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はじめに
Tosquelles,Oury,Guattariらの名とともに知られる“psychothérapie institutionnelle”は,室に入る紹介者である三脇康生によって,「制度論的精神療法」「制度を使った精神療法」「制度精神療法」さらには「統合困難な治療装置を使う精神療法」と,その折々に相応しく訳されてきた。一貫するのは,“institutionnelle”を「病院」「施設」のような静的な容れ物と捉えてしまう誤解を峻拒する姿勢である。近著(三脇,2022)では,DeleuzeおよびMerleau-Pontyを参照しつつ,「要するに,人間が主体的にではなく,むしろ最初は受動的に属さざるを得ないからこそ能動的になれる場のことをアンスティテューション(institution)と呼ぶ」と宣明されている。
すなわち,制度論的実践とは,われわれが各々のあり方で制度という場の絡まりのうちに置かれつつ,その場の人々とともにそれ(制度)を分析し,能動的に編みなおしていく実践である。このプロセスを通して制度の新たな可能性(余白)が切り拓かれ,そこでの人々と,その関係性に変容が生じることになる。それは,精神科病院であれば治療環境をともに治療していくなかでなされる精神療法であり,学校であれば学びの環境について学び合っていくなかでなされる教育と言えよう。
本稿では,筆者が矯正施設とともに取り組むリフレクティング・プロセスを,ある種の制度論的実践,いわば「制度を使った司法精神療法」あるいは「制度を使った矯正教育」と見立て,それによりされる昨今の矯正改革の含意について,いくつかの懸念と期待とともに説述する。企図するのは,本邦の矯正施設で導入が進む「対話実践」におけるリフレクティングを,たんに面接や対話的コミュニケーションの技法とする誤解を払拭し,矯正改革の土壌を広く涵養し,深く根を張らせる腐葉土としての,同時に,その土に根差して発達するさまざまな集合態に新鮮な生命を持ち来たす形成層としての,その精妙な働きを描出することである。

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