重度認知症者のための新しいADL尺度を開発する必要性を示唆するものであった.

  • 文献概要を表示

要旨:本研究の目的は,学童保育における障害をもつ児童の受け入れ状況とリハビリテーション専門職(以下,専門職)による支援ニーズについてアンケート調査手法を用いて明らかにすることであった.岡山県内の340の学童保育にアンケート用紙を郵送し,124施設から回答を得た.結果,在籍児童総数に対する障害をもつ児童数の比率は8.68%で,そのうち発達障害が7.05%を占めた.1学童保育あたりの障害をもつ児童数は3.84人であった.専門職への希望は,「月に1回程度」,「実際の現場」で直接,「学童保育での具体的な対応の仕方」についてアドバイスを受けたいというものであった.作業療法士が学童保育に関わる必要性が示唆された.

--------------------

■欧文目次

基本情報

02894920.36.1.jpg
作業療法
36巻1号 (2017年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0289-4920 日本作業療法士協会

文献閲覧数ランキング(
2月10日~2月16日
)