眼科 59巻13号 (2017年12月)

特集 予防治療

序論 飯島 裕幸
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保険診療は「病気を治す」ことが目的であって,疾病に至る危険性を軽減するという予防的な治療には適用が認められていない。そのため,虫歯予防のための歯垢除去などの歯科治療は,健康保険の適用外とされ自由診療で行われている。しかし病気すなわち疾病とそれ以前の状態との線引きが明確ではないことがある。一般に予防医学の内容は以下の3 つに分類される。

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結膜下出血は結膜の血管が破綻することにより,結膜下と強膜の間に出血が貯留する状態であり,日常診療ではありふれた疾患である。原因としては,ドライアイ,高血圧などによる血管老化,結膜弛緩症,眼球打撲症など,多彩な疾患,病態により発症し得る。

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原発閉塞隅角緑内障(primary angle closureglaucoma:PACG)は東アジアにおける失明の主要因のひとつとして重要な疾患である1)。本邦の久米島で行われた疫学調査においてもPACG の有病率は2.2%であり,わが国においても重要な疾患といえる2)。

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加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は国内の失明原因の第4 位を占め,50 歳以上の1%以上にみられる疾患である。加齢に伴い発症するため,高齢化社会においてはさらなる患者の増加が予想される。AMD は本人のQuality of Life(QOL)に影響するばかりか,家族や介護者の負担の面からその増加は社会問題となり得る。最近では,滲出型AMD に対しては治療法が発展し,早期発見早期治療が推進されたことから予後が改善されたとはいえ,罹患するとQuality of Vision(QOV)が低下することは想像に難くない1)。また,現時点では萎縮型AMD に対しては治療法がない。これに対して,日本眼科学会ではAMD の治療指針の一端として,Age-RelatedEye Disease Study(AREDS)に基づく抗酸化サプリメント摂取の推奨を含めている2)。そこで,この項では,AMD に対する抗酸化作用を持つサプリメント摂取の有効活用のために,その意義と留意点を述べる。

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網膜裂孔に対する予防治療の目的は,裂孔原性網膜剥離への進展を防ぐことにある。裂孔原性網膜剥離は,治療法の進歩により多くの症例で治癒可能な疾患となっている。しかしながら,ひとたび網膜剥離が生じると網膜復位を得ても完全に機能が回復することはなく,黄斑にまで網膜剥離が進行してしまえば,程度の差はあるが歪視や視力低下が残ることは避けられない。また手術侵襲に伴う機能低下,合併症の可能性もあり,観血的治療を回避するための努力をすることは重要である。

5.高血圧性眼疾患の血圧管理 飯島 裕幸
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高血圧というと,Keith-Wagner 分類やScheie分類を想起する眼科医が多いが,これらは眼底の細動脈の所見から動脈硬化の程度や血圧を推測するものであり1),住民健診などで広く血圧測定が行われている本邦の現状ではその意義は大きくはない。本稿ではまず,高血圧によって引き起こされる,あるいは高血圧で増悪する眼疾患について解説する。さらにそのような疾患における予防治療としての血圧管理の重要性を,眼科医の立場から解説する。

綜説

OCT angiography 野崎 実穂 , 小椋 祐一郎
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光干渉断層血管撮影(OCT angiography)は,造影剤を用いずに網脈絡膜循環を描出する新しいテクノロジーである。わが国でも,2014 年に登場して以来,各社OCT angiography のソフトや性能は日々進化し続けており,我々の日常臨床で欠かせない検査になりつつある。本綜説では,現在のOCT angiography の有用性と問題点,将来の展望について解説する。

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iPS 細胞が報告されてから10 年が経過し,この間にさまざまな領域においてiPS 細胞の再生医療への応用研究が着実に進んできた。なかでも,網膜領域においては,2014 年に理化学研究所・高橋政代らの研究チームにより,世界初のiPS 細胞由来網膜色素上皮細胞移植が実施された1)。これはiPS 細胞の報告以前に,同じく多能性幹細胞であるES 細胞を用いた網膜色素上皮細胞の分化誘導技術が早くから確立されてきたことが背景にある。一方で,角膜領域においては,多能性幹細胞から角膜細胞を分化誘導し,単離する技術が長らく確立されてこなかった。我々は近年,ヒトiPS 細胞を用いた角膜や網膜等の原基を含む眼の細胞系譜が層状に規則正しく配行したコロニーであるSEAM(self-formed ectodermal autonomousmulti-zone)の誘導,さらには,そのなかから角膜上皮幹細胞・前駆細胞を単離し,機能的な角膜上皮組織を再生可能であることを世界に先駆けてNature 誌に報告した2)3)。我々の開発したSEAM 法により,ヒトiPS 細胞から純度の高い角膜上皮組織を作製することが可能となり,角膜領域においてもiPS 細胞を用いた再生医療が現実のものになりつつある。本稿では,我々の開発したヒトiPS 細胞を用いた眼組織発生技術の開発ならびに角膜再生医療への応用について述べる。

Drusenの分類 古泉 英貴 , 飯田 知弘
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加齢黄斑変性(age-related macular degeneration,以下AMD)は先進国の社会的失明原因の上位を占める疾患であり,本邦の視覚障害の原因においても第4 位となっている。ドルーゼンdrusenは主として黄斑部にみられる黄白色の沈着物であり,AMD の随伴所見として重要である。本稿では一般的なドルーゼンの分類と画像所見に加え,特徴的な形態および分布様式を示すドルーゼンに関して,最近のトピックスを交えて解説する。

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神経筋接合部では化学伝達物質としてアセチルコリン(ACh)が神経末端より分泌され,筋の受容体と結合して活動電位を発生させる。いくつかの細菌,毒蛇やフグなど生物由来の毒素は神経毒としてこの神経筋接合部に作用し,ACh 伝達を競合的に阻害して筋の麻痺をきたす。これを医学的に利用して過剰な筋の緊張を抑えたり,対象筋の麻痺・脱力を図ったりするものが化学的脱神経(chemodenervation)である。わが国では「眼瞼痙攣」に対するA 型ボツリヌス毒素(botulinumtoxin:以下BTX)が1996 年初めて認可され,その後「片側顔面痙攣」など数多くの疾患への適応拡大があり,2015 年6 月には「斜視」への適応拡大も認められた。既にその治療法については本誌などでも紹介しているので,本稿では私たち眼科医が知っておくべきこれら対象3 疾患に関するBTX の基礎的な知識について解説する。

網膜静脈閉塞症の疑問

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BRVO の晩期合併症として,網膜から硝子体中に立ち上がる新生血管(NV)からの硝子体出血(VH)がある。NV によるVH は広い網膜無灌流野(NPA:non-perfusion area)を有するいわゆる虚血型BRVO でみられる。そこでフルオレセイン蛍光造影検査(FA)を行って広いNPA が確認されれば,VH 予防のためにNV がみられなくても,NPA をカバーする散発レーザー光凝固治療(scatter laser photocoagulation)が,日本では行われることが多い。

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complication

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眼窩静脈瘤は,頭位・体位によって変動する眼球突出や眼球陥凹1),突然あるいは間欠性に出現する視力低下や眼球運動障害2)3)を訴えて眼科医を受診するまれな疾患である。球後に発生することが多く,大きくなれば眼位変化や眼球運動障害をきたす。最近では経静脈的コイル塞栓術4)やブレオマイシン・n-butyl cyanoacrylate glue(NBCA)硬化療法5)6)などで治療されるケースが増加しているが,反復手術でも縮小せず複視や眼球運動障害を残すケースも多い。十分硬化あるいは縮小していない眼窩静脈瘤に対する斜視手術は,術中に静脈瘤を穿刺しないことはもちろん,静脈瘤を間接的に圧迫しないこと,血圧変動を最小限に抑えることなどの配慮が必要で,煩雑で侵襲の大きい眼筋移動術は行い難い。

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眼科
59巻13号 (2017年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0016-4488 金原出版

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