形成外科 66巻12号 (2023年12月発行)

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特集　重度四肢外傷と形成外科

企画にあたって鳥谷部　荘八 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1386-1387

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形成外科医が知るべき重度四肢外傷治療の今土田　芳彦 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1389-1395

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はじめに

　Gustilo分類type ⅢB/Cに代表される重症四肢開放骨折（重度四肢外傷）の治療は難しいが，その治療法としてorthoplastic approachが有効であることはよく知られている 1）2）。

　救急処置室（ER）に当該患者が搬送されると救急医が外傷蘇生を行い，その後当番の整形外科医がコールされる。整形外科医は四肢の状態を観察し，デブリードマンや創外固定などの初期治療を施行するが，その際に末梢血行不良があり軟部組織損傷が強いと，一般的な整形外科医には対応ができない。

　血行再建や軟部組織再建には形成外科医の協力が必要である。しかし，わが国の多くの病院では形成外科医の人数は少なく，また彼らの多くは外傷疾患に習熟していないため，速やかな対応は難しい。このような状況では治療結果は不良な経過をとる。それを解決するためには，形成外科医が重度四肢外傷の治療戦略を理解し，受傷早期からの遅滞ない対応が重要であることを再認識することが必要である。

　本稿では，わが国の現状と整形外科医としての著者が望む形成外科医のあり方について述べる。

形成外科医が知るべき主要血管損傷とコンパートメント症候群の実際善家　雄吉 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1396-1406

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はじめに

　重度四肢外傷に伴う主要血管損傷の有無は，その後の治療方針や機能予後に大きな影響を及ぼすため，迅速かつ的確に治療を遂行しなければならない。例えば，膝窩動脈損傷の疑いがある症例が救命救急センターに搬送されたとする。全身のバイタルサインは安定しているが，膝関節部の腫脹と外観上の変形を来たしており，足背動脈の触知が微弱で足部は全体的に冷感がある。このような症例が自施設に搬送されてきた際，救急科医，あるいは整形外科医から血管損傷の疑いを理由に，血管吻合が得意な形成外科医に相談があることも多いのではないだろうか？

　膝窩動脈損傷に限らず，阻血という病態は「待ったなし」の状況下にあるので，一刻の猶予もなく緊急性が高い。血管損傷を血管外科医に紹介されて治療されることもあるが，外傷治療に明るい血管外科医ばかりではないため，本外傷で最も重要な要素である「迅速性」という観点の検討がなされず，側副血行があるから待機可能という判断のもと，不幸な転帰をたどってしまった症例報告を見かけることも少なくない。本稿では，そのような轍を踏まないためにも，主要血管損傷やコンパートメント症候群治療に対する心構えや治療戦略を形成外科医に向けて解説したい。

形成外科医に知ってもらいたい骨折の骨再建前川　尚宜 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1407-1414

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はじめに

　重度四肢外傷の治療において，その両輪ともいえるのが軟部組織再建と骨再建である。治療を成功させるにはこれらの両立が不可欠であり，特にコラボレーション治療を行う際にはお互いに両方を理解しておくことが重要である 1）。

　近年，locking plate systemや髄内釘の横止め機構の進歩により，これらをうまく使いこなすことで，今まで困難に思われた骨折内固定をより強硬でかつ低侵襲に行うことが可能となった。本稿では，外傷整形外科医としての著者の経験なども踏まえて，重度四肢外傷治療における初期固定と内固定の考え方について述べる。

形成外科医に望む血行再建・軟部組織再建鳥谷部　荘八 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1415-1423

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はじめに

　重度四肢外傷は，皮膚，骨，関節，筋・腱，神経や血管など四肢の重要組織が複合的に損傷を受け，治療に難渋する重篤な外傷である 1）。このため，形成外科医が救急科や整形外科から主幹動脈の血行再建や軟部組織再建を依頼される場合も少なくない。重度四肢外傷においては，損傷血管は単純にマイクロ技術を用いて再建し，軟部組織欠損を単に皮弁や植皮でカバーすればよいわけではない。すなわち，外傷再建を腫瘍再建と同じ時間軸で考えてはならない。重度四肢外傷に特有の考え方を理解し，適切なタイミングで確かな対応をする必要がある 1）2）。

　本稿では，この重度四肢外傷に特有の血行再建と軟部組織再建における，形成外科医に必要な知識と心構えについて解説する。

形成再建外科医が従事する重度四肢外傷の実際櫻庭　実 , 本多　孝之 , 新井　雪彦 , 小野寺　文 , 三橋　伸行 , 菅　重典 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1424-1431

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はじめに

　重度四肢外傷の治療においては，整形外科医が主導的立場となることが多い。一方，広範囲の骨軟部組織欠損や血管損傷を有する症例では，形成外科医が治療の一翼を担う場面も多い。このような症例では，遊離皮弁をはじめとする組織移植や血行再建が必要であるが，重度四肢外傷に迅速かつ確実に対処できる形成外科医は多くはないと考えられる。著者は1997～2016年にわたり，癌専門病院において頭頸部再建や乳房再建および骨軟部腫瘍切除後の再建など，2,000例以上に及ぶ身体各部からの遊離組織移植に加え，四肢や肝臓の血行再建を経験してきた。現在は，岩手医科大学附属病院においてこれらの経験をもとに重度四肢外傷の再建に携わっているが，腫瘍切除後の再建とは手術の勘所に若干の違いがあると感じている。著者の経験をもとに，腫瘍切除後の再建と重度四肢外傷における再建との違いや，他科との連携などについて報告する。

形成手外科医による整容的重度四肢外傷再建髙木　信介 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1432-1442

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はじめに

　形成外科医にとって手外科領域の登竜門となる手術は，切断指に対する再接着術である。また，指尖損傷に対するoblique triangular flap，逆行性指動脈皮弁などの有茎皮弁や，hemi pulp transfer，wrap around flapなどの遊離皮弁は，軟部再建の手技習得に重要な手術となる。切断指再接着術からマイクロサージャンとしてのキャリアをスタートさせる形成外科医は，技術面において重度四肢外傷に対する軟部組織再建を担う準備はできていると考える。

　しかし，重度の四肢外傷に対する軟部再建は，単なる技術的な習熟度以外にも，さまざまな能力が求められる。その中でも特に重要なのは，損傷組織の状態を正確に評価し，治療の適切なステップを迅速かつ的確に進める判断力と実行力である。本稿では，形成外科医が多く経験する切断指・指尖再建と，形成外科医があまり経験しない重度四肢外傷再建との違い，軟部組織再建における実際の取り組み，および整形外科とのコラボレーション治療の実際について述べる。

若手形成外科医が進む重度四肢外傷への道伊師　森葉 , 鳥谷部　荘八 , 今井　啓道 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1443-1447

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はじめに

　若手形成外科医にとって重度四肢外傷の治療にかかわるハードルは高く，私自身も興味はあったがなかなか手を出せない分野であった。その理由としては，四肢の軟部組織再建に関する知識のみならず，骨再建のストラテジーを整形外科医と共有する必要があることや，経験に加えて柔軟さや的確な判断が必要となるタイミングが多いことが挙げられる。若手形成外科医として私が重度四肢外傷に携わるようになったきっかけと，携わるために身に付けるべきスキル，および若手形成外科医へのメッセージを述べたい。

ここまでできる究極の重度四肢外傷再建工藤　俊哉 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1448-1459

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はじめに

　「ある症例はうまくいって，別の症例ではうまくいかない」

　重度四肢外傷は，個々の症例において初期状態からの骨軟部損傷の把握や治療への積極的介入・スピード感など複数の要素があり，外傷が重度であるほど早く深い判断かつ高い経験値が重要になる。そこで，本稿では重度の四肢外傷治療を具体例とともに，おのおのの治療のポイントについて解説する。

連載　随想

メンターシップ林　寛子 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1385-1385

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連載　コラム

編集委員長コラム［第52回］アートメイク：続報細川　亙 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1461-1461

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連載　私の心に残る1症例

No.45 小室　裕造 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1462-1465

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連載　みんなで考えよう！足病カンファレンス Season2

case 7　装具療法のアドヒアランスをどう高めるか—その2：効果的な装具療法へ向け，どう行動変容を促すか— 佐藤　智也 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1466-1472

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連載　形成外科NEXT—次世代の本音—

今を，生きる柳林　聡 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1474-1475

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連載　教室だより北～南

No.108　埼玉医科大学形成外科・美容外科齋藤　順平 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1476-1480

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連載　外国文献抄訳

PRS Vol.151 No.4 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1496-1502

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投稿論文　症例

楔状骨片移行術を施行し長期の経過観察を行った裂足症の1例切石　梨菜 , 時岡　一幸 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1481-1489

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はじめに

　裂手（足）症は主に中央指（趾）列が欠損して，裂隙を形成した先天異常である。裂手と裂足を合わせた発生頻度は17,000出生に1例といわれている 1）。裂足症のみの統計に関する報告は少ないが，90,000～150,000出生に1.0人の発生頻度を示す 2）。

　裂手（足）症の表現型は単に裂隙が存在するだけでなく，多指（趾），合指（趾），短指（趾）などほかの異常を合併することがある。また，中手骨の癒合や横走骨の存在などが見られることも多い。このように多彩な表現型を呈するため，裂手（足）症の治療においては，単に裂隙を閉鎖するだけではなく，多指（趾）の形成術，合指（趾）の分離，骨切り術などの手術が必要となる。

　裂手症の手術法は成書や論文に記載されているが，裂足症の治療に関する報告は極めて少ない。また，術後10年以上の長期成績についても不明な点が多い。

　今回われわれは，Ⅰ趾欠損を伴う裂足症に対して2回の手術を行い，19歳まで経過観察を行った。初回手術では裂隙の閉鎖および合趾の分離を行った。成長に伴って外側趾列の変位が認められるようになったため，8歳7カ月時に骨軸偏位を修正する目的で，一般的な骨切り術とは異なる骨片移行術を施行した。10年以上の経過観察を行い，整容的・機能的に良好な結果を得たため報告する。

外視鏡の形成外科領域における有用性生坂　圭輔 , 植村　法子 , 本間　勉 , 田中　顕太郎 , 森　弘樹 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1490-1495

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はじめに

　外視鏡手術は1990年代に脳神経外科領域で登場した。顕微鏡を用いた脳神経外科手術に内視鏡を補助的に用いて，より良好な視野や死角になる部分の視野を得られたことが外視鏡手術の始まりである 1）。内視鏡は撮像するカメラの先端が体内にあるため“内”視鏡と呼ばれるが，外視鏡は身体の外から撮像するため“外”視鏡と名付けられた 2）。従来の内視鏡システムでは焦点距離が短いため，カメラを術野近傍に置く必要があり,手術の妨げやカメラの汚染が生じていた 2）。2000年代には外視鏡手術に適した独自のシステムが発展し，焦点距離の伸長，視野の拡大，解像度の上昇を認めた 1）2）。2010年代になると，映像技術の進歩とカメラの小型化により手術用顕微鏡の代替として一気に普及した 3）。それゆえ，一般的に外視鏡手術は，カメラを術野上方に固定しモニターを見ながら行う手術のことであり，外視鏡は外視鏡手術で用いられるカメラのことを指す 1）。

　形成外科領域でも，近年外視鏡手術の報告が散見され，わが国でも学会での症例報告が存在する 4）～8）。外視鏡の1つであるORBEYE Ⓡ（オーブアイ）は，ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ社により開発された4K・3Dの外視鏡システムである（図1）。術野を3Dカメラで撮像し，瞬時に4Kモニターに映し出し術野を精細に立体的に把握できる。当院では2021年2月よりORBEYE Ⓡを導入し，手術用顕微鏡の代替としての使用のほかにいくつかの手術に活用を試み，若干の知見を得たので報告する。

その他

目次 66巻12号 , 2023年12月

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欧文目次 66巻12号 , 2023年12月

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INFORMATION 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1503-1503

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投稿規定 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1504-1507

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次号予告 66巻12号 , 2023年12月 , pp.1510-1510

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総目次 66巻12号 , 2023年12月

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キーワード索引 66巻12号 , 2023年12月

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人名索引 66巻12号 , 2023年12月

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バックナンバー 66巻12号 , 2023年12月

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定期購読ほか　申込みシート 66巻12号 , 2023年12月

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基本情報

形成外科
66巻12号
(2023年12月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0021-5228 克誠堂出版

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